HOME現場を巡る一覧姫路河川国道 ASRや塩害、グラウト充填不足が顕在化している国道2号曽根高架橋の補修

現場を巡る詳細

主桁などについて、ひびわれ補修工、表面含侵処理工等を施工

姫路河川国道 ASRや塩害、グラウト充填不足が顕在化している国道2号曽根高架橋の補修

 国土交通省近畿地方整備局姫路河川国道事務所は、国道2号曽根高架橋について、P1~P31 間の上部工の補修工事とP16橋脚の補修工事を行っている。ASRや塩害の影響により損傷が拡大している同橋の現場を歩いた。


1.概要

 同橋は1974年に建設された兵庫県高砂市内の国道2号姫路バイパスの一部となる橋長863.4mの鋼・PC混合橋で、設計は昭和43年プレストレストコンクリート道路橋示方書に準拠している。上部工は単純PCポステンT桁や単純PCプレテンT桁、単純合成鈑桁などから構成され、ほとんどの径間にジョイントを有する。また、橋脚はPC梁構造で、6段のPC鋼棒が配置されている。基礎形式はφ1,000、L=7,000の場所打杭で、かぶり厚は橋脚が100mm、床版が40mm、桁が45mmとなっている。床版厚は200mmで、2007年まで床版防水工を設置していなかった。1日交通量は10~12万台で、日本でも指折りの多さを誇る。

一般側面図

側面図(P11-P12部分拡大)


2.点検・補修履歴

 同橋の状態を知るためには、点検・補修補強履歴を知らねばならない。

 1996年度に橋脚を鋼鈑巻き立てし、07年度に床版防水工を実施し、09年度に下り線の床版にグラウトを注入、11年度には第20径間の伸縮装置を取替え、14年度には上り線の全径間で主桁、横桁、床版、橋脚梁部、防護柵、地覆、伸縮装置の断面修復工等を実施、17年度にはP16について伸縮装置取替え、ひび割れ注入、表面被覆(シラン系含浸材)を施工し、さらにP21の伸縮装置も取り替えた。さらに19年度には下りP1~31の床版や桁などの上部工補修工事を実施している。


 損傷を拡大させた原因はASRとPCグラウトの充填不足及び塩害である。2012年に下り、13年に上りの定期点検を行ったところ、PCポステンT桁の水平方向に多数のひび割れが確認された。最大幅は1~1.2mmに達しており、中には、漏水や遊離石灰を伴った箇所もあったことから、詳細に原因を調べるため、14年11月に神戸大学の森川英典教授などが現地を調査した結果、ASRの可能性が高いこと、グラウト充填不足の可能性もあること、さらには凍結防止剤を含んだ水による塩害の影響の可能性もあることなどが指摘された。ASRについては、かなり以前から進行していたものとされ、局所的に水が供給される部位(伸縮装置部近傍など)は、ASRの進行も局所的であり、膨張が停滞あるいは収束している可能性があるとした。水は主桁端部や上縁定着部からシース内やシース周囲に伝わって主桁内部に浸入し、損傷が進行する原因になっている。

 損傷原因の調査および対策法としては、ASRが残存膨張試験法および骨材試験を行いひび割れ注入、グラウト不良はX線検査やインパクトエコー法および削孔によるシース内CCDカメラ撮影を行いグラウト再注入、水対策はコアコンクリートを抜き塩化物量測定を行い、床版防水を行うことなどが提案された。ただし、(グラウト確認の)削孔調査については、主桁PC鋼材へ影響を鑑みて、補修設計付きで工事専門業者に発注することも推奨された。また、床版間詰部の漏水・錆汁などの変状については、グラウト充填不良など横締めに問題が生じていることが考えられることから、横締めPC鋼棒の突出防止工の検討も促した。橋脚PC梁にはコンクリート塗装を施しているが、それについてもASRを進行させる内部留水が閉じ込められるため、好ましくない、と指摘した。


 この後の調査でも上記の指摘を裏付けるような結果が生じている。2014年に行ったP16橋脚梁部の塩分量調査では、表面からの深度10㎜で塩分量0.8kg/㎥、同75㎜で1.2kg/㎥、同100㎜で1.3kg/㎥、同140㎜で1.0kg/㎥という結果が出た。腐食発生限界塩化物イオン濃度は、PCの場合、1.3kg/㎥に設定されており、懸念すべき状態であったことが分かる。

 これらを踏まえて、森川教授らの提案に沿った対応をしてきたが、17年度の補修工事中にP16橋脚梁側面の浮き箇所をはつり除去したところASRの影響とみられるスターラップ鉄筋の破断が確認された(国道2号海田高架橋と同様の)ため、18年2月に森川教授が再度現地調査を行った。

 損傷程度としては、梁部材に曲げやせん断による構造ひび割れは見られないため、緊急措置が必要な状況ではない。対策として、損傷状況を考慮した安全性照査を行うため、鋼材の破断や付着、定着などの状況を詳細に調査して確認し、安全性が確認されれば、直ちに補強するのではなく、モニタリングで構造ひび割れ発生の有無など経過を確認しながら維持管理することで良いとした。但し安全性に問題がある場合の対応については検討しておく必要があると指摘し、堺高架橋(大阪国道事務所所管)の事例を参考にすることを求めた。

 詳細調査については、グラウトの調査方法についてインパクトエコー、広帯域超音波法、PC鋼材の破断調査方法として漏洩磁束法などを提示した。その上で、橋脚梁部は、一番かぶりの浅い箇所でも、175mmあるため、適用範囲や精度に問題がある可能性があり、確認が必要とした。また、非破壊で主鉄筋の圧接部が破断していることを確認する手法としては、漏洩磁束法や電磁誘導法が考えられることや梁側面に最も近い箇所については、削孔調査も可能であるが、削孔した場合フレッシュな空気が入りPC鋼材の腐食が進行しやすいため、グラウト充填不良が見つかった場合にはすぐに補修できる体制で臨むことを指摘した。

 一方でスターラップ鉄筋が破断したのは(ASRの骨材)膨張が止まっていないことが原因の一つとして考えられる。また、部材中心部のコンクリートの膨張はまだある可能性もあるため、膨張の進展と同時に構造ひび割れを最低でも5年以上モニタリングしていくことを求めた。同時に梁内部のコンクリートの含水率は劣化の進行と関連があると指摘し、内部の含水率を減らすためシラン系含浸材による対策を求めると同時に、含浸材でも止まらない場合は、亜硝酸リチウム注入工法や最悪の場合は橋脚の再構築といった段階的な対策に至る可能性についても指摘した。

次ページ 3.補修