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50度強の斜角、桁下には県道、通学路

NEXCO西日本関西支社 ロッキングピアを有する中国道安倉橋をRC巻立てで耐震補強

公開日:2018.04.14

 西日本高速道路関西支社神戸高速道路事務所は昨年の8月末から、ロッキングピアを有する中国道安倉橋の耐震補強を進めている。安倉橋は中国道が兵庫県道142号線米谷昆陽尼崎線を跨ぐ箇所に架かる高速道路の本線橋で、安倉北交差点の南側に近接している。また、近くには宝塚市立安倉北小学校があり、県道の左右にある歩道はその通学路としても使われているが、それを一時的に規制する必要がある。こうしたことから安全面にも非常に留意する必要がある。また、斜角も小さくRC巻立てを行う際は、削孔で非常な手間を要している。関西支社管内ではロッキングピアを有する橋梁の内、3径間以上でかつ斜角または曲線を有する橋(13連)について優先的に対策を実施しており、安倉橋はその一つとして工事が進んでいる。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


斜角がきつく、下には県道が走る安倉橋(井手迫瑞樹撮影)

概要
 安倉橋は1970年に供用された橋長38.963m、幅員15.950mのRC3径間連続中空床版橋である。下部工は橋台が逆T式、橋脚が鋼製ロッキングピアを採用している。また、斜角は54.57°と小さいのが特徴だ。建設当時は桁下の県道や歩道への影響を最小限にすべく、歩道部にロッキングピアを設置したが、ロッキングピアは単独では自立できないことや、とりわけ熊本地震ではロッキングピアを有する橋梁の中でも斜角が小さい橋において被害が生じたことから優先的に対策しているもの。橋台は前面を増厚し、軸方向鉄筋をフーチングと桁に定着することで固定化し、橋脚部はロッキングカラムの下にある台座も含めてRC巻立補強し、かつ上下端ともに剛結化するもの。

事前工
 こうした補強を行う上での課題が施工上の制約だ。上部工には光ファイバ通信ケーブル管、地下には各種インフラが埋設されており、そうしたインフラを施工前に保護しなくてはならない。また既設の歩道の下に橋脚のフーチングがあるため、巻立てを行うためにも一次的に歩道を切り回して掘削する必要がある。歩道は、車道を少し狭めて、1.5m幅を仮設で確保した。加えて作業ヤードを確保するために既存橋台の前面にある法枠ブロックを一時的に撤去し、本体の補強工事に入った。一方で、基礎は直接基礎を採用しており、補強後の条件で照査した結果、補強の必要は認められなかった。

補強詳細
 補強は西側のA1、P1側から施工しており、取材した3月下旬段階では西側の下部工2基の補強がほぼ完了した状態だった。
 補強は、橋台を250mm前面にRCで増厚し、橋脚を台座幅から250mmのRC巻立てで補強していた。とりわけ橋脚の補強は、上下線ともにロッキングカラムが5本ずつあるが、それを全て巻立てて壁式のRC橋脚に変えるもので、厚さは1400mmとなる。橋脚の台座幅がおよそ900mmあるためで、その厚さを基本として考え、その周囲に250mmずつ巻立てるものだ。


安倉橋耐震補強一般図(NEXCO西日本提供、以下注釈無きは同)

 橋脚・橋台は基本的に並行して作業を進めた。まず各種インフラ設備を移設・保護、歩行通行帯の確保、工事規制などを行った後、橋台については立入防止柵をはずし、既設の法枠ブロックをバックホウなどを使って撤去し、7~8m程度の作業ヤードを確保した。次いで橋台の補強工事のための足場工を設置し、増厚補強を行うのに支障となる既存の縁端拡幅(200~300mm)工を撤去し、コンクリート表面をWJで表面処理した上で、劣化部を断面修復・ひび割れ注入で補修し、フーチングと中空床版桁、既存橋台にそれぞれあと施工アンカー用の削孔を行い、鉄筋を上下及び水平に配置し(主鉄筋はD29を使用し300mm以下のピッチで配置)、型枠を設置、上面300mmを残して高さ4m、幅18m、厚さ250mm程度を上下線1回ずつの合計2回で打設し、一体化させた。橋台最上面と中空床版桁の間には支点部の回転をとるための緩衝ゴムをボルトで上部工に固定する形で配置し、隙間の300mmはPCMを充填した。理想としては橋台も橋脚と同様剛結化したいが、そのためには橋台背面の掘削が必要となり、長期の本線規制が必要となることから固定化に留めた。


耐震補強前のA1/同P1

通行帯ラインの移設/工事規制設置工

試験掘削 (左:A1、右:P1)

A1 既設水路の防護/既設ブロックの撤去/掘削(フーチングまで露出させる)

A1 法面防護/作業ヤードを整備/足場工の設置

A1 縁端拡幅工の撤去/WJでコンクリート表面を処理

A1 鉄筋探査/断面修復/あと施工アンカーの設置

A1 緩衝ゴムをボルトで上部工に固定する形で配置/増厚部の配筋

型枠を設置してコンクリートを打設/上端にはポリマーセメントモルタルを充填

耐震補強が完了し、埋め戻したA1

 橋脚部も概ね橋台の補強と同じ工程で進めているが、ライナープレートを台座周りに設置し、台座との間に隙間を作り、足場を設置する空間を確保している。また、巻立てコンクリートと埋設化する鋼製ロッキングカラムとの一体化を確実にするため、ピア上下の支承を保護しているカバーや張紙(落書き)防止シートを撤去し、さらにケレンを行って柱表面の錆を落とし、一部はジンクリッチペイントでタッチアップした上でRC巻立てにより補強した。橋脚・橋台部とも補強用主鉄筋の継手には施工上の制約から重ね継手を採用している。また、橋脚部の補強においてはフックでの継手が困難となる台座周りの帯鉄筋の継手にはフレア溶接を用いている。


P1 構造物掘削工/ライナープレート設置工

P1 耐震補強に伴う雨水配水管の切り回し/囲むように足場を設置していく

P1 コンクリート表面処理/鉄筋探査

P1 張紙防止シートの撤去/沓座カバーの撤去/橋脚素地調整工

P1 ひび割れ充填および断面修復/あと施工アンカーの施工状況

 橋脚部はフーチング上面を出すため、既存の歩道部を約800mm掘削した。その後にフーチング上面と桁下面をアンカー削孔し、鉄筋を定着し剛結化した。橋脚も上下線別で補強を行うが、型枠設置後のコンクリート打設は高さ約6m、幅15.3mを2回に分けて(1回目3m強、2回目2m強)施工し、上面の300mmのみ橋台と同様にPCMを充填している。


P1 配筋状況/台座周りの帯鉄筋の継手にはフレア溶接を用いた

P1 型枠を設置し、コンクリートを打設を繰り返す

P1 上端部はPCMを充填/耐震補強が完了し埋め戻し

耐震補強が完了したP1(井手迫瑞樹撮影)

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