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道路橋床版の点検診断の高度化と長寿命化技術に関する小委員会 施工総研内で

コンクリートの損傷を模擬した床版を用いた非破壊検査共通試験を開催

 土木学会鋼構造委員会「道路橋床版の点検診断の高度化と長寿命化技術に関する小委員会」(委員長:橘吉宏(中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社金沢支店))は、10月25日に富士市の(一社)施工技術総合研究所でコンクリートの損傷を模擬した床版を用いた非破壊検査共通試験を行った。いずれも舗装に覆われた床版上面から計測する非破壊検査技術で、電磁波レーダーを用いた調査技術として5社(応用地質、ジオ・サーチ、東亜道路工業、ニチレキ、三井E&Sマシナリー)、赤外線サーモグラフィによる調査技術として1社(西日本高速道路エンジニアリング関西)が試験に臨んだ。

 近年の床版の損傷は、必ずしも床版下面に亀甲状のひび割れが生じるようなものだけでなく、床版上面の砂利化、鉄筋の腐食、腐食膨張によるひび割れの拡大などが見られ、変状が下面に出ていなくとも床版が損傷しているケースが多く散見されている。そうした変状を直接視認するためには舗装をはがす必要があるが、全てそれでは手間がかかり過ぎる。そのため詳細調査前のスクリーニング技術として、舗装を剥がさずに上面から非破壊点検できる技術を募集し、今回試したものだ。なお、今試験では人力で調査しているが、実際には全ての技術とも車載して走りながら計測することもできる。

電磁波レーダーを用いた調査技術の例/赤外線サーモグラフィによる調査技術
(左:井手迫瑞樹撮影/右:西日本高速道路エンジニアリング関西提供)

 評価方法としては変状区分として水平ひび割れ、砂利化・ASRの2つ、深度区分として①舗装・床版の境界線、床版上面、②床版上面から鉄筋までのかぶり部分、③上側鉄筋の位置、④上下鉄筋間の上部、⑤上下鉄筋間の下部、⑥下側鉄筋の位置、⑦床版下面から鉄筋までのかぶり部分について、模擬床版における変状の有無について判定を求めた。ここで取得した技術やデータなどの成果は、同小委員会でまとめ、土木学会から発刊される予定の『道路橋床版維持管理マニュアル2020(仮称)』に反映される予定だ。(井手迫瑞樹)


各社の技術概要は次の通り(当日説明順)。


 ニチレキ「床版キャッチャー」 マルチステップ周波数方式の電磁波レーダーを使って床版の損傷を舗装上面から測定する装置。開発は5~6年前に開始した。車載タイプ(同180cmが4台、同240cmが1台)を5台保有し、そのうちの1台に手押しタイプ(アンテナ幅90cm)を搭載している。計測車の後部に搭載した電磁波レーダー(200MHZ~3GHz)は、1回の測定で3次元のデータを同時に取得可能であり、左右へスライドする機能により、交通規制なく安全に損傷の多い橋梁端部まで計測を可能としている。

全国の床版上面の損傷を分類整理して、実物大のモデル供試体を用いた実験を行い電磁波の波形をパターン化することで、独自の評価基準を作成し安定した精度で解析することを可能としている。また、PCのリモート操作により解析状況を現場で確認できる仕組みを構築し実績を有している。

ニチレキ「床版キャッチャー」


 ジオ・サーチ「スケルカ」 電磁波レーダーによる非破壊検査技術により舗装上面から床版内部の変状を点検する装置。取得した同じデータを用いて、依頼者の要望に応じてスクリーニング、詳細解析の両方に対応可能。2007年に手押しタイプから開発を始めた。レーダー、解析ソフトとも独自開発している。床版専用の探査機は車載タイプを6台、手押しタイプを3台保有している。車載タイプは1回の走行で2m幅が測定できる(手押しタイプは1m幅)。雑巾がけの要領で取得したデータを平面処理して解析する。探査深度は路面から50cm。車線内は車載型で測定し、必要に応じて規制帯内で路肩端部やセンターラインの直上を手押しタイプで測定する。レーダー使用周波数帯400MHz~2GHz。現場での詳細解析は難しいが、橋長50m程度のスクリーニングであれば点検後、2時間程度で解析結果を出すことは可能である。

