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撤去の手間撤去の手間を軽減するHydro-Jet RD工法も活用

阪神高速道路 堺線玉出入口でUFC床版を初採用

 阪神高速道路は8月21日、玉出入口高架橋の床版取替を主とする高速道路リニューアルプロジェクトの現場を報道陣に公開した。同高架橋では6径間中3径間に日本で初めて道路橋床版にUFC床版を用いた床版取替を実施した。同床版は特殊な鋼繊維を混入した超高強度繊維補強コンクリート(UFC)で構成されており、圧縮強度が高いため、通常取替に使うプレキャストPC床版に比べて30%以上の軽量化、取替前のRC床版厚210mmから150mmの薄肉化を図り、なおかつ継手がほとんどない床版構造であることから高い耐久性を期待できる特徴を有している。既設床版の撤去においても、ウォータージェット(WJ)工法を用いた分離切断工法を採用し、床版撤去にかかる通行止め必要日数を約半分に短縮している。注目の現場を取材した。(井手迫瑞樹、2018年9月27日掲載)


15号堺線の沿革と今回の施工箇所(写真赤囲い部)

橋梁概要と損傷状況

 玉出入口は15号堺線のちょうど中間に位置する入口。完成供用したのは1970年3月であり、今年で48年が経過した。阪神高速全体での交通量は約75万台(うち、15号堺線は約7万台)、玉出入口は通行止め前で一日約7千台の交通量(うち大型車混入率は1割程度)となり、阪神高速道路では交通量が多い入口の一つとなる。

 同橋は橋長約130mの6径間単純合成鈑桁で、22m前後の橋梁が6つ連なっている。今回はそのうち、本線側に近い3径間でUFC床版を用いた床版取替を行っている。

 昭和39年道示で設計された橋梁であり、既設RC床版の厚さは180mmと薄く、主桁間隔も4mと長く、大型車による活荷重たわみを大きく受ける床版であるといえる。床版面に損傷がみられたことから1982年(昭和57年)に下面鋼板接着補強(板厚4.5mm)を実施した。しかし、2015年の定期点検で、鋼板接着した床版に大きな損傷が見られてきたため、さらなる詳細調査の結果、阪神高速の高速道路リニューアルプロジェクトの中で初めて床版取替を行う区間として当該橋梁を指定した。

 さて、当該橋梁のRC床版内部の損傷は、主に床版内部に生じた水平ひび割れである。水平ひび割れを路面上からコアを抜いてみると、上鉄筋近傍(上面)や下鉄筋近傍(下面)に水平ひび割れが出ており、また、下面接着補強した鋼板と母床版の間に浮きとみられる現象が出ていた。浮きが見られた部分は全体の6割を超えており、補強効果も限定的になっていることがわかった。一方で上面からの貫通クラックは殆どない。通常、水平クラックは貫通クラックから水が伝い、腐食膨張した鉄筋に沿って現れるが、当該床版ではそれがない。ただ床版厚は180mmと薄く、床版を支える主桁間隔は4mと長い。そのため交通荷重の通過によって、桁を中心にせん断応力が働くことで床版がそり、ねじりが入った結果もしくは補強鋼板と床版との剛性差により床版が補強鋼板に引っ張られて水平ひび割れの発生や鋼板と床版間の縁切れを生じた可能性がある。鋼板の浮きについては、ハンチ部やアンカーから水が入り腐食が生じた可能性もある。いずれにせよ撤去後の床版を用いて輪荷重載荷試験を行い、損傷メカニズムを解明していく方針だ。


施工

 施工は、本年3月から現場に入っている。まず1カ月かけて足場を設置した後、供用しながら、3径間(堺P247~玉出P3)のハンチ部分の先行撤去を4月から6月半ばまで行った。その後、7月10日に玉出入口の通行規制を開始し、7月17日~8月初頭まで壁高欄や床版の撤去を行った。UFC床版の架設は8月17日から開始し9月上旬に終えた。


床版の撤去概要

 今回の床版取替は、入口に近い3径間でプレキャストPC床版およびワイヤーソーによる床版撤去方法を、本線に近い3径間でUFC床版およびWJを使った床版撤去技術を用いて、施工性などを検証する。床版厚さはプレキャストPC床版210mmに比較してUFC床版は150mmと非常に薄い。今回の記事ではWJによる床版撤去を行った飛島建設(株)・第一カッター興業(株)共同研究企業体とUFC床版による床版更新を行った鹿島建設(株)を施工者として新技術を用いた3径間の詳細のみ記す。

 同部分では床版の急速撤去技術としてWJを用いた床版撤去工法「Hydro-Jet RD工法」を採用した。床版撤去の際、これまでは既設床版と鋼桁の切り離しはブレーカーによる手作業で実施していたため、多くの手間と時間を有していた。また、合成桁構造の場合、手当をせずに切断すると曲げ耐力が一時的に足りなくなってしまう。そうした点をWJと鋼材・モルタルによる仮補強により補っている点が特徴だ。

Hydr0-jet RD工法の概要図


 同工法はまず、供用中の桁下に吊足場を設置し、床版下面からWJで鋼桁との接合部を床版を傷めないように5cm程度はつり、全てのスタッドを露出させる。その後、桁と床版の隙間に鋼製補強材とモルタルによる仮補強を行い、通行止め後に鋼製補強材を撤去、床版を橋軸直角方向に事前に切断し、1パネル毎にスタッドを切断して床版を撤去する。供用中に仮補強までの作業を約50日(3スパン、1スパン長22m、2主桁の場合)かけて施工することで、通行止め後の作業は従来18日(1スパンあたり)だったものを8日程度と、半減以下にさせることができた。

 WJの施工にあたっては狭小部に適用でき、なおかつ連続施工可能な装置を第一カッター興業が開発した。多孔式かつ斜角を有するノズルヘッドを用いて接合部表面をはつり、スタッド位置を確認した後、次いで露出したスタッド間にノズルを挿入して貫通するまで切削。ノズルを横向きに噴出するタイプに交換し、スタッド間に残ったコンクリートをはつるというもの。切削延長は1日当たり1.5~2.5m程度である。

WJによる施工

 その後、桁と床版の隙間を利用し、仮補強を実施する。仮補強はフランジを保持するような形状の鋼製補強材(フランジガード)と、鋼製補強材とスタッド、床版の空隙を埋める高強度無収縮モルタルからなるもので、鋼製補強材の前面から特殊モルタルを注入(15時間で40N/㎟)することで、合成桁橋と同等の構造性能を確保する。また、床版を撤去、架設する際は、桁に載るクレーンなどの重量も担保しなければならないが、予め計算して鋼製補強材の数量及び配置を決めておくことができ、従来の補強方法よりも経済的に仮補強や重機選定が可能になる。




WJではつった後、フランジガードで仮補強し、プラズマアークでスタッドを切断していく


 通行止め後は所定位置の鋼製補強材を撤去し、床版、次いでスタッドを切断していく。