HOME現場を巡る一覧NEXCO中日本 東名高速道路愛鷹橋の床版取替工事を公開

現場を巡る詳細

門型情報板などの上空を超えて床版を撤去・設置

NEXCO中日本 東名高速道路愛鷹橋の床版取替工事を公開

 中日本高速道路は、東名高速道路愛鷹橋の床版取替工事を公開した。愛鷹橋(上り線)は東名高速道路の沼津IC~富士IC間の沼津市岡宮に架かる1969年3月に供用された橋長126.2mの鋼3径間連続4主鈑桁橋で床版全面1,536.9㎡を新しいプレキャストPC床版に取り替えるもの。愛鷹橋は東名沼津ICランプと接続する橋梁で新東名開通前直近の交通台数は約73,000台・大型車混入率約36%、現在は約35,000台・大型車混入率約28%(共に車両検知器による計測データ)に達する。床版取替施工中は、下り線を昼夜連続対面通行規制して施工する。規制用ブロックの配置はロードジッパーシステムを採用している。現場での床版取替~舗装までの工期は1月7日~3月20日までの73日間。その他、塗装塗り替えや支承取替、免震ダンパーの設置、桁補強や桁補修なども行う予定だ。現場を取材したものをまとめた。(井手迫瑞樹)


ロードジッパーの活用(NEXCO中日本提供、以下注釈無きは同)

 同橋は供用後実に50年を経過している。既設床版厚は180mmと薄い。ただし床版支間は4主桁のため支間構造的には厳しくない。81年には縦桁を増設、同年代には損傷の目立つ箇所で鋼板接着補強を施した。増厚は未施工で床版防水工も2008年に初めて設置した。サグなどはなく、縦横断勾配も緩やか(橋軸0.66%、直角2%)であり、凍結防止剤散布も年数回であるため塩化物イオン量も被り表面で0.7kg/㎥、鉄筋近傍で0.4㎏/㎡と発錆限界値を下回っているため、塩害もしくは水の影響よりは交通荷重による疲労による損傷の可能性が高い。

 具体的には、橋梁床版の下面の一部において、大きいひび割れ、エフロエッセンスが2方向に発生、P2~A2橋梁床版上面に剥離や被り不足などの変状を確認している。また、部分的に鋼板接着で補強している箇所があり、その箇所において、鋼板継ぎ目に腐食変状が生じてボルトも著しく腐食していたことから床版を取り替えることにした。


損傷状況


愛鷹橋床版取替工事工程

床版撤去・取替

 床版取替面積は約1,500㎡。これを54枚の版厚230mmのPCaPC床版パネルを用いて交換する。現場ではA1側に250t、A2側に200tのオールテーレンクレーンを1台ずつ配置し、中間部から両橋台へ向けてそれぞれ施工した。1日当たりの施工数は最大で撤去が26パネル(1パネル当たりの寸法は橋軸2m×直角5.8m、重量6.7t)、架設が11パネル(同2×12.5m、716t)。

床版取替平面図

 工程は昼間に高欄・床版の切断や撤去、既存スタッドの溶断や上フランジのケレンなど音の出る作業を行い、夜間に床版パネルを架設する。

舗装の撤去/既設床版の剥離

 床版撤去に先立ち、床版の橋軸直角方向をカッター切断、地覆部をワイヤーソーで切断し、床版に吊孔を削孔した。床版撤去時はクレーンを配置した後に橋軸方向の中央部をカッター切断して床版剥離機を用いて既設床版を引きはがした。カッターで切り残した鉄筋や主桁のジベル筋はあらかじめ用意したガス切断機で切断し、丁寧に上フランジをケレンした。昨年に床版取替した赤渕川橋では地覆部を先行切断したが、今回は対面通行規制の期間を短縮するためにあえて地覆をつけた状態で床版を撤去している。

