道路構造物ジャーナルNET

千駄ヶ谷付近のゲルバー構造を持つPC箱桁橋

首都高速 供用しながら3カ所のゲルバー部を改良

公開日:2015.06.16

GE1
 施工にあたっては当該部全てをベントで受けた後にワイヤーソーで支承を撤去し、WJで受台部分をはつり、1列(2本分)ずつPCケーブルの定着部を露出させていった。はつりに先立っては、はつり部手前のはつりに先立っては、はつり部手前のPC鋼線のグラウト状況を極小ハンマードリルでφ12㍉の穴をあけて調査した上で、φ28㍉の穴をあけてグラウトを充填し固まったのを確認した上で定着部をはつっている。
 その際、桁内部にあるPC鋼線および定着部を傷つけないため、対象部(受桁)全てを桁下からWJの機械施工(水圧240MPa、水量40㍑/秒)によりはつった。
 その後、PCケーブルの鋼線を先端に設置した支圧板台座内にPC鋼材の素線を1本ずつシングルジャッキを使って広げ再定着した上でグラウトを充填した(同工法は首都高速道路、川田建設、神鋼鋼線工業の共同特許)。次に連結用の鉄筋を組んで打設して、GE1部に型枠を設置して無収縮モルタルを施工し、A1~GE2の3径間を一体化する。また、連続化に伴う補強として、PC外ケーブル6本の設置を予定している。そのうち、横桁を貫通させて設置する箇所はWJ機械を用いて、鉄筋を傷つけないように削孔している。


(上段左と中)グラウトを充填し固まったのを確認した上で定着部をはつっている
(上段右)支圧板台座内にPC鋼材の素線を1本ずつシングルジャッキを使って広げ再定着
(下段)再定着された部分

 数量は上りが3主桁で1主桁につき3列、下りは2主桁で1主桁につき3列PCが配置されているため、WJによるはつりおよびコンクリート打設は合わせて15セット(箇所)に及んでいる。WJによるはつりは1列2本分で5~11日かかる。供用しながらの施工のため、桁下の施工環境や構造物を考慮すれば、「施工班の数や人員を増やせばよいというものではなく、慎重に施工を進めている」(川田建設)。


WJによってはつられた部分

G2
 G2についてはベントで桁を仮受けした上で損傷した支承を引き抜き、受桁部のPC鋼線に損傷が生じない範囲でWJによりはつって、支承全高を稼ぐ(現在は20㌢程度しかない)とともに沓座の補修やヒンジ内部の清掃を行い、すべりゴム支承に交換する。


削孔用WJ機械

(左)WJではつられた支承周り/(右)削孔拡大写真

 具体的にはゲルバー部を水洗浄した後にゲルバー内の沓座の上下を削孔型WJではつるが、上部は定着部を守る補強筋の下部、下はあご部自体の鉄筋の上部まではつり、既存の鋼製支承をガスで切断し、外に引き出し撤去する。その上で奥に型枠を設置して新しい支承を設けて沓座の下に結束した鉄筋を挿入する形で配筋していき、手前の型枠を組んでコンクリートを打設する。上沓の上部も同様に型枠を設置、配筋した上でコンクリートをポンプ圧送して打設する。


(左)既設の支承も薄い/(右)損傷も大きい

 支承は、限られた空間の中に設置できるように100㍉の全高の高面圧すべり支承を特注した。同支承は上揚力を担保しないため桁外にブラケットを設ける予定。


既設支承よりさらに薄い全高100㍉の高面圧すべり支承を設置した。支承下はコンクリートの打設

 加えてゲルバー桁の支承間の中央でPC鋼線が通っていない個所に点検口を設けて、従来点検が難しかったゲルバー部の支承を点検し易くしている。


ゲルバー桁の支承間の中央でPC鋼線が通っていない個所に点検口を設けた

GE3
 GE3については基本的にGE1と同様の施工を行いフルウエブ化する。吊桁部もフルウエブ化し、橋脚天端部を拡幅、延長して吊桁の下にも支承を設置する。そのためには基礎および橋脚を補強する必要がある。


GE3のゲルバー部の現状

 そのため、まず橋軸方向にフーチングを増設、および増厚し、次に(受台部がなくなるため)増厚したフーチング上に支保工を立てて桁を支える。
 桁のフルウエブ化は、基本的にGE1と同様の施工を行う。
 コンクリート打設に際しては、支承の上沓部分を予め埋め込んでおき、後工程で行う支承の設置をし易くする。
 その後、改めてフルウエブ化に伴う新たな支承を設置するためのベントを立てて、RC製の橋脚梁を打設する。打設の際には梁の上面に支承固定用の挿し筋を入れて施工し、同部分に支承を設置し完成となる。

 首都高速は施工上注意すべき点として「外苑西通りの上空での施工になるため、高架下への影響を懸念して、完全防護足場を施し、落下物などが無いように施工を進めている。他にも吊桁を支える支保工の基礎が、外苑西通りに張り出さないようにGE1とGE2の施工時には斜ベントを用いるなど構造的な工夫も施している」と話している。
 また、川田建設は「既設構造物の耐力を損なわないように、あえて効率を求めず確実に施工するように心がけている。また、(GE2部分の点検用箱抜き構造など)首都高速に示唆を頂きながら施工後も点検しやすい構造になるよう工夫を施している」としている。

各種補修・補強
 同時にPC床版の下面補強として中弾性の炭素繊維シート(三菱樹脂インフラテック)を格子貼りして補強(1,100平方㍍)するとともに、コンクリート片剥落防止対策として高欄から桁下全面(約2,000平方㍍)をポリウレタン樹脂塗装工法(タフガードスマートバルーン工法)により施工する。


(左)炭素繊維シートの格子貼り補強/(右)タフガードスマートバルーン工法によるコンクリート片剥落防止工

 元請は川田建設。一次下請はコンクリート内部の鉄筋探査がダンテック、コンクリート補修補強工が宏和エンジニアリング、ワイヤーソーイングおよびWJ工が第一カッター興業
 支圧板・再緊張冶具およびPCケーブルの製作は神鋼鋼線工業、炭素繊維シートは三菱樹脂インフラテック、剥落防止工の材料は日本ペイント

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