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160t吊仕様クレーンで1日3~4枚の床版を撤去・架設

NEXCO中日本 酒匂川橋で同社初となるトラス橋での床版取替を実施

公開日:2020.01.16

既設床版は舗装とともに撤去
 新設床版は104枚を架設

 施工は、東京側のP6から名古屋側のP3に向かって既設床版を撤去し、新設床版を架設する作業を繰り返した。施工延長が226.3mと長いが、P6側に撤去床版の搬出路が確保できないことから、クレーン1台での施工となった。
 下り線(左ルート)閉鎖前の昼夜連続車線規制期間中の9月26日からコア削孔と壁高欄切断に着手。


昼夜連続車線規制期間中にコア削孔と壁高欄切断を行った

 9月30日に下り線(左ルート)の閉鎖を行い、10月3日から既設床版の切断と撤去を開始した。壁高欄と床版ハンチ部はワイヤーソーで、床版はコンクリートカッターで切断していった(ハンチ部は上フランジを切らないために3cm残してカッター切断としている)。
 既設床版は、橋軸方向2m×橋軸直角方向12.7mを橋軸直角方向で2分割して撤去している。2分割後の1ブロック重量は最大で14.9tとなった。既設床版は「舗装を切削せずに残したまま撤去することで工期短縮を図った」(NEXCO中日本)。なお、舗装とともに撤去した床版は、左ルート上にある小山バスストップで小割にして搬出している。


舗装と既設床版の切断。工程短縮のために、舗装を切削せずに既設床版を切断、撤去した

小山バスストップでの既設床版小割作業

 新設床版の架設は10月7日から開始。1日に3~4枚の既設床版を撤去して、同数を架設していき、全104枚の架設を11月15日に完了した。施工は昼間のみで、標準サイクルタイムは午後に既設床版の撤去、上フランジ上面のケレンと塗装を行い、翌日の午前に新設床版の架設を行った。また、同橋では過去に補強で増桁をしており、4主桁間にある3本の増桁を床版撤去とあわせて撤去を行った。



新設床版の架設(下左写真:大柴功治撮影)

上フランジ上面のケレンと塗装

雨天時にも打設できるように雨除けテントを用意
 プレキャスト壁高欄「EQ-WALL」を採用

 床版継手部はループ継手を採用し、総継手数は105箇所となった。間詰めコンクリートの打設幅は1箇所あたり下幅350mm~上幅390mmで施工している。端部の場所打ち部はP3側が669mm、P6側が655mm(橋軸延長)で、場所打ちを少なくする工夫をした。コンクリートは、早強ポルトランドセメントを用い、強度はプレキャストPC床版と同じ50N/mm2、スランプ12cmとした。打設にあたっては雨天による工程遅延を防ぐために、打設箇所を覆うことができる雨除けテントを用意した。鉄筋は耐食性向上のためにエポキシ樹脂鉄筋を床版内部および場所打ち部すべてに採用している。


ループ接手を採用(大柴功治撮影)/間詰部の打設

工程遅延対策として雨除け用テントを活用

 工程遅延対策と品質向上の取り組みのひとつとして、プレキャスト壁高欄「EQ-WALL」を採用。東名高速道路は通信管路が6条必要であり、路肩側では従来のプレキャスト壁高欄では対応ができなかった。そこで、通信管路6条に対応したプレキャスト壁高欄を新たに開発。2019年1~3月に施工された同高速道路の下長窪橋床版取替工事で初採用し、今回の工事でも使用している。1ブロックサイズは橋軸2.2m(標準)、高さ0.66mで、1日に約16ブロックを設置していった。


通信管路6条に対応した「EQ-WALL」(大柴功治撮影)


プレキャスト壁高欄「EQ-WALL」の設置

 床版防水は高性能床版防水工法(グレードⅡ)を採用し、「レジテクトGS-M工法」で約2,450m2に施工した。舗装は、基層が橋梁レベリング層用混合物(FB13)、表層は高機能舗装Ⅰ型用としている。足場は、パネル吊式足場「SKパネル」を採用している。


床版防水と舗装の完了

床版取替工事完了(全景)

 床版取替工事後には、P3~P6間の疲労き裂対策、鋼桁補強、支承取替、塗替え塗装、検査路の設置も実施する。工期は2021年1月まで。同橋の残りの径間についても今後、数回に分けて床版取替工事を行っていく。

渋滞ボトルネック対策で路面点滅誘導灯を設置

 2019年東名リニューアル工事では、鶴野橋(橋長60.8m、鋼3径間連続鈑桁橋)と成就院橋の床版取替工事、都夫良野トンネル東換気塔撤去工事、鮎沢PAリフレッシュ工事、都夫良野トンネル覆工補強工事(施工延長172.8m)なども行っている。


(左)鶴野橋施工状況(奥が成就院橋)/(右)成就院橋施工状況

 NEXC中日本では利用者への影響を最小化するために情報提供を充実させるとともに、下り線(右ルート)での渋滞ボトルネック対策に取り組んだ。過去の渋滞発生箇所やETC2.0のデータ分析で平均走行速度が落ちている箇所をもとに、渋滞対策箇所を4カ所選定。その区間(合計約7km)の左側路肩に、路面点滅誘導灯「ミチテラ」(大林道路)を設置した。


路面点滅誘導灯「ミチテラ」

設定速度に合わせてライトを点滅させることで円滑な車両誘導を図った

 ミチテラは、LEDライトによりドライバーに注意喚起をするとともに、設定速度に合わせてライトを点滅させることで車両を円滑に誘導する特徴がある。

 酒匂川橋・鶴野橋・成就院橋の床版取替工事の元請は、三井住友建設・日本ファブテック・極東興和JV。舗装工事元請は、鹿島道路。
(2020年1月16日掲載 大柴功治)

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