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撤去の手間撤去の手間を軽減するHydro-Jet RD工法も活用

阪神高速道路 堺線玉出入口でUFC床版を初採用

公開日:2018.09.27

要素技術(フランジガード)
 同工法の採用にあたってはスタッドを露出させた時点での構造への影響を計るべく、3次元特性FEM解析で検討した。

 その結果、同状態ではB活荷重作用時に鋼桁と床版のずれ変形に起因するせん断力によって、スタッドに対して降伏応力の3~4倍程度の曲げ応力が発生するが、鋼桁および床版については、許容応力度を満足することが分かった。つまりスタッドを曲げ降伏させなければ鋼桁および床版の構造安全性は確保できると判断、WJで露出したスタッドの曲げ補強材として①スタッドが降伏荷重の4倍程度の水平荷重に対してもせん断剛性を維持でき、②狭隘な場所で、短時間で設置・除去が可能であり、③鋼桁に穿孔などのダメージを与えない、鋼製補強材「フランジガード」を開発した。


フランジガード

 フランジガードでスタッド1列または2列の一番外側のスタッドを鋼材で囲み、鋼材とスタッド、および床版の隙間にモルタルを充填して活荷重作用時のスタッドの降伏を抑制する構造としている。今回の施工では、フランジガードは全スタッド列の約50%に配置した。スタッド無補強時と比べ、2本掴みの場合は、スタッドの降伏水平荷重の約3.5倍、1本掴みの場合は同約4倍まで水平荷重に抵抗する性能を有している。
 フランジガードは、前面ピースと背面ピースをボルト接合し、モルタルを注入する簡易な構造であるため、床版更新時の撤去も容易だ。

要素技術(WJ養生足場、既設スタッド切断)
 WJを採用する場合、課題となるのが水の問題だ。現場で使う水量は1日当たり4㎥ほどで約80%はバキュームで回収できる。しかし2割は足場内の床面に落水する。とりわけ吊りチェーン周りの漏水対策には気を配る必要がある。そのため、①足場床面にアスファルト防水シートを敷き詰め、WJ仕様により必要な防水・防音機能を付与、②吊りチェーンと床材との交差部に塩ビ管を据え付けて流動性や柔軟性のあるシリコーンを充填し、振動に強い止水構造を採用、③吊りチェーンと防水シート背面に漏水検知センサー配置――などといった対策をおこなった足場を製作し、問題なく施工することができた。(足場自体は日綜産業のクイックデッキを採用している)


足場はクイックデッキを採用した

漏水検知センサーや防水対策を施している

 既設スタッドの切断は、プラズマアークを使用した切断機を使用している。鋼製補強材を撤去した隙間(約50mm)で施工可能な切先装置を用い、切断後の残置を5mm程度までに抑制でき、新しいスタッドを溶殖するための切断・研磨作業を大きく軽減できる。また、プラズマを使用しているため、低温かつ迅速で、桁への熱影響をほとんど出さず、かつ1本当たり10秒程度の早さで施工できた。



既設床版撤去工程

UFC床版の製作・架設
 今回のUFC床版に使用されたのは、圧縮強度が180N/㎟、ひび割れ発生強度が8N/㎟、弾性係数が46kN/㎟のエトリンガイト生成系のUFCで、普通のコンクリートの4~5倍の材料強度を持っている。そのため、高い圧縮強度とPC鋼材によるプレストレスによって、部材を薄く設計できる。当該箇所では道示に従った設計をすると、PC床版の場合210mmの厚さが必要となるが、UFC床版では150mmに制御できる。そのため、床版厚増加による道路縦断線形の変更や重量増による桁補強も最小限にすることができる。


UFC床版概要図/UFC床版とPC床版およびRC床版との厚さ・重さ比較

 床版の製作に際しては、「薄く、誤差が許されない」(鹿島建設)ため、規格値を厳重にし、誤差の許容幅を狭めた。
 材料強度が高いため、定着体をコンパクトに設計することが可能だ。PC鋼材の配置を工夫して、交差定着部は中央に設けている。これにより端部に場所打ち箇所を設けることなく、全橋にわたってプレストレスを導入できるというのが特徴だ。実際には22mの橋長(1スパン)に対して、端部パネルを両側に2箇所と中央に交差定着パネルを配置し、交差パネルと端部パネルの間に標準パネルを5枚ずつ配置、1径間あたり13枚の床版パネル(1枚約4t)を使用した。パネルの寸法は標準パネルで橋軸方向1,780mm(端部は1,415mm、交差部は1,080mm)×橋軸直角方向6,250mm。パネル内は橋軸直角方向にプレテンションのPC鋼材、橋軸方向にポストテンション用のシースを埋め込んでいる。パネル同士の間詰(20mm)に場所打ちUFCを充填した後、橋軸方向にプレストレスを導入して一体化する。


交差定着パネル

UFC床版架設方法
 施工方法は、工場で製作したパネルを現場に搬入し、専用架設機を用いて架設した。専用架設機は自重8.6tの4輪車「リフトローラー」(最大吊上げ能力8.0t)。主桁間隔4mに対応して、車輪間隔(車軸中心間)は3mとした。これは架設時にスタッド定着部分の走行を避けるためである。また、硬質ウレタンゴム製のタイヤ(250mm幅)を使用し、新設床版を傷めず、かつ汚さないようにしている。都市高速道路では路肩が狭い箇所が多く、大型クレーンでの作業が困難なため、1車線のなかで床版を運搬架設ができる機械となる。UFC床版が軽量なため、このような機械が開発可能になった。床版架設は大体1径間を2日で架設しており、1日当たり6~7パネル、1時間当たり1パネルが架設速度と言えそうだ。



床版の架設状況

リフトローラー(遠景)

リフトローラへ門型クレーンから床版を移す。

リフトローラーで床版を運ぶ/タイヤは硬質ウレタンゴム製を採用している

現場は狭小なため予め本線側の地覆・壁高欄用鉄筋を曲げている/わずかな隙間しかない

スタッドに合わせて慎重に架設していった

 架設後は径間の床版全体に縦締め緊張を導入し、一体化させ施工完了となる。

 施工は鹿島建設(床版架設)、飛島建設・第一カッター興業JV(床版撤去技術)、一次下請は富士ピー・エス(床版製作)など。

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