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RC床版防水に複合床版防水を全面採用

阪神高速 西大阪線と堺線全線をリニューアル工事

公開日:2018.12.07

 阪神高速道路は、11月2日午前4時~12日午前6時までの間、15号堺線(高津IC~堺IC)全線13.4kmと、17号西大阪線(安治川IC~南開JCT)全線3.8kmを終日通行止めしたリニューアル工事を行った。2日午前中にその現場をマスコミに公開した。内容は舗装打替え工263,000㎡(RC床版部表基打替え180,000m2、鋼床版部表基層打替え25,000㎡、表層打替え58,000㎡、うち排水性舗装141,000㎡)、RC床版の従来より高性能な床版防水(以降、複合床版防水)工180,000㎡、ジョイント取替396レーン、ジョイントレス工107レーンなど。人員・工事車両は延べ約13,000人・8,000台が投入された。床版防水には初めて複合床版防水工法を全面投入。騒音振動対策として鋼床版上の舗装撤去にIH式舗装撤去工法、既設ジョイントの撤去にSJS工法も採用している。
 同区間は西大阪線・堺線とも1960年代末から70年代前半に建設・供用されている区間で、1983年、1990年は堺線のみで、1998年、2007年は堺線と西大阪線でそれぞれ通行止めを実施し修繕工事を行ってきている。前回の通行止め工事から11年が経過し舗装のわだちやポットホール、一部で床版の損傷が見受けられることや高速道路の安全・安心を図る目的から、大規模なリニューアル工事を行ったもの。2度の降雨による舗設工事の中断などもあったが、予定通りの数量を工事することができた。(井手迫瑞樹)


修繕履歴(資料類は阪神高速道路提供)

全体の5割に排水性舗装を施工
 ハードフレッシュ工法とHI-SPECシール工法を採用

 舗装打替えは全体の5割に排水性舗装を施工し、走行安全性を向上させる。舗装切削機は12台を現場に入れており、2台当たり1日約7,000㎡、合計42,000㎡を1日で切削する。
 RC床版防水は、床版の経年劣化を考慮し、従来のアスファルト系防水層の下に、RC床版のひび割れに含浸する防水プライマー層を敷設する複合床版防水工を全面的に実施する。またRC床版の微細なひび割れに含浸するため、既設床版の耐久性も向上する。
 採用した工法は、HI-SPECシール工法とハードフレッシュ工法。前者は阪神高速道路とアイゾールテクニカが共同開発した工法で、時間に制約のあるリニューアル工事の現場としては初の大規模な適用となる。今現場では23,000㎡を施工した。同工法においては、第1層目の防水プライマ-層の上に、不陸修正を目的としたプライマー層を施工する。ハードフレッシュ工法は、NIPPOが開発した工法であり既に首都高速道路などで大規模な採用実績があるが、阪神高速道路のRC床版防水としては初の適用となる。今現場では157,000㎡に施工した。


複合床版防水概要図

 床版防水工には、4工区の合計で一日あたり約200人が従事した。
 おおむね昼間(8~20時)に舗装の切削及び防水工を施工し、夜間(20時~8時)に舗装の基層および表層を施工した。


ハードフレッシュ工法①(阪神高速道路提供、以降注釈なきは同)
プライマー塗布状況/同塗布完了状況/端部処理下塗り状況


ハードフレッシュ工法②
端部処理メッシュシート貼付け状況/端部処理上塗り状況/端部処理完了状況


ハードフレッシュ工法③
塗膜防水材塗布状況/珪砂散布状況/防水工完了


HI-SPECシール工法① 1層目塗布状況(左、中)/2層目塗布状況1

HI-SPECシール工法② 2層目塗布状況2/端部メッシュシート貼付け/端部塗膜防水上塗り状況

HI-SPECシール工法③ 塗膜防水施工状況/珪砂散布状況/防水工完了状況

搭乗式スクレーパーやショットブラストも活躍

 従来のアスファルト樹脂系塗膜防水と比較して耐久性が高いものの、従来防水より層数が増加しているため時間がかかる傾向にある。また、大成ロテックの工区では不陸修正層を有しているがより平坦性を確保するため、先端を加工した一本爪のバックホウを使用し床版面に損傷を生じさせないように丁寧に除去、NIPPOの工区では舗装切削後に搭乗式スクレーパーを用いて、床版面に損傷を与えないよう除去し、併せて斫りの時間短縮も実現した。


搭乗式スクレーパー(井手迫瑞樹撮影)

 複合床版防水工の施工については「(不陸修正を伴う)2層目が乾きにくい」(大成ロテック・HI-SPEC工法施工時)、「層数増への対応や材料の保管量が多いと危険物扱いになるため苦労」(NIPPO・ハードフレッシュ工法)などの改善が必要な点もあったが、HI-SPECシール工法については、「硬化促進剤を添加」(アイゾールテクニカ)、「層毎に班を編成し、追いかけ施工することで工程を確保」(NIPPO)するなどして対応した。

 鋼床版は、基層まで舗装全厚を打替える箇所の一部については、IH式舗装撤去工で撤去後、ショットブラストで研掃した。残滓や浮き錆びを乗用タイプの大型剥がし機(ビーストなど)や手斫りなどで除去した後にグースアスファルト基層及び表層を施工した。ショットブラストの投射密度は250~300kg/㎡。本工事ではショットブラスト機19台、大型剥がし機6台が現場に入って研掃した。


IH式舗装撤去工

ショットブラストの施工

グースアスファルトの施工

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