ジオ・サーチ「スケルカ」

 東亜道路工業「地中レーダー探査による舗装内部調査技術」 高周波帯域の電磁波レーダーを使って床版の損傷を舗装上面から測定する装置。取得した同じデータを用いて、依頼者の要望に応じてスクリーニング、詳細解析の両方に対応可能。2015年より3Dレーダー社のレーダーやシステムを採用しており、解析ソフトは自社開発している。レーダーの使用周波数帯は200MHz~3GHz。周波数帯が低いと深い箇所、高いと浅い箇所のデータを万遍無くとることができるのが3Dレーダーの特徴。ソフトを入れたパソコンがあれば解析状況はその場で見ることが可能。

東亜道路工業「地中レーダー探査による舗装内部調査技術」


 三井E&Sマシナリー「電磁波レーダーによる床版探査技術」 用途はスクリーニング(高速走行時)、詳細解析(低速走行および手押しタイプ)。自社開発した100MHz~2.5GHz帯まで使用している車載式の多測線レーダーを用いている。2015年ごろから開発を開始した。現場では通常は車両に取り付けているものを降ろして試験した。レーザーによる路面性状とレーダーによる床版の内部調査を同時にできる車両をトノックスと共同で製作しており、今回用いたレーダーはそのプロトタイプ。

 レーダーの測定幅はこのプロトタイプでは1mだが、現在運用している車載版では1.8mとハイエースの幅いっぱいまで図ることができる。1車線の道路幅3.6mを1往復で図ることができる。80kmの速度で走行しても計測可能で規制が必要ない。30~40cm厚の床版内部を検査することができる。現場での解析はデータ取得から1時間程度かかるが、大まかな土砂化程度ならその場で解析できる。それ以上の細かい解析はデータを持ち帰って詳細な解析をすることが必要。

 手押しタイプの「MPLA10GI」も開発、市販化しており、周波数帯で言えば100MHz~10GHz帯まで扱える。主に床版の上鉄筋のかぶりまでを詳細に調べることができる。車載タイプは横断方向7センチ間隔を12測線で図ることが可能。MPLA10GIは、11mmの間隔で256側線を測定可能だ。

三井E&Sマシナリー「電磁波レーダーによる床版探査技術」

 

 応用地質「電磁波レーダーを用いた床版劣化診断」 用途はスクリーニング。車載式のみ。ホーンタイプのアンテナを8台並べている。測定機器は2m幅であり、牽引方式で測定している。実際の車載と違うのは、距離計がいまはエンコーダーを使用していますが測定誤差を考慮し、レーザードップラー方式の距離計を専用車につけて距離を測っている。また、GPSを搭載することで取得データを座標に紐付けしている。アンテナの中心周波数帯は2GHz。路面から45cm上げた状態で測定することが可能だ。本格的に舗装や床版向け測定機を開発し始めたのは2、3年前から。

 その場でも概略的な判定は行えるが、通常車載でやる場合には、持ち帰ってデータ整理してから解析している。業務としては1ヶ月弱あれば詳細な解析データことができる。レーダーは米国子会社のGSSIのシステムを用いている。

応用地質「電磁波レーダーを用いた床版劣化診断」


 西日本高速道路エンジニアリング関西「赤外線サーモグラフィによる床版上面評価」 用途はスクリーニング。車載式を1台保有。機器およびソフトは自社開発したもので、開発は平成22年から開始した。赤外線カメラにより表面温度の違いを検出することでコンクリートの劣化の有無を測定するシステム。測定幅は3.6mと1車線全体を一度に図ることができる。深度は舗装上面から100~150mm(上側鉄筋の下端程度)。但し温度条件に左右されるため、春秋の深夜の降雨していない状況が点検においては望ましい。カメラは路面から3mの位置にあり、電磁波レーダー探査のように路面ギリギリに設置しなくても良いという特性がある。時速100kmの速度でも測定可能なため、一般道路はおろか高速道路においても車線規制の必要がない。平成28年度から西日本高速道路関西支社管内を中心に床版上面のスクリーニング手法の一つとして活用を図っている。

西日本高速道路エンジニアリング関西「赤外線サーモグラフィによる床版上面評価」

(2018年12月11日掲載)