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湾岸線大規模リニューアル

阪神高速道路 約24日間かけて舗装修繕20万m2、鋼床版SFRC補強、RC床版防水などを施工

公開日:2020.01.16

 阪神高速道路は、2019年11月6日午前4時から30日午前1時にかけて、①4号湾岸線の南港北~三宝間4.7kmと②南港北~大浜間8.8kmについて舗装補修20万㎡をはじめ、SFRC補強、複合床版防水など既設床版の補強を大規模に行うリニューアル工事を施工した。南港北~南港南間は2001年に、南港南~三宝間は1999年にそれぞれリニューアルしており、約20年ぶりのリニューアル工事。三宝~大浜間は初のリニューアル工事となる。①については、6日午前4時から20日午前4時までの間、走行1車線規制および追越1車線を段階的に車線規制する方式で対応し、②については、20日午前4時から30日午前1時までの間、終日通行止めによる施工を行った。同工事には述べ1万7千人の作業員が従事した。今回の補修により、今回の工事区間の舗装補修率は90%に達することになる。同区間は1日交通量約10万台(大型車混入率24%)(大混率は湾岸線全体の数字)という重交通での施工ということもあり、24日間という長丁場を要した。



大和川橋梁も該当範囲だ

 今回のリニューアル工事の特徴は鋼床版部が多いことである。舗装修繕20万㎡のうち、鋼床版部は約14万㎡に達し、RC床版部は6万㎡となっている。鋼床版部は過年度の点検で発見された、デッキ貫通亀裂に進展する可能性のある損傷に対して、約4万㎡について鋼床版補強として基層を従来のグースアスファルトではなく、超速硬SFRCを45mm打設して、表層に35mmの高耐久排水性Asまたは密粒Ⅲ型Asを舗設した。高耐久排水性Asは、バインダーを従来の最大骨材粒径13mmのポーラスAs混合物を使うとともに、今回は首都高速道路でも実績のある同5mmの小粒径ポーラスAs混合物を(本線で2,000m2)試験施工した。小粒径タイプは(床版や床版防水層との)層間付着面積が拡大することによりポットホールの発生を抑制でき、ひび割れ抵抗性も高い。



鋼床版
 その他の鋼床版部は、基層にグースアスファルトを舗設した後、高耐久排水性Asまたは密粒Ⅲ型Asを舗設するが、課題は既設舗装の撤去である。基本的にはブレーカーにより撤去するが、学校や病院、住宅が近接する箇所では騒音が課題となるため、騒音がほとんど生じないIH式舗装撤去工法(ここではグリーンアームおよび竹中道路)により約3万4千㎡を撤去した。その後にブレーカーや手作業で残滓を撤去し、ショットブラスト(投射密度は250kg/㎡)をかけて表面を清掃し、その後に基層工程(グースおよびSFRC)に着手した。


IHにより既設床版を撤去/ショットブラストの施工状況

SFRC敷設前の鋼床版上面への接着剤の塗布とネコによるSFRCの現場への搬送

SFRCの打設状況①

SFRCの打設状況②

 SFRC打設に当たっては、ショットブラスト後に防錆プライマーを塗付し、その後にエポキシ系接着剤(スマートボンドあるいはKSボンド)を塗付し、SFRCを打設、アスファルト塗膜防水を採用した後に、表層を舗設した。同区間では、縦横断的に線形が厳しい箇所(写真)もあり、SFRCの打設は当初苦労していたようだ。基本的には近傍に配置したジェットモービル車で練ったSFRCを人海戦術によりネコ(1輪車)で運び、人力およびフィニッシャーで敷き均すという方法をとっていた。スランプによっては低勾配に流れるため、場所によっては苦慮していたことがうかがえる仕上がりとなっている。

RC床版
 当該RC床版部の床版厚は、PC桁部で150mm、鋼桁RC床版部で210~260mmとなっている。主桁間隔はI桁部で2.2m~最大3.6m、箱桁部では2.8m~最大9.3mに達していた。健全なRC床版部はアスファルト塗膜防水を施工したが、過年度の定期点検では、遊離石灰や漏水などの損傷個所が確認されており、そうした個所約1.8万㎡については、「㎡単価は通常のものと比べて高価だが長期耐久性の向上を期待して」(阪神高速道路)複合床版防水(ここではハードフレッシュ工法)を採用した。


RC床版の一次防水および二次防水

 騒音対策
 湾岸線は病院や住宅、学校等に隣接する箇所が多いため、騒音対策は手厚く行っている。基本的に大きな音の出る舗装切削や剥取りなどは昼間に行い、研掃や舗設など比較的音の出ない作業を夜間に施工した。また、車線規制工事期間は、重交通路線下での終日車線規制のため、(規制外へガラなどが出ないように)切削作業は慎重に行った。また、高欄上に遮音壁が未設置の区間でのはつり作業も慎重に行っている。

 交通影響
 今回のリニューアル工事は、比較的影響の少ない夜間時間帯に2車線規制を実施し、予め工事用車両を規制内へ進入させるなど、工事の通過交通への影響低減に努めた。また、長期間にわたる資機材の確保(IHやジェットモービルなど)も困難を伴っており、「今後も急速施工や周辺環境に配慮できる新技術を開発、採用しつつ、構造物の長寿命化、リニューアルプロジェクトを進めてまいりたい」(同社)と話している。


長期間のジェットモービルやIHの確保は困難を伴う

 元請はNIPPO、鹿島道路、世紀東急工業。下請はフタミ(ショットブラスト)、グリーンアーム、竹中道路(いずれもIH)など。SFRC供給は小野田ケミコ・住友大阪セメントなど。
(井手迫瑞樹、2020年1月16日)

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