HOME現場を巡る一覧NEXCO中日本 北陸道布施川橋・神谷川橋 合成桁の切断および架設でひと工夫

現場を巡る詳細

合成桁の切断に「スラブキラー」を試験採用 シースは蛇腹機構を有する

NEXCO中日本 北陸道布施川橋・神谷川橋 合成桁の切断および架設でひと工夫

 中日本高速道路金沢支社が、北陸自動車道で進める大規模リニューアル事業について、これまで4箇所に渡って現場の詳細を紹介してきた。そのトリとなるのが、今回紹介する布施川橋と神谷川(こんたにがわ)橋の床版取替である。とりわけ神谷川橋は合成桁であり、切断・撤去時には慎重な施工が要求された。(井手迫瑞樹)


神谷川橋の方が損傷が進んでいる状況

 布施川橋は橋長58.2mの鋼単純非合成箱桁、幅員は11.65m(10.76m)、斜角は76°を有する。交通量は18,212台で大型車混入率は32.9%で、既存RC床版厚は220mm。勾配は橋軸直角方向が3.0%で橋軸方向が2.3%。内在塩分(表面)は3.4㎏/㎥であった。

 神谷川橋は橋長41.76mの鋼単純合成I桁で、幅員は11.65m(10.76m)、既存床版厚は210mm。勾配は橋軸方向が1.0%、橋軸直角方向は4%。内在塩分は0.4kg/㎥となっている。

 布施川橋は床版上面に凍結防止剤による塩害によると見られる、かぶりコンクリートの浮きや剥離によるポットホールが発生している。床版下面は箱桁ということもあり、そもそも露出している個所が少なく、損傷はそれほど出ていない。ただ、桁端部や張り出し部の一部では、床版下面において塩化物イオンを含んだ水がひび割れより浸透し、下面においてエフロエッセンスやコンクリートの浮きを生じていた。

布施川橋の損傷状況
(左:桁端部、右:床版からのひび割れや漏水、NEXCO中日本提供、注釈なきは以下同)

 神谷川橋も布施川橋と同様の損傷。上筋側で縁が切れているところもあり、むしろ損傷が進んでいた印象である。合成桁特有の損傷は特にない。


神谷川橋床版下面の漏水およびひび割れ状況

同橋桁端部の損傷状況


布施川橋 60枚切断・撤去し27枚設置
 パネル形状は斜版を採用

撤去・架設方法

 布施川橋は一日の撤去・架設箇所を橋軸方向に2m×5.6m(壁高欄側、8.23t)、2m×6.3m(中分側、9.28t)の2つに分けて撤去し、そこに一枚の新設パネルを配置した。60枚切断・撤去し、27枚設置した。パネル形状は斜角に沿った斜版を採用している(下図)

 基本的にロードカッターで切断し、センターホールジャッキで引き剥がして鉄筋をガス切断し、吊撤去する作業である。

布施川橋の既設床版切断状況

同床版撤去状況

同既設床版の搬出


シース位置を正確に製作
 工程は、初日のみ撤去だけを行い、翌日からは朝に架設し、午後に撤去および桁上面のはつり、ケレン及び塗装を行うサイクルとした。新しいプレキャストPC床版はピー・エス・コンクリートの茨城工場(行方市)で製作して運搬した。工場では床版および地覆立ち上がり部まで製作し、黒部と魚津市に確保した3か所のヤードで、現地の線形や勾配を模擬して床版を地組し、高さや位置を面合わせした上で壁高欄部を現場打ちしている。製作上重要なのはシースの位置。数mm単位でぶれると見た目が合っていても緊張ができず構造として意味をなさなくなる。そのため、シースの位置は正確を期した。


布施川橋プレキャストPC床版架設計画図

桁上フランジ上面のケレン及び再塗装


蛇腹機構を有した両雄のカップラーシースを採用
 道谷第二橋での知見を活かす
 床版架設時のシース同士のはめ込みは、カップラーシースを使っている。床版側には挿し込みやすいようにラッパ型のシースをはめ込んでおり、はめ込む際のガイドとして両雄のシースを架設直前の床版パネルに片側を挿し込み、もう片側を受け手側の床版に挿し込む。結果、床版パネルの接続目地は最終的に30mmに詰めた。両雄のカップラーシースは蛇腹になっている。これが施工時に大きく働く。ループ継ぎ手の場合などは、継手幅も大きく、多少の修正が効くが、縦締め緊張の場合はシース位置があっていなければ緊張材を挿入できない。しかし、蛇腹機構があるため、多少高さがずれていてもシースが曲がりながら引きずり込むような形でシースの位置のずれを合わせることができるようになっている(もちろん調整はクレーンの操作で行うが)。この機能は道谷第二橋(※)の半断面施工の際の橋軸直角方向のシース合わせの時から使っており、それを応用した。もっとも半断面のシースはφ45mmであるが、縦締めシース用としてφ35mmを開発した。このカップラーシースは、東拓工業のものを採用している。寸法や形状は同社が設計した。神谷川橋も布施川橋と同じカップラーシースを用いている。