 撤去時に苦労したのは、縦桁と既設床版下面の「貼り付き」だ。主桁上面はジャッキ反力を主桁からとっているため上手く既設床版が剥がれたが、増設した縦桁と床版間は容易に剥がれなかった。「今回の現場では余程性能の良い接着樹脂を使っていたのか、いつものように面的にジャッキアップしようとするとバラバラになる可能性があった」(ピーエス三菱・川田建設・駒井ハルテックJV)。そこで「シールを剥がすように片側(切断側)のジャッキから持ち上げて既設床版を剥がすことにした。「ジャッキアップ時の微妙な操作がコンクリートの状態を左右する(弱すぎると上がらず、強すぎると割れてその後の斫りなどの作業が増えてしまう)ため、丁寧な施工が必要だった」(同JV)ということだ。

「貼り付き」状況


既設床版の撤去

 72°の斜角に対応するため、PCaPC床版のパネルは平行四辺形状に製作した。平面線形にも合わせて張出し床版の長さを変化させて対応し、端部はRC構造として設計が成立する範囲で決定した。端部もPC構造にすると緊張などの工数が増えてしまい工程に影響するためだ。また、PCaPC床版の制作において、継手鉄筋側の側枠を脱型する際に鉄筋がスムーズに抜けるように、斜めにスライドできる構造とした。なお端部は1~2mほど現場打ちRC構造とした。

プレキャストPC床版割付図


PC床版の搬入

PC床版の架設

間詰部は合理化継手を採用(右写真のみ井手迫瑞樹撮影)

 床版同士の継手は用宗高架橋などで実績を有する合理化継手を採用し、構造上の弱点となる間詰幅を280~320mmに縮めている。同継手を採用することで床版厚も通常より10mm程度薄くすることができた。パネル設置後は床版と同様強度50N/mm2のコンクリートで継手部を間詰めし、高欄を現場打施工していく。

場に応じたクレーンを採用(井手迫瑞樹撮影)

 施工は先述の通りA1側で250t、A2側で200t吊クレーンを用いてそれぞれ橋梁中央から両橋台に向けて床版を撤去・架設していった。比較的大型のオールテーレンクレーンを採用したのは、工事短縮としてPCaPC床版を6枚架設できる作業半径を有すること、A1(名古屋側)については、門型情報板が端部に存在し、門型情報板の上空を超えてPCaPC床版の架設を行うことのできるクレーンが必要であるため、250t吊を採用した。A2側も門型標識が架設の支障となったことから、これを超えて施工できる200t吊を採用した。

 高欄は斜角などに対応するため現場打ちを採用している。


壁高欄の施工

高耐久性の追求

 工場製作時には通常の蒸気養生だけでなく3日間の水中養生も加えて、コンクリートがより密実になるよう仕上げている。間詰部の鉄筋にはエポキシ樹脂塗装鉄筋(ここでは明希製の「MK-エポザク」)を採用した。打設前の打継ぎ面にはエポキシ樹脂接着剤を使用して付着性能を高めると共に、打設後は打継ぎ目に高性能浸透性吸水防止剤を塗布して劣化因子の侵入を抑止している。また、床版パネルと桁の一体化はモレトメールという追従性のあるシール材を主桁フランジ上面に貼り付けて無収縮モルタルを自然流下で注入した。

床版防水

 床版防水は高性能床版防水(グレードⅡ)「HQハイブレンAU」を1598.8㎡に施工する。次いで基層にFB13(40mm)、表層に高機能舗装Ⅰ型(40mm)を打設する。床版防水は研掃、防水に各1日、舗装は表層基層に各1日と計4日間で舗装および防水工の施工を終えた。

「HQハイブレンAU」を1598.8㎡に施工した


今後の工程

 今後は上下線の鋼桁全面(約3,400㎡×2)の塗り替え、支承の取替(上下線16基×2)、免震ダンパーの設置(同8基×2)を行い、桁の補強および予防的に溶接の止端形状を整える対策も行う予定だ。

 塗装塗り替えに際して、既設塗膜には鉛などが含まれているため、塗膜剥離剤などを使用して撤去する方針だ。


 元請は床版取替がピーエス三菱・川田建設・駒井ハルテックJV。橋面工(床版防水・舗装など)が前田道路。一次下請は青木重起(クレーン)。第一カッター興業(切断)、丸良建設、鈴木組(床版架設)など。