HOME現場を巡る一覧NEXCO西日本 沖縄高速道路福地川橋で鋼トラス橋初となる床版取替

現場を巡る詳細

突貫工事で建設した沖縄道北部区間ならではの構造形式に苦心

NEXCO西日本 沖縄高速道路福地川橋で鋼トラス橋初となる床版取替

 西日本高速道路九州支社沖縄高速道路事務所は所管している沖縄自動車道の福地川橋と湖辺底橋の床版取替を主とした大規模更新を行っている。とりわけ福地川橋では鋼トラス橋としては初となる床版取替であり、沖縄自動車道独自の構造と相まって手探りしながらの床版取替工となった。その内容について現地取材したものをまとめた。(井手迫瑞樹)


 今回対象となる福地川橋(上り線)と湖辺底橋(下り線)は、それぞれ橋長228.7m、幅員10.45m(有効幅員9.56m)の鋼3径間連続トラス桁、橋長256.45m、幅員10.45m(有効幅員9.56m)の鋼2+3+2径間連続非合成4主鈑桁だ。いずれも沖縄海洋博に間に合わせるために突貫工事を行った許田IC~石川IC間のいわゆる北部区間にあり、塩害による損傷が大きい。床版はいずれもグレーチング床版を採用しているが、鉄筋近傍の塩化物イオン濃度は鉄筋腐食限界値を超える2kg/㎡に達している個所も多くあった。床版防水は建設当初は設置しておらず、2000年の沖縄サミット直前に高機能舗装を敷設した際に初めて設置した。つまり24~25年は防水工未設置の状況で供用していた。そのためか、上面は砂利化が進行しており、床版を撤去してみると縦桁のフランジの上面の錆も進行していた。


湖辺底橋床版上面の砂利化現象(NEXCO西日本および川田建設提供、以下注釈無きは同)


福地川橋床版の損傷状況(左:下面の剥落状況、右:上面の砂利化現象)

 今回は鋼トラス形式である福地川橋に焦点を絞る。既設床版厚は210mm。増厚はしていない。横断勾配3%、縦断勾配1.9%。損傷状況はハンチの付根部分が際立ち、コンクリートが剥落して鉄筋が腐食している状況。もっとも、漏水の跡はあったが、現時点で漏水している箇所はなかった。床版防水が効いていることの証左と言える。


福地川橋トラス上部の損傷状況

 福地川橋を含む沖縄自動車道の鋼トラス桁の床版が他と違うのはトラス主構の上に床版が載っていないことだ。福地川橋の床版は、トラスの上に配置されている4本の縦桁(これは小さな鈑桁と思ってよい)の上に床版が載っており、トラスの主構には床版は載っていない。「これは沖縄自動車道だけかもしれない」(元請の川田建設)。他の鋼トラス橋は主構が一番外側にあって、そこと中に1、2本増桁の様に配置されている縦桁上に床版を載荷しているのが通常だ。


トラス主構の外側に縦桁が配置されている


床版取り換え前の事前対策

 施工にあたっては、「鋼トラス橋は、過去に米国のミネアポリスにおいて落橋事故が生じたこともあるようにリダンダンシーに乏しい橋梁形式であるため」(沖縄高速道路事務所)、トラス桁の腐食調査をしっかりと行い、その上で床版取替前にトラス補修と補強工事を行った上で床版取替に着手した。また、「床版の撤去および架設をする際の施工段階ごとにトラス部材の応力調査を行い、安全性を確認してから進めるよう指導した」(同)。


福地川橋全景写真


 また、床版剥離時に縦桁に損傷が起こる可能性があるため、縦桁耐力を考慮したジャッキの最大荷重(剥離時にかけて良い最大荷重)を予め算定しておき、管理しながら施工するという配慮もおこなっている。加えて、床版支持桁の不当沈下による負荷曲げモーメントの検討も事前に行った。さらに鋼トラスの縦桁の方が鈑桁と比較して、上フランジ幅が狭いため、床版のずれ止めスタッドジベルの配置の検討もしている。

 また、構造上の応力状態が一番厳しいのは既設床版が撤去された状態で、クレーンが新しいPC床版を吊っている時なので、そういう場面の応力照査も行っている。チェーンの吊り元の不足を補う足場計画の策定も必要とされた。


 具体的には、桁下と橋面を3次元レーザースキャナにより測量(オービット)し、そのデータを使って、数値化し橋梁の現状を把握した。その数値を過去に造った線形図面と照らし合わせて、取替床版のパネル寸法などを決めていった。実際にPC床版を設置する時点は、完成形でなく多少たわんでいる状態になるので、施工ステップを考慮し各荷重によるたわみ値をそれぞれ算出して、実際現場でPC床版設置前に測定する標高の設計値を出しておき、それをもとに現場で標高管理を行う手順を踏んだ。これは、クレーン載荷時のたわんでいる状態で計測すると完成形に齟齬が出るため、床版や壁高欄の高さを荷重がまだ乗っかっていない状態の設計値を出して、それに合うような形でPC床版を設置していくものだ。


クレーン架設状況

 また、NEXCO総研よりクレーンで床版を剥いだ時に桁の剛性が変わるのではないか? という話が出たため、架設・撤去時のトラスの揺れによる応力についてひずみ計を設置して計測している。構造計算では出てこない「揺れ」を現場で確認しようというものだ。「クレーン旋回時の応力状態を確認することで計算から算出できない部材への負荷もわかるし、応力状態から実際にどのように変形しているのかも想定できる」(川田建設)という。

 足場については、クイックデッキを採用することで、吊り元の不足と作業環境の改善を両立させた。また、「チェーン盛り替え作業の回数を減らすことができるため、塗装作業時の品質改善にも寄与できる」(同)としている


独自の構造

 福地川橋の構造で課題となったのが、先に指摘した一番外側にある縦桁だ。縦桁で床版を支持するトラス桁は、ただでさえ鈑桁と比べると縦桁の剛性が低い。特に最外部に位置する縦桁は左右とも主構の外にあり、ブラケットで支持されている。床版の架け替えには通常トラッククレーンを用いるが、外側の縦桁に直接アウトリガーを載せることが出来ないため、今回はクローラークレーンを用いている。現地ではキャタピラの下に鉄板とゴム板を敷き、勾配調節して直に床版で受けている。クローラークレーンのキャタピラは主構間に収まるように計画した。このような床版構造を採用したのは、「沖縄道の北部区間の施工時間が2年しかなかったため、施工時間の短縮が図られる構造を採用したのだろう」(同)と見られる。 



足場はクイックデッキを採用した


足場の外観と足場内の状況

 今回の床版取替では、そのまま既設の縦桁に新しいPC床版を架設しており、構造の改良は行わなかった。但し、弱点となるブラケットなどは既存ブラケットの下にさらにブラケットを付けるなどの補強を施している。


縦桁ブラケットの補強


 また、床版を撤去してみると縦桁のフランジの上面の錆も進行しており、ケレンに時間を要した。沖縄自動車道では縦桁(鈑桁)の上フランジにずれ止めを打って、床版を架設しているが、上フランジ上面に、グレーチングのビームを支えるためのライナー材がリブのような形で付いている。それを撤去する際、塩害による腐食が進んでいて、かなり削り込まないと錆が取れないのが時間を要する原因となっている(後述)。


縦桁のフランジの上面の錆も進行(井手迫瑞樹撮影)

【関連記事】

NEXCO西日本 沖縄高速道路事務所 大規模更新・大規模修繕事業が、年1、2橋のペースで進む