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鋼重6千tを超える鋼単純ニールセンローゼ桁を多軸式特殊台車で移動させ、台船にロールオンし一括架設

東京都港湾局 東西水路横断橋現場ルポ

公開日:2018.10.31

 東京都港湾局は、中央防波堤付近の埋立地間の水路に架かる東西水路横断橋(仮称、以下略)の架設を行った。鋼重6千tを超える鋼単純ニールセンローゼ桁を多軸式特殊台車(以下、多軸台車)で移動させ、台船にロールオンし一括架設するという例を見ない施工を行った同橋について、現場を取材レポートする。(井手迫瑞樹)

東西水路横断橋概要
 東京都港湾局は現在、東京港臨港道路南北線事業および接続道路を整備中だ。総延長は6.6kmで10号その2埋立地~第二航路の下をトンネルで通し、中央防波堤内側埋立地と外側埋立地間の水路を橋梁で跨ぎ、さらに東京港臨海道路と立体交差しランプで接続する。事業は国と都が分かれて実施しており、海中の沈埋函トンネルを国(東京港湾事務所)と、陸上トンネル部を国より都が受託して施工しており、平面道路と橋梁部を都が担当している。東西水路横断橋は、その名の通り、埋立地の間を流れる水路に架かる橋梁で、橋長249.5m、全幅員34.3m(張り出し部も含める、桁間は24m)、鋼重6,230tの鋼単純ニールセンローゼ橋である(設計条件は右表)。下部工は鋼管矢板井筒基礎+3重管杭基礎形式を採用している。


東京港臨港道路南北線事業および接続道路の施工箇所と完成イメージ(東京都港湾局資料より抜粋)

東西水路横断橋側面図(東京都港湾局提供、以下注釈無きは同)

同断面図

アーチリブ平面図

鋼床版平面図

橋梁の特徴
 一括架設を採用したところに大きな特徴がある。計画段階から周辺工事との競合を避けるために、海の森水上競技場の建設工事などと並行して橋梁を製作・架設する必要があった。そのため架設位置その場でのベント架設は困難と判断し、台船架設による一括架設を採用した。長大な橋長であるにもかかわらず単純径間を採用したのは、橋梁直下を通る水路にボート、カヌー(スプリント)の競技を行う海の森水上競技場を整備するためだ。
 さて、本橋梁の地組立・上架は現場ヤードで行った。「各社の工場から運ばれてきたブロック(1ブロック当たり重量はアーチリブが15~45t、補剛桁が最大50t、鋼床版が5~15t)2つを架設用の1ブロックにする作業を『地組立』と呼び、そのブロックを吊り上げて組み立てていく作業を『上架』と呼んだ」(IHI・JFE・横河・三井JV)ということで以降、それに従って記す。


上架の順番

 上架はまず補剛桁から行った。補剛桁は図のような順番で15回に分けて上架された。上架する補剛桁ブロックは、桁高が高いため、上下に分割されたウエブを水平継ぎして地組したブロックが5ブロック、上下に分割されたウエブを水平継ぎしたブロックを4ブロック分一体地組して上架しているのが1ブロック、一部上下地組ブロックと通常のブロックを一体上架しているブロックが1ブロック、単純に横に2ブロックをつないで地組し、上架しているのが8ブロックあった。補剛桁は左右1つずつ配置されているため、全部で30ブロックに及んだ。補剛桁はA1側からP1側に片押しで9ブロック上架していった後、P1側からA1側へ同様に3ブロック上架。最後に中央の3ブロックをA1側からP1側に向かう形で上架していった。なお、鋼床版は補剛桁を追いかける形で配置していった。鋼床版は標準部を長さ13.2m×幅3mを基準に割り付けたパネルであるが、両端部は補剛桁の繋ぎ目と異なる箇所が多々あり、様々な形状の鋼床版パネルが配置されている。そのため鋼床版のパネル数は実に254枚に達し、溶接長も大きく増加している(後述)。


鋼床版パネル配置詳細図

上架状況① (左)2017年7月、(右)同8月(東京都港湾局資料より)

上架状況② (左)2017年9月、(右)同10月(東京都港湾局資料より)

補剛桁の上架

 補剛桁ブロックの上架後、アーチリブおよび横支材の上架を行った。架設は両端を施工した後、A2側から先行して架設、次いでA1側を架設し、最後に中央部3ブロックを施工する手順をとった。アーチリブは単材架設が両端と閉合部の5ブロック、2ブロックを上架用に横につないで1つに地組したブロックが11ブロック(両弦合計32ブロック)で構成されている。なお、横支材も8箇所施工した。部材同士の接合は、基本的に溶接構造とした。添接構造を採用したのはUリブ同士の接合部およびアーチリブ横支材のみである。箱桁の板厚も50mm以上(最大99mm)と厚く、鋼床版も標準は16mmながら端部は40mmに達する箇所もあった。溶接箇所は多く補剛桁で24×2箇所、アーチリブで28×2箇所あり、現場での溶接延長は実に100km(隅肉6mm溶接換算)に及んだ。溶接部の仕口誤差は一般部で許容値として±3mm、板厚が50mmを超える個所では±5mmで設定した。また、パイロットホールを設けてシミュレーション、仮組した箇所もある。現場では実際に溶接施工試験を行い、溶接品質が確保されていることを確認した上で実施した。また、現場では全天候型のパネルを利用した風防設備を組んで溶接への悪影響を抑えている。また、東京港ゲートブリッジと同じくSBHS鋼を採用することで溶接施工性の向上と、鋼材重量の低減を図った。地組立は2017年4月から始め、上架を経て架設直前(18年7月)に一括架設準備が完了した。


上架状況③ (左)2017年11月、(右)同12月(東京都港湾局資料より)

上架状況④ (左)2018年1月、(右)同3月(東京都港湾局資料より)

上架状況⑤ 2018年5月12日 井手迫瑞樹撮影

アーチリブの上架状況

溶接状況

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