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東名砂沢川橋上に負担をかけず自走多軸台車で桁運搬

NEXCO中日本 東名高速道路交差部直上の桁を4夜間で架設

公開日:2018.12.18

既設PC橋に負担をかけず自走多軸台車で桁運搬
 7主桁に荷重を分散できるよう斜走して退出

 地組ヤードから待機ヤードを経て、架設を行うというひと手間がいるのには地組ヤードから架設現場に鋼桁を持っていくには、既設の東名砂沢川橋を大きな負荷を与えずに渡らねばならず、12時間という規制時間内に架けることは厳しいためだ。


7軸台車(左)と14軸台車(右)を用いた

地組ヤードに置かれていた本線上り桁

 桁は1軸当たり60tの搭載が可能な自走多軸台車を2~3台(7軸台車を前後に2台、14軸台車を中央に1台ないし7軸台車1台+14軸台車)配置したものを2パーティー並行で用いる。桁運搬上特にクリティカルなのが、地組ヤードから待機ヤードに運ぶ(移動距離は約500m)行程で東名の既設PC橋である砂沢川橋を通過する場面だ。


東名砂沢川橋上を桁を載せた自走多軸台車の走行状況を外側から見る

同上の状況を内側から見る

 本来は2台編成で十分運搬可能な桁重量だが、「既設PC橋に運搬している桁荷重がかかると既設桁に大きな損傷が出る」(NEXCO中日本)ため、同橋の直上を桁が通過する際には荷重がPC桁に架からないように工夫した。通過時はまず、後方台車にカウンターウェイトを載せた上で前方台車の荷重を開放して通過させ、中央部に配置した14軸台車を砂沢川橋のぎりぎりまで移動させる。その上で通過した桁の先端を橋の向こう側の前方台車に再び載荷し、中央部の14軸台車の荷重を開放する。その後、後方台車の先端が砂沢川橋のぎりぎりに至るまで移動させた後、再び桁下に14軸台車を配置(砂沢川橋を既に通過している箇所)し、前方台車にカウンターウェイトを設置、後方台車の荷重を開放して、砂沢川橋に新桁の荷重をかけることなく、橋上を完全に通過させた。また、14軸台車自身も188t(94t/台×2台)と荷重が大きい。台車幅は2.3mであり、直行では1~2本の主桁へ集中して荷重がかかる。そのため砂沢川橋の主桁(7主)に荷重が分散するよう斜走しながら退出した(1主桁あたり26~45tの荷重)。


台車の受け替え計画(砂沢川橋通過時)

 17~18日にかけての桁運搬では、吊り上げ架設をほぼ終え荷重を開放した先行の自走多軸台車(待機ヤードから吊り上げ位置への運搬に用いた同じ構成の台車)のうち7軸台車を前方台車と中央の14軸台車の間に入れ、後方台車はそのまま元の地組ヤードに、前方台車は先行して待機ヤードに退出させることで、さらに効率よく運搬させることができた。桁架設している下り線の直下を通る必要があるため、その作業を待ち、ほぼ桁の添接が固まった午前1時ごろに砂沢川橋を渡り切った個所から再び動き出し、午前2時頃には想定より1時間程度早く待機ヤードに到達させることができた。自走多軸台車の桁運搬速度は平均で毎分4m程度。


盛替えの応援に入っていく自走多軸台車/斜走して退出する14軸台車

 桁架設は19時半ごろに待機ヤードから移動を開始し、21時半ごろには架設予定地直下まで移動し、22時ごろには吊り上げを開始した。吊り上げ高さは約14m。吊り上げに使うマルチストランドジャッキは両側に2基ずつ、4基配置しており、1基あたりの揚重能力は240t、合計960tの吊り上げ能力を有する。1ストロークは500mmであり、毎分200mm程度の速さで上げていき24時ごろにはほぼ吊り上げを完了した。吊り上げの際の桁端の余裕幅はおよそ50mm。待ち受け桁側にジャッキを付けてセットバックしており、架設完了後にセットフォーして、セッテイングビームと仮ボルトで仮留めした。仮留めは、東名道の直上であるため、通常桁架設時の仮添接と比べ耐震基準を上げており、L2地震が起きても事故が起きないように、仮ボルト(M22)の本数は、通常の約10倍も多い約3000本(最大で768×4隅=3072本)を使用している。


待機ヤードに置かれていた本線下り線桁/下り線桁の移動開始①

下り線桁の移動②

マルチストランドジャッキ

下り線桁の吊り上げ①

下り線桁の吊り上げ②

下り線の吊り上げ③

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