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-7℃の寒中施工でも所定の性能を発揮

北海道岩見沢市 床版補修に「J-ティフコム」を採用

公開日:2018.03.30

施工前のひび割れ注入、後の床版防水も不要
 工期短縮、IC、LCCとも縮減できるため採用

 北海道岩見沢市が所管する二股橋の床版補修に超緻密高強度繊維補強コンクリート「J-ティフコム」が使用された。既設床版上の舗装を切削機で撤去した後、WJで1cm程度上面のコンクリートをはつり、脆弱部を除去する。気温は-7℃と寒中での施工であるためバーナーを装備した路面ヒーターで床版上面を給熱養生し、その後に同コンクリートを20mmの厚さで上面に打設した。「通常の床版補修と比較して、ひび割れ注入や床版防水も行わずに済むため、工期も短縮でき、イニシャル、ライフサイクル共にコストを縮減できることから採用した」(同市)としている。その現場ルポをまとめた。


二股橋近景

昭和53年9月1日に供用されたようだ

 今回施工した二股橋は、同市北村中小屋の第一幹川(石狩川水系)を渡河する個所に架かる橋長59.9m、幅員7.7m(有効幅員6.5m)の鋼単純合成鈑桁橋。1978年供用で、今年でちょうど40年が経過、現在まで床版の補修や床版防水の設置などは行っておらず、床版下面にひび割れが多数散見され、上面も砂利化が進んでいた。その補修のため、床版全面約376.8㎡にJ-ティフコムを採用したもの。
 J-ティフコムは、従来のコンクリートに比べてひび割れを抑制でき、かつ圧縮強度は打設後1日で100N/㎟、管理設計強度28日では130N/㎟と通常のコンクリートの5倍程度の能力を有する。引張強度も13N/㎟以上、曲げ強度は35N/㎟以上を有するため、鉄筋も必要なく、層厚も20mm程度であるため、補修・補強による死荷重増を低減できる。非常に高強度で緻密な層を形成するため、遮水性や遮塩性に優れ、防水層を設置する必要もない。詳しくはリンク先を参照
 施工は、対面2車線を片側通行規制して8日間にわたって行った。施工手順は片側車線を規制したのち、最初の4日間で舗装の切削およびWJによる上面脆弱部のはつりを行った後、1日でJ-ティフコムを片側打設後に1日間防寒養生を両側で施工するもの。



WJにより床版上面をはつる

雪がちらつく中でも施工できる

 WJではつった翌日に「J-ティフコム」を床版表面に打設するが、現場は非常に寒く、かつ雪がちらつく中での施工である。そのため大型路面ヒーターであぶり、床版上面の温度を上げた上で、さらに直前まで小型ヒーターで床版上面温度を10℃程度に保った上で打設した。防寒養生は、養生内容積は小さくするため橋梁防護柵を囲うように橋梁路面中心までとし、夜間の