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2500t積みの台船上に上下2段積みのテーブルリフトを3点に配置し、昇降操作して撤去・架設

兵庫県 昨年の台風21号で被災した鳴尾橋が9月復旧へ

 兵庫県阪神南県民センター西宮土木事務所は、7月2日および17日の両日、昨年9月4日の台風21号により漂流した船の激突によって被災した県道芦屋鳴尾浜線鳴尾橋(P2~P3間、単純鋼床版箱桁橋、橋長60m、幅員10.65m、撤去重量420t)の損傷した橋桁の撤去・および復旧桁の架設を行った。同橋は阪神高速5号線の甲子園浜~鳴尾浜に至る海上部に並行して走る道路で、阪神高速と同一の橋脚上に架橋されている。2,500t積みの台船上に上下2段積みのテーブルリフト(一基当たりのせり上げ荷重は250t)を3点に配置し、昇降操作して撤去・架設した。 台船上にテーブルリフトを載せ、潮の干満差だけでなく、台船上のジャッキの昇降により桁を撤去・架設するのは「関西では珍しい施工方法」(三井E&S鉄構エンジニアリング)だ。


工事概要

損傷原因

 同橋は台風により漂流した土運搬船が阪神高速の桁下に潜り込むように侵入し、阪神高速の桁より一段低い箇所にある県道の鳴尾橋の桁に激突した。土運搬船は全長62m、幅14m、深さ4.5mで、総トン数は11t。台風時は沖に錨泊していたが、台風により走錨し、橋桁および橋脚に衝突した。


台船が乗り上げている(兵庫県提供)

 同橋の桁は、阪神高速の桁に比べて一段低い位置に供用されているため桁下クリアランスが低く、箱桁のウェブ面に衝突する形で主桁(ウェブおよび下フランジ、ダイアフラム(隔板))は200~300mmのゆがみが生じており、床組(縦桁、ブラケット、Uリブ)や壁高欄が大きく変形していた。損傷範囲はP2橋脚から約25m、R側(壁高欄)から4m(橋軸直角方向)の範囲が損傷した。橋桁はP2橋脚から北側へ約40㎝ずれてしまっていた。当日は台風の影響で激しい波浪が生じていたことから、衝突の際に上揚力が働き、支承のセットボルトを引き抜きおよび破断させ、さらに衝突時の水平力によって桁を移動させたものと考えられる。

桁内面の損傷(兵庫県提供)

桁外面の損傷(兵庫県提供)

支承の損傷状況/落橋防止装置の損傷状況

方針決定から設計、製作まで

 損傷の大きさから桁の取替は早々に決まっていた。しかし問題は架設方法だ。今回取り替える径間は、建設時においてはFC船により架設した。架設時は県道→阪神高速の桁順に施工したため、特に支障はなかった。しかし、今回は阪神高速の桁が既にあり、南側からFC船を用いて架設するには、同桁を跨いで吊撤去する必要があるため、高速道路を止める必要があった。北側にFC船を回すことは桁下クリアランスが低く、船がくぐることは難しかった。仮に高速道路を止めても、現場の水深は浅いところは3.0mほどで、FC船やそれを引っ張るタグボートが航行するには最低4.5mの水深が必要であり、浚渫しなくてはならなかった。最高潮位となる夜間には施工できる可能性もあったが、安全上の理由から今回の台船を用いた架設が選択された。

 架け替えは、部分架け替え(損傷している部分に限定)とP2~P3間の全長架け替えの2案を比較検討した。部分架け替えは、いったん橋桁を撤去して、工場へ搬入し、新たに製作した部分との溶接を行う必要があることなどから、通行止め期間が全長架け替えよりも逆に長くなってしまい道路利用者や周辺道路への影響を考慮して、全長架け替えを採用することにした。

 こうした取替範囲や架設手法の検討は、学識者や施工団体等に意見聴取を行い、最終的に兵庫県で方針決定した。復旧設計を担当した長大は「3か月程度で書き上げた」(同社)。


応急復旧

 県道芦屋鳴尾浜線は、1日当たり12,000台強の交通量を有する重要な路線であるため、可及的速やかな復旧が必要である。そのためとりあえずは主桁・鋼床版損傷部の外側に補強鋼板を設置し、橋軸直角方向の桁ずれを修正、脱落支承の補修、浮き上がり防止装置の設置などを施す応急復旧工事を施工し、12月10日には東向き(大阪向き)一方通行により暫定供用を開始した。

桁移動状況および足場設置工

桁をジャッキアップして横移動/桁の加熱矯正/ジャッキによる矯正

補強部材の取り付け

応急復旧の完了状況