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橋面補修と橋面コンクリート舗装を両立

富山市所管の新屋橋で、超速硬型高靭性繊維補強コンクリートを用いた橋面コンクリート舗装を施工

公開日:2019.10.30

「橋面コンクリート舗装の設計・施工マニュアル」の実橋試験施工
 床版の補強だけでなく、舗装の耐久性向上・LCCの向上にも期待

 富山市が管理する新屋(あらや)橋の橋面補修工事において、超速硬型高靭性繊維補強コンクリート『オートモルスーパーG』を用いた橋面補修と橋面コンクリート舗装を行った。施工面積は99m2。土木学会鋼構造委員会道路橋床版の点検診断の高度化と長寿命化技術に関する小委員会の橋面コンクリートWGが進める「橋面コンクリート舗装の設計・施工マニュアル」策定のための実橋を使った試験施工で10月7日にはその模様をマスコミに公開した。この技術は、主に小規模橋梁での施工を想定しており、増厚補強(今回は30mm厚)効果だけでなく舗装の耐久性向上にも繋がるため、LCCの向上が期待できる。その反面、アスファルト舗装であれば存在する防水層がないため、その担保や路面のすべり抵抗・平坦性をどのように確保するかが課題となる。現場を取材した。


新屋橋の橋梁概要(富山市提供、以下注釈無きは同)

橋梁の現況

 現場は、富山空港にほど近い、富山市の婦中町新屋地内の田園地帯に位置する。橋長は18m、幅員は6.1mの単純活荷重合成H桁と推定される(図面がない)橋梁で1968年に建設された。直下に牛ヶ首用水(北陸電力の用水路)が流れている。事前に目視およびシングル i工法およびFWD(Falling Weight Deflectometer、舗装構造評価装置)による調査を行った結果、既設のコンクリート舗装は床版と一体化施工されていること、橋梁端部にアスファルト舗装のオーバーレイがあること、オーバーレイのアスファルト舗装にはクラックや剥がれが見られたが、コンクリート舗装には変状が確認できず、シングル i工法、FWDによる調査を行った結果、床版も概ね健全であることが確認できた。

 また、オーバーレイによる舗装擦り付けの厚さ分、全体の舗装高を上げることができることから、橋面コンクリート舗装による30mmまでの戻し厚が可能と判断し、実際に打設することとした。それでも擦り付け高不足が10mmほど残るが、それは橋梁前後の舗装打換で対応することにした。また、床版そのものは健全であることから既設床版の切削は行わないことにした。


施工にあたっての留意点①

施工にあたっての留意点②

事前にショットブラストで表面研掃
 打継ぎ目にはエポキシ系接着剤を塗布

 実際の施工は、擦り付け舗装の撤去を行った後、床版全体をショットブラストで研掃した後に、コンクリート舗装の打設に移った。ショットブラストの投射密度は上面増厚工法と同じく150kg/m2で施工している。その後、既設コンクリート床版(舗装)との打継ぎ目にエポキシ系の接着剤(ボンドE2000)を全面塗布した。これは新旧コンクリートの付着強度の向上と(既設床版面の)防水性の付与を目的としている。


ショットブラストによる研掃

接着剤の打継ぎ面への塗布(井手迫瑞樹撮影)

オートモルスーパーGを30mm厚で上面打設
 3時間で24N/mm2、最終的には60N/mm2の強度

 その後にオートモルスーパーGを30mm厚で上面打設していった。オートモルスーパーGは、ポリプロピレン短繊維(バルチップ)を用いた曲げ・たわみ硬化特性(DFRCC)超速硬コンクリート。3時間で24N/mm2、最終的には60N/mm2の強度を有し、有機繊維が混入しているため有害ひび割れも生じにくい。加えて有機繊維のため、繊維が露出しても走行車両に(パンクなどの)害を与えず、その後の上面からの電磁波レーダーなどの非破壊検査も阻害しない優位性がある。


材料の製作(井手迫瑞樹撮影)

 これを現場において4tトラックに積載できる小型現場練り製造装置「DMC-12」で練り上げ、供給した。

「レザーバック工法」を用いてコンクリート打設
 暑さ対策や1回打設当たりの供給量増などが課題

 コンクリート打設に際しては、通常の締固めフィニッシャでなく、人力で移動締固めできる東京コンクリート技研の「レザーバック工法」を用いて施工した。レザーバック工法は、移動用レールを敷くことなく、アンカーとリード線で正確に動かすことが可能で1分間に19,000サイクルものタンピングを行うことができ、内部の空隙を瞬時に締固めることが可能。最大で20m幅まで打設可能で、骨組も鋼製であり剛性が強く、たわみなどをほとんど生じないため精度の高い施工ができる。今回は排水装置の位置から横断勾配を1%確保することが必要であったが、無事要求に合致した出来形を確保することができた。また打設に際しては、造膜性、接着性、改質性に優れる被膜養生剤(キープジョンK-100)を散布することで品質の向上に努め、レザーバック工法による施工後は、ハンドレザーバックやトロウェルなどによって丁寧に表面を仕上げ、すべり抵抗性を確保するためのほうき目をつけた。その上で排水溝など新旧舗装境界面が露出している個所については、結晶性層状ケイ酸塩「ブリフィード」を配合した『ポセイドン』を塗布し、接着界面近傍に針状結晶を生成してコンクリートをち密化し、水密性を向上させる防水処理を行った。



コンクリートの打設(井手迫瑞樹撮影)

仕上げ状況/ほうき目を付ける(井手迫瑞樹撮影)

 これらの施工は当初2日に分けての施工を考えていたが、天候が不安定だったことから1日間で前倒して施工した。

 現場は北陸の富山で、10月の施工であることから適温での施工を想定していた。しかし、実際は30度に達する高温化での施工を余儀なくされ、コンクリートの品質および施工可使時間の短さには神経をとがらせていた。また、練混ぜ量は1回あたり0.25m3で施工していたが、現場での施工と供給にタイムラグを生じてしまっていた。今後は1回あたり最大0.5m3程度の供給も考えていく必要がありそうだ。出来形品質の面では床版上面に繊維が露出している個所が少なからず見られた。この解消も改善点といえる。

 一週間後の14日には、路面調査、外観調査・打音調査、すべり抵抗性(DFテスタおよびBPN)、わだち・平たん性(MRP)、表面粗さ、FWD調査による床版たわみ計測などが行われた。同様の調査は1年後にも行い、オートモルスーパーGを用いたコンクリート舗装の耐久性を確認して、「橋面コンクリート舗装の設計・施工マニュアル」策定の貴重な資料として活用していく。


FWD試験の結果、床版たわみが約3割減少している結果となっており、床版剛性がアップしていることを確認できた(土木学会鋼構造委員会道路橋床版の点検診断の高度化と長寿命化技術に関する小委員会の橋面コンクリートWG提供、下写真も同)

平たん性試験

 元請は婦中興業、一次下請はトクヤマエムテック。二次下請はフタミ(ショットブラスト)、東京コンクリート技研(コンクリート打設)など。(2019年10月30日掲載、井手迫瑞樹)

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