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鉄筋やPC鋼材に代わる材料としてアラミドFRPロッドを採用

別埜谷橋上部工で非鉄PC単径間非鉄製バタフライウェブ箱桁橋「Dura-Bridge®」を初施工

 西日本高速道路四国支社徳島工事事務所は、徳島道の付加車線設置事業の別埜谷橋上部工において、同社と三井住友建設が共同開発した「Dura-Bridge®」を用いて、世界初となる非鉄製プレキャストPC橋の架設を進めている。記者が取材した4月22日にはA1側端部3ブロックと中央部5ブロックの架設を完了していた。同橋は鉄筋やPC鋼材に代わる材料としてアラミドFRPロッドを採用し、「錆からの決別を果たしている」(三井住友建設)こと、高強度繊維補強コンクリートを採用していること、バタフライウェブ構造を採用していることが特徴だ。桁重量は従来のPC箱桁形式に比べて1~2割減らすことができるため、上下部工全体のコスト低減や耐震性向上に寄与できる。また、腐食しない新材料を用いることで、鋼材腐食によるコンクリート片剥落などによって起こる第三者災害を防ぐとともに、耐久性の向上による管理費用の低減も可能となる。(井手迫瑞樹)


 同橋は、桁長26.5m、桁高2.8m、幅員11.554mのPC単径間非鉄製バタフライウェブ箱桁橋。緊張材および鉄筋には鋼材を使わず、アラミド(テクノーラ)FRPロッド(以降、アラミドロッド)を使っていることが特徴だ。アラミドロッドは引張強度がPC鋼材と同等であるアラミド繊維を樹脂で固めて棒状に加工したものである。アラミドロッドは直径7.4㎜の内部にアラミド繊維が24万本入っており、8t(普通乗用車4台分)の重量を吊り下げることができるような高強度材料である。鉄筋と比べて6倍もの強度を有し、どのような環境でも全く錆びることがない。

(三井住友建設提供、以下注釈なきは同)

 同橋のコンクリートは高強度繊維補強コンクリート(左写真)を採用している。特殊な鋼繊維を入れた高強度のコンクリートで設計基準強度は通常のコンクリートの3~5倍(設計強度は80N/mm2、実際強度は120N/mm2に達する)を有する。コンクリートに使用する繊維は、コンクリート自体に高いせん断強度を確保する必要があることや、部材の薄さを実現するために鋼繊維を用いた。強度が高いため部材を極限まで薄くすることができ、構造物を軽量化することができる。さらに非常に緻密な材料であるため、コンクリートの内部に水や塩分が入りにくい特徴を有している。このため寿命の長い構造物として維持管理の面でもメリットがある。


 Dura-Bridgeはバタフライウェブ構造を採用している。その名称の通り、ウェブを蝶の羽のような薄型パネルに置き換えた構造形式である。利点は2つ。コンクリート橋を従来比1~2割軽く造れること、これにより橋を支えている部分などを軽量化でき、耐震性が向上し、橋梁全体のコスト縮減にも貢献する。メンテナンスもし易い。一般的な橋梁は箱桁内に光が差し込まないが、バタフライウェブは光が差し込み内部の点検がし易いためだ。


形状が特徴的なバタフライウェブ/薄い部材厚であることが分かる(井手迫瑞樹撮影)

 Dura-Bridgeを作る第一ステップは、工場で橋のパーツを組み合わせて、1つのブロックを作ることから始まる。まずは型枠にアラミドロッドを配置する(右写真)。この時、アラミドロッドを両側から引張り、ギターの弦のように強く緊張させた状態にする。次いで高強度繊維補強コンクリートをアラミドロッドが張られた型枠内に流し込む。型枠に流し込んだコンクリートが固まると、アラミドロッドがコンクリートと接着されて一体化する。この状態で両側から強く引っ張られたアラミドロッドの緊張状態を開放すると、アラミドロッドは元の形に縮もうとする。そうするとアラミドロッドが接着されているコンクリートに圧縮力が生まれる。アラミドロッドとコンクリートが接着されて固められている限り、その力は働き続ける。これによりコンクリートの弱点である引張力を補強することができ、高い強度のコンクリートが出来上がる。最後に型枠を外してウェブは完成する。

 バタフライウェブの上床版と下床版は、ウェブと同じ方式で製作していく。こちらはウェブを組み込みながらの作業となり、大掛かりな工程が増えていく。できたブロックを建設現場に運び、橋の形に組み上げていく。

