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避難坑の背面空洞量は調査時の6倍。空洞には発泡ウレタンを注入

NEXCO中日本 安房トンネル本坑・避難坑の補修工事を進める

 中日本高速道路(NEXCO中日本)八王子支社は、中部縦貫自動車道(安房峠道路)の安房トンネル補修工事を進めている。2018年5月17日からの工事では、避難坑の在来工法区間での6倍発泡ウレタンによる覆工背面空洞充填工、本坑の吹付けコンクリート区間での小片はく落対策工、上り線土工部での自然のり面からの落石を防止するための落石防護柵設置工などに着手した(工事完了予定は2020年6月4日)。



安房トンネル補修工事 施工概要図(NEXCO中日本提供、注釈なき場合は以下同)


本坑と避難坑の平湯側坑口(大柴功治撮影)


低速度区間と高熱帯区間を中心に変状が発生

 安房峠道路は中部縦貫自動車道の一部をなし、岐阜県と長野県の県境に位置する延長5.6kmの自動車専用道路で、1997年12月6日に供用された。その大部分を占めるのが延長4,370mの安房トンネルだ。供用以前は、標高1,790mの安房峠は11月中旬から5月上旬の間、積雪により冬季通行不能となっていたが、供用により通年での通行が可能になるとともに、降雨での通行規制も減少して、大きな整備効果を発揮している。同道路の交通量は、3,026台/日(2018年度)である。

 安房トンネルは火山帯に位置しており、岐阜県(平湯)側は火山堆積物で脆い地質である低速度区間(弾性波速度が低い部分)と、長野側(中ノ湯)側は地熱の影響で温度が高くなっている高熱帯区間を有していることが特徴となっている。
 それらの区間を中心に、本坑と避難坑でひび割れや浮き剥離などの変状が顕在化したことから、2009年に有識者による「安房トンネル対策検討会」を設立して対策の検討を行い、対策工法・補修方針についての提言を2015年に受けて、補修工事を進めることになった。



地山の岩質と施工工法状況


背面空洞量が約3,400m3

健全度Ⅲ以上の箇所の充填工を先行

避難坑の補修

 本坑の北側に位置する避難坑は延長約4,300mで、在来工法とNATM工法で掘削された。岐阜県側から約3分の2と長野県側の一部が在来工法区間で、残りがNATM工法区間となる。

 低速度区間で供用当初から覆工側壁部に斜め方向のひび割れが発生するとともに、2012年ごろには盤膨れが発生。変状発生箇所は矢板とNATMの支保パターンの変化部で、地下水位低下などによる地山の圧密が発生したことが原因だったため、2015年10~11月にはひび割れ注入工とはく落防止シート接着工の対策を行い、その後、年2回の変位計測を継続している。

 在来工法部では覆工コンクリートにひび割れや浮き剥離の変状が発生していて、NEXCO中日本では補修工事のために2015年度にレーダー探査で背面空洞調査を実施した。



避難坑内部(大柴功治撮影)


避難坑の損傷


在来工法部の損傷


 調査での背面空洞量は約530m3だったが、工事着手にあたり元請のケー・エフ・シーが2018年に削孔調査を行ったところ、背面空洞量が約3,400m3とレーダー探査時の約6倍となってしまった。また、背面空洞が在来工法区間の全延長にわたり存在していることも確認されるとともに、覆工厚が不足している箇所も存在することが明らかになった。



削孔調査


背面空洞の状況


セントル別のレーダー探査での背面空洞量(発注時空洞量)と実測空洞量


 発注時における覆工背面空洞充填工はレーダー探査結果に基づき背面空洞約530m3を対象としていたが、実際には全延長におよぶ約3,400m3の施工が必要になった。セントル数ではNATM区間を除く260セントルが対象で、1セントルの標準延長が10.5mなので、施工延長は約2.7kmに達する。しかし、「約3,400m3の背面空洞充填工を工期内にすべて行うのは、工程的にも金額的にも難しく」(NEXCO中日本)、縦横断のひび割れが多く発生している「健全度Ⅲ以上の箇所および覆工厚が設計値の1/2を下回る箇所の充填工を先行して行う」(同)ことにした。その対象箇所は36セントルで、設計上の空洞量は約500m3だったが、施工を進めるなかで、最終的には531m3の注入量となった。