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東北地方整備局郷六橋などで 電磁波レーダーやSingle i 工法を採用

国立研究開発法人土木研究所 RC床版土砂化に関する診断技術を試験施工

 国立研究開発法人土木研究所は、RC床版土砂化に関する診断技術の開発を進めている。カート式、車載式あるいは手押し式のいずれも電磁波レーダーを使い、床版と舗装界面に存在し、床版の健全度に悪影響を与える原因あるいは塩分などを運ぶ触媒となる「水」を検知することにより、床版上面の劣化状態をスクリーニングする技術の開発を進めている。さらにスクリーニング調査によって疑わしい劣化個所についてはSingle i 工法を用いてφ9mmの孔をあけてその内部にファイバースコープを差し込み、一定の速度で上昇させることで、内径全周のひび割れなど損傷状況を詳細に把握できる手法も提案している。電磁波レーダーによる診断は、現在はレーダー画像(平面図および床版断面図)を熟練者が見て落とし込むため、成果品を得るのに時間がかかっているが、その画像のもとになる波形データは健全部と滞水部で特徴がある(比誘電率(絶縁性物質が有する基本的な電気的定数)はコンクリート密実部が6~10、空気が1、水が81)ため、波形データを蓄積して、将来はAIに自動解析させる方針だ。1月9日には床版取替予定の東北地方整備局が所管する仙台西道路の郷六橋(上り線)で電磁波レーダーおよびSingle i 工法の試験施工を行った。(井手迫瑞樹)


 同技術は、土木研究所などが自治体や民間各社と進める『AIを活用した道路橋メンテナンスの効率化に関する共同研究』の一環として点検AI(床版の土砂化)の開発を進めているもの、同研究は官民研究開発投資プログラム(PRISM)の研究課題として選ばれており、今回郷六橋で試験施工した技術は、土研とニチレキ、復建技術コンサルタントが共同で研究を進めている。

 郷六橋(上り線)は1974年に供用された橋長101mの鋼3径間連続非合成鈑桁橋で、床版の厚さは平均で210mm。舗装厚は50mm。途中で床版防水は行っているが、舗装の部分補修や断面修復、炭素繊維シート補強(下面格子貼り)なども施す状況になっており、所々に土砂化が起きていた。調査翌日の1月10日には上下線の中央に設置された仮橋に交通を切り替えた後に、11日から床版取替を開始している。


郷六橋概要図(土木研究所提供、以下同)

 ここで、ニチレキの床版キャッチャー(右写真、電磁波レーダーは『3D-RADER』で測定周波数はマルチステップ周波数方式で200MHz~3GH、車載式(40~60km/hで走行)、カート式、手押し式の各レーダーを用いた)で、現場を調査し、実際の損傷状況との一致率などを確認した。同様の試験施工は北海道や東北、中部、九州の各地整の橋梁で行っているが、今回は初めてSingle i 工法による詳細調査も実施した。25箇所で削孔した。






Single i 工法確認状況


 同研究を行っている土木研究所の野田翼研究員は、「平成4年のスパイクタイヤ禁止における罰則規定導入と共に凍結防止剤の散布が増加して以来、従来の疲労では説明できない水と塩分を主因とする床版上面の土砂化が顕著になっている。特に地方自治体では、そうした損傷への対応が後手に回るケースが多く、損傷が拡大するとWJによる大規模なはつりや断面修復が必要になり、はなはだしい箇所では床版取替が必要になる。水が介在している箇所では部分的に舗装を補修しても土砂化が進展してしまうケースも多い。早期に劣化状況を把握することで、適切な時期に適切な補修を行うことでコストを縮減したい。土木研究所では、今回の点検・診断技術だけでなく、水の早期検知を前提とした新たな床版補修工法の提案も検討しており、セットで進めてきたい」と述べた。

郷六橋のレーダー画像

実際の損傷状況①

実際の損傷状況②

 また、取得したレーダー画像は、同時に撮影したレーダー画像および図面データと合成したものを出力することで、ひび割れや施工目地、路面勾配などを勘案した水の侵入経路を推定できるものにしていく方針だ。

成果画像イメージ

 1月末には、東北地方整備局管内の長大橋の床版を用いて再度試験施工を行った。
(2020年2月13日掲載)