 別埜谷橋のセグメントは端部セグメントが2基、標準セグメントが10基で構成されている。ただし端部セグメントは、標準セグメントに比べて大きいことから輸送や施工の都合を考え、A1、A2側共に3ブロックに分割した。具体的には端部が27t、次のブロックを幅員中央部で分割し、1ブロック20tとして輸送できるサイズおよび重量とした。

 そのセグメントを滋賀県にある工場から陸上及び海上輸送で運び、ブラケットに支えられたトラス式支保工に220tクローラークレーンで設置する。別埜谷橋の工事現場は既に開通している1期線の横かつ、急峻な山岳地に位置しているため、全てのセグメントをクレーンでトラス式支保工に置くことができない。そのためA2側からA1側へ移動台車に載せて送り出していく。

 なお、セグメントは現場内に仮置きできるスペースがないため、徳島港から夜間に運び、写真のような構台(移動台車)に1セグメントずつ設置して220tクローラークレーンで吊り、下のトラス式支保工へ降ろすことを繰り返す。桁に吊孔を設けず、UFOキャッチャーのように桁を把持する吊方法を採用している。把持部はスライドするだけで着脱可能だ。



220tクレーンで吊り上げ、所定の位置まで運んでゆく(井手迫瑞樹撮影)


把持されている桁ブロック/トラス式支保工に載せる(井手迫瑞樹撮影)

手動ジャッキで桁を移動させる
(井手迫瑞樹撮影)

 手順としてはまず、A1側端部セグメントを送り出す。次いで標準セグメントを送り出す。標準セグメントを8ブロックまで送り出した段階でA1側の外ケーブル定着用の横桁内に中詰めコンクリートを打設し、同時にA2側の端部セグメントを組み立てる。そして最後の標準セグメントを設置した後にA2側の端部セグメントをスライドさせる。今回の工事ではトラス支保工を用いているため、全セグメント設置後のたわみは37mmほど出てしまう。そのため一旦セグメントの荷重を支保工上に預けて、たわみの影響を除去し、それから高さ調整および平面的な位置調整を行う。こうして完全に出来形の精度を確保した上で、セグメント間を超低収縮型高強度モルタル(設計強度80N/mm2)で接着させ、A2側の中詰めコンクリートを打設し、アラミドロッドを使用した外ケーブルを配置し、約1,700tのプレストレスを導入して緊張させ1つの橋にする。

A1側端部セグメント(井手迫瑞樹撮影)

A1側端部セグメント内部(ここにコンクリートを充填する)/支承部(井手迫瑞樹撮影)

 外ケーブル定着用の中詰めコンクリートは15㎥に達する。上床版にある打設口からコンクリートを打ち込む。外ケーブルの数は34本と多く、その定着孔を形成するためエアチューブを配置した上でコンクリートを打ち、コンクリートが固まった後にエアチューブを引き抜いて、その孔に外ケーブルを入れる。密閉空間に中詰めコンクリートを打設することになるため、確実に施工できるように今回は高流動コンクリートを自己充填させる手法で施工した。

 架設開始は4月であり、架設完了までは3か月半から4か月かかるものと思われる。加えて橋面工が半月ほど必要となる。橋面工の壁高欄設置もプレキャストタイプを使用する。これもガラス繊維補強プラスチックロッドを鉄筋代替の補強筋として用いた非鉄構造の壁高欄「Dura-Barrier®」を採用している。


 一方、SFRCを用いるため、鋼繊維の毛羽立ちによる高性能床版防水に悪影響が懸念されるが、そもそもDura-Bridgeはコンクリートが緻密かつ、腐食を招く鋼材を使用していないため、床版防水工については、その内容を検討中だ。 なお防水工設置部の毛羽立ちはライナックスで除去する。「防水工が不要になればコストもさることながら工期の面で非常に大きな軽減となるため、その経過には注目している」(NEXCO西日本)ということだ。


 今後は工事により得られる知見を活用し、Dura-Bridgeの適用拡大に向けた設計・施工・維持管理マニュアルの整備を進めていく。特に腐食環境が厳しく、高い耐久性が望まれる構造物への適用拡大や、多径間連続桁への適用拡大を図っていく。さらに最盛期を迎える高速道路のリニューアル技術の応用技術としても展開を図っていく考えだ。

 元請は三井住友建設。上部工本体の架設は4月頭から始め8月上旬ぐらいまでに架設を完了する予定だ。(2020年6月5日掲載)