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160t吊仕様クレーンで1日3~4枚の床版を撤去・架設

NEXCO中日本 酒匂川橋で同社初となるトラス橋での床版取替を実施

公開日:2020.01.16

 中日本高速道路(NEXCO中日本)東京支社は、東名高速道路の大井松田IC~御殿場IC間に架かる酒匂川橋床版取替工事を実施した。同工事は、9月9日から12月20日まで行われた「2019年東名リニューアル工事」の一環として、9月30日から下り線(左ルート)を閉鎖して施工されたもので、NEXCO中日本ではトラス橋での初めての床版取替工事となる。床版取替延長は226.3mで、工程遅延リスク回避のためにプレキャスト壁高欄「EQ-WALL」を採用した現場を取材した。

工事対象区間はP3~P6間226.3m、取替面積約2,450m2
 重交通による疲労により床版に損傷が発生

 酒匂川橋は、橋長725mの鋼3径間連続トラス橋(A1~P3)+鋼3径間連続トラス橋(P3~P6)+鋼4径間連続切断合成鈑桁橋(P6~P10)+鋼2径間連続トラス橋(P10~A2)で、平面線形がA=250~R=400~A250の曲線橋となっている。縦断勾配は0.71%、横断勾配は7%だ。大井松田IC~御殿場IC間上下線の2018年交通量は約92,000台/日で、大型車混入率は41%に達する。今回の床版取替対象区間はトラス橋部のP3~P6間226.3mで、取替面積は約2,450m2となる。

酒匂川橋 全体概要図(NEXCO中日本提供。以下、注釈なき場合は同)

酒匂川橋(P3~P6)橋梁一般図

 同橋は1969年の供用からちょうど50年が経過し、2006年度には既設RC床版の増厚(増厚前の床版厚180mmを10mm切削し60mmの増厚)と床版防水工を実施している。しかし、重交通による疲労などにより、床版下面に鉄筋腐食によるコンクリートの剥落、遊離石灰、ひび割れなどの損傷が発生していることから抜本的な対策としてプレキャストPC床版(床版厚220mm)に取り替えることにした。


床版下面の損傷状況

 凍結防止剤の散布量は「東名高速道路のなかでは多い区間」(NEXCO中日本)であるが、大井松田IC~沼津IC間での2014年から2018年の5年平均で約400t/年であるため、損傷原因として凍結防止剤散布の影響は少ないと考えられた。ちなみに、大井松田IC~沼津IC間は延長45.4km(さらに下り線は2ルート)での散布量に対して、北陸道の米原IC~長浜IC間では延長8.9kmで約310t/年の凍結防止剤を散布している。

たわみ量を工事着手前に別橋梁で測定
 測定値を反映してクレーン仕様を変更

 施工にあたってはトラス橋であるために各支間長が3径間ともに75mと長く、支間中央部に重量物のクレーンを設置するとたわみ量が大きくなる課題があった。そこで、工事着手前の今年5月に、同じくリニューアル工事期間中に床版取替工事を行う鋼2径間連続トラス橋の成就院橋(橋長138.2m)に70t吊クレーンを設置して、たわみ量を測定のうえ設計と施工に測定値を反映した。


成就院橋での載荷試験計画図

実際の載荷試験の様子

 計画では220t吊オールテレーンクレーンで1日7~8枚の床版撤去架設を予定していたが、設計照査の結果、部材がもたないことが判明し、安全性を考慮して220t吊クレーンのカウンターウェイトを減らして160t吊仕様で施工することとした。また、クレーンを設置するために主桁に補強部材を取り付ける対策も事前に行った。

勾配調整吊装置で架設時の床版の傾きを微調整

 施工対象区間はR=400の曲線で、縦横断勾配があることも課題となった。バランスを保って新設床版を架設するために、クレーンと床版の間に吊り用架台を取り付けて、チェーンブロックで床版の傾きを微調整できる勾配調整吊装置を用いることで対応していった。


クレーンと床版の間に取り付けられた吊り用架台と勾配調整吊装置(大柴功治撮影)

 新設床版については曲線に対応するため、橋軸方向2mと2.2m(橋軸直角方向はともに12.7m、重量約15t)の標準版と、支点上に架設する台形の調整版をSMCプレコンクリートの栃木工場で製作している。製作にあたっては、品質向上のために蒸気養生1日、水中養生3日、湿潤養生7日を行い、温度管理も徹底した。また、地覆立ち上げ部を後打ちで一体化することも行った。


新設床版割付図

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