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3540㍍の海洋架橋を10年間で施工 

伊良部大橋の建設を振り返る

公開日:2015.03.01

エポキシ樹脂塗装鉄筋、フライアッシュで長寿命化

下部工
下部工はRCの壁式橋脚、逆T式橋台を採用している。海上部にあるため、塩害対策は特に重要だ。そのため、100年の長期耐久性を考慮したかぶり厚の確保(9㌢以上)に加えて、エポキシ樹脂塗装鉄筋、フライアッシュコンクリートの採用を行っている。
具体的には、セメント量の65㌔(20%)置換と、細骨材置換で25㌔のフライアッシュ(㎥当たり90㌔のフライアッシュ)を混入したコンクリートを使用している。これは、耐久性向上の検討を進める中、伊良部大橋と同様な環境にある池間大橋の橋脚でコアを抜いて含有塩分量を調べると、建設後約10年でコンクリート表面から9~10㌢の地点、つまり鉄筋位置(当時のかぶりは7㌢)にまで、鋼材腐食発生限界値1立方㍍当たり1.2㌔以上の塩分浸透が認められている状況だった。


           エポキシ樹脂塗装鉄筋を採用

 また、池間大橋の宮古島側取付部に位置する世渡橋では建設当時に宮古島で一般的に使用されていた台湾産の骨材がASRを誘発。塩害との複合劣化を起こし、コンクリートのひび割れや鉄筋の腐食を招いていることから、伊良部大橋の下部工には、沖縄本島北部新川沖産の海砂を骨材として使用している。
 フライアッシュはうるま市にある電源開発㈱の石炭火力発電所で生産しているJISのⅡ種灰を用いている。フライアッシュは、配合量が1立方㍍あたり100㌔を超えると施工性が落ちるため、施工性と塩害抑制、温度ひび割れ抑制を期待し、配合試験や実機試験を行った結果、1立方㍍あたり90㌔とした。

 PC上部工にもフライアッシュ
 エポキシ樹脂被覆鋼より線を採用

 上部工(PC部)
 形式は全て連続PC箱桁形式を採用した。


                                PC桁の架設風景1

      PC桁の架設遠景                         PC桁の製作ヤード

 上部工についても基本的にエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用して塩害に対応しているほか、PCケーブルもエポキシ樹脂被覆鋼より線(住友電工スチールワイヤー製)を使い、かぶり厚も7㌢を確保している。また、コンクリートの骨材は沖縄本島北部の琉球石灰岩の比較的古い地層(本部層)の砕砂を採用している。沖縄本島中南部、宮古島で見られる石灰岩は乳白色で圧縮強度が低いが、本部層石灰岩の砕砂は深青色で強度が高いという特徴を有する。骨材としては安定している反面、砕砂であるため粒径の歪さなどからワーカビリティーには難があった。そのためフライアッシュを細骨材との置換で3%混ぜ、施工性を向上させた。
 下部工のようにフライアッシュを大量に使わない理由としては、上部工のセグメントは現地ヤードの製作架台で製作しており、打設日の翌々日には転置しなくてはならない状況の中で、フライアッシュを大量に使うと初期強度の発現が遅いという特徴があり、全体で約1000個のセグメント製作する必要があったことから1個当たりの施工日数が全体工程に大きな影響を与えてしまうため。
 また、下床版内PCケーブル定着部で、ひび割れが生じる可能性があることから、定着部を有する一部のブロックの下床版において鉄筋とかぶりの間に炭素繊維グリッドを入れることで、ひび割れの発生を抑制している。

 骨材は全てガット船で搬入

 また、伊良部大橋の上部工コンクリートに使用する骨材は全てガット船で搬入していた。「運搬過程で塩分が影響しないように配慮している。また、骨材の保管も屋根の付いた設備で行い、塩害対策および暑中対策(35度以下に抑制)および表面水対策を施している。上部工に関してはスランプ18、50Nの高強度コンクリートが必要なため、専用の計量瓶、専用のミキサを用いると共にプラント自体にも冷水器を付けることで品質を確保している」(大米建設)。
 特に専用のミキサとして『ジクロス』を採用することで、「品質および作業効率(約30%アップ)が格段に向上した」(同社)。同製品はらせん状に攪拌アームがついている螺旋二軸強制練りミキサ。従来の水平二軸強制練りミキサと異なり中央に直線軸(シャフト)がなく、「三次元的に攪拌するため、材料の送り出しも早くなり、骨材、セメント、その他の材料が縦横無尽に移動するため、ダマも発生せずロスも少ない。また、作業後のメンテナンスも容易」(同社)としている。


                              PC桁の最終連結①

                               PC桁の最終連結②

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