床版の架設(布施川橋)

床版の架設(布施川橋)②

目地部詳細図と実際のカップラー

しなる様に追従する


神谷川橋 桁上に大型クレーンは載荷できない
 400t吊クレーンを両橋台より外側に配置して撤去・架設
 神谷川橋の床版の撤去・架設は合成桁であることから桁に大きな荷重を掛けられない。そのため、クレーンを橋梁の両橋台より外側に配置して施工した。そのため、ブーム長さを長くとる必要があり、通常より大型の400t吊オールテーレンクレーンを採用した。張出し床版部と高欄(1ブロック約8t)および地覆側高欄部(同約6.8t)は一体で吊切撤去し、その次に中床版(同約5t)を切断し、最後に5主桁の上フランジ上面のコンクリート(同1.4t)を順次撤去していった。切断するピース数は約40mの橋梁ながら全部で40ピースに及んだ。吊切りする部分はワイヤーソーで切断し、中床版部はカッター、桁上のコンクリート部は2.4m長を1ブロックとして、鉛直にカッターで切れ目を入れ、φ32mmほどの通し孔を入れてそこから横倒し式で乾式ワイヤーソーを挿入し、水平撤去した。乾式ワイヤーソーは最大で4台を並行して使用した。桁上の水平切断の施工効率は1台当たり1日2ブロック。


神谷川橋プレキャストPC床版架設計画図

神谷川橋の床版撤去図

同橋床版撤去時のワイヤーソー施工図

桁上コンクリート部 ワイヤーソーでジベル筋ごと薄くカット
 鉛直カッターで25mmの高さまで切り込み

 桁上施工に際しては、桁を傷つけずかつスタッドを残さないように鉛直カッターは桁上から25mmの高さまで施工し、そこから水平に切断することで、施工後のコンクリートはつりやスタッドの切断、桁上の研掃を極力少なくした。単純に切断するだけであればワイヤーソーを巻き付けて施工するが重力や鉄筋やスタッドに当ることによってワイヤーが上下することを防ぐため、背面にプーリーを付けることで精度を保っている。また、「乾式で施工しているため、摩耗と熱で部品の消耗が激しく、熱に強い素材を試しながら施工した」(下請の第一カッター興業)ということだ。

高欄及び張出部の撤去状況

中床版の切断・撤去

桁上のコンクリート部の水平切断状況

鉛直切断状況やプーリー用の削孔、水平切断状況が分かる(井手迫瑞樹撮影)

コンクリートの残り部分を非常に薄くできるため、はつりを最小限に抑制できる(左写真)
ジベル筋も残置は短く、ケレン作業を省力化できる(右写真)


小刻みに撤去し、ケレンおよび防錆処理を行っていく

スラブキラーを試験採用
 神谷川橋の合成桁上のコンクリートの水平切断には、試験的に自動切断装置『スラブキラー工法』(右図)を採用している。同工法は門型の架台と両脇の自動推進システム、切断装置としてのバンドソーとプーリーから構成されている機械で、合成桁上の過密配筋やとりわけ馬蹄型ジベルをスムーズに切断することを目的に開発された装置だ。設置および撤去が容易で、周囲を鉄板で完全防護しているためガラなどが飛ばず安全であり、一度設置してしまえば手動によらずコントロールパネルによる遠隔操作が可能だ。また、バンドソーにかかる負荷に応じた速度調整機能を有している。施工はまずガイド部材を桁下で設置して起き、並行して中床版までの切断撤去を進める。その次にスラブキラーを、桁を跨ぐような形に設置し、合成桁の主桁上のコンクリートやスタッド、ジベルなどをバンドソーの腹にあたる部分で水平切断していく。

スラブキラーの施工状況①

ワイヤーソーの2~3倍の速さで切断できる箇所も
 課題はジベル部の切断能力
 事前に供試体を用いて行った実験では、頭付きスタッド(D13)の場合、切断速度70mm/分で4m連続して切断することができた。切断に要した時間は約60分だった。同様に馬蹄型ジベルの場合は切断速度約40mm/分で4m連続して切断することが可能であるが、切断時間は約100~110分ほどを要した。

 神谷川橋の実橋で行った試験では、順調に進んだ箇所は50mm/分の速度で切断できた。これは「ワイヤーソーの2~3倍の速さ」(元請のピーエス三菱)に達する。一方で、過密にスタッドジベルが入っている個所は施工速度が極端に遅くなり、実橋では10mほど使用した時点で撤収した。供試体実験でもわかっていたことであるが、過密なスタッドジベルや肉厚な馬蹄型ジベルをスムーズに切断するための材料開発が今後の同工法の成否を握ることになりそうだ。


スラブキラーの施工状況②