道路構造物ジャーナルNET

カンボジア プノンペンの「日本橋」

日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会 チュルイ・チョンバー橋の補修工事を現場視察

公開日:2018.08.20

 現場には翌日のお昼過ぎに赴いた。さすがに熱帯だ、熱い。午前中に現場についてのレクを受けた事務所からチュルイ・チョンバー橋まではそれほど離れていないのだが、1日中ラッシュアワー状況で、速度は20~30kmほどしか出せず、時間的距離は遠く感じる。中でも同橋付近はボトルネックになっており、4車線の中国がかけたPC橋はあるが、交通需要に比して需要は足りおらず。速やかな「日本橋」の開通が求められている。


中国橋を渡る/右手部には建設中の日本橋のアプローチ部下部工

 さて、現場はPC橋の旧橋がほぼ撤去されていた。鋼橋については塗装の塗り替えが進んでいた。鋼橋総延長のうち約3分の1の部分についてブラストが完了し、追いかけるように塗り替えを行っていた。

 鋼橋部分の詳細構造は中央径間P3~P6、側径間P1~P3、P6~P8とも鋼床版箱桁構造であるが、中央は全幅員が鋼床版構造であるのに対し、側径間車道部は縦リブ形式の鋼床版箱桁、歩道部はH鋼およびブラケットを張り出させ、その上にRC床版が配置されている構造になっている。そのため、国内で見られる同形式と同様、鋼・コンクリートの境界部分から水漏れが生じており、コンクリートのひび割れや剥落、鋼材の断面欠損や塗装劣化が見られた。コンクリート部については、上部工は勿論、下部工も含めて、断面修復やひび割れ注入、含浸材などを施していた。鋼材の断面欠損が生じている箇所については、当て板などで補強を施しており、その上で塗り替えを行っている。

 同橋は、塗装履歴から鉛が入っているであろうと判断(実際に側径間部には鉛丹、中央径間部には鉛入り錆止め塗料が使われていた)し、設計を進めていった。最終的に日本のODAとして最新の技術、最大の安全性を担保するため、環境に優しく、高い塗り替え品質を担保できる技術として循環式エコクリーンブラスト工法を採用した。また、エアラインや大型集塵機など鉛に対する安全設備は全て日本同様のものを備えている。足場も工夫している。基本的にSKパネルを採用しているが、鋼桁の上にシートを引き、吹き上がりを地具で抑え、屋根状に桁を覆った。また、側面は全て板張り養生を採用している。さらに排気口には粉塵測定器を設置し、粉じんが漏れればすぐに対応できるように備えている。


桁を覆う足場(右橋梁)

ここで視察団一行の記念写真を撮影した

 塗り替え塗装は橋本体だけでなく、支承や付属の水道管や損傷が著しい箱桁内面までを施工することになったため、塗り替え面積は最終的に20,000㎡弱まで至った。箱桁は幅が6~7m程度で、桁高は中央径間が2.5~4mの変断面、側径間が4mとなっている。ルーツブロワー(55kw)などの設備は足場内ではなく桁上に置いている。機械から足場までの揚程は10mあり、これがエアーブラストの圧送距離を制約している。今回設備類は2径間の中央部においており、左右65mの距離までブラストを打てるように設計している。


ブラスト前の桁

 ブラストは、先行ブラスト、(戻り錆を防止する)リブラスト、回収作業を同時進行していく。除錆度と表面粗さを管理項目としている。



ブラスト設備

 ブラストは7時半から16時半の就業時間。午前中で4時間、午後で3時間のブラスト作業を行う(回収は同時進行)。スタッフは日本人が9人、現地スタッフが4人。日本人で回る工程を組んでおり、施工している。現場は4ノズルを用いて施工しており、さらに4ノズルを予備機として置いている。



ブラスト施工した鋼桁部

 新橋は膜厚が100µ程度しかなく非常に薄いため、1ノズルあたりの施工面積は旧橋の倍程度施工でき、非常に戻りさびも少ない。旧橋に関しては腐している箇所も多く、しっかりリブラストを打ちこむ必要がありそうだ。


エコクリーンショットは循環使用する/塗り替え塗装状況

 作業上の最大のネックは現場内の暑さだ。桁内部の温度計は40度を振り切っている。取材当時は乾季であり湿度は30%程度のためまだ凌げるが、雨季などにおいては、温度はそのままに湿度は80%以上に達するという。その時に役に立つのがエコクリーンスーツ(左写真)。内部に冷却装置を組み込むことで、体感温度を15~20度下げることができる。記者も着用して動いてみたが、着用前の高温が嘘のように快適に動くことができる。現場では必要な時に同スーツを着用して作業しており、業務を効率化している。

 今回、研削材はスチールグリットを持ってこようと考えたが、床版継ぎ目からの水漏れが尋常でなかったため、東洋製鋼製のSUS系のエコクリーンショット(カットワイヤータイプ、φ0.8mm、SUS430、300ビッカース)を持ってきた。水に濡れても錆びずに乾かすことができるというメリットがあり、単価が高いデメリットより、工事の停滞を防ぐことができるというメリットの方が高いという判断で採用している。
 塗り替えは中国塗料(既存塗料も中国塗料)製の塗料を採用している。

 元請は大林組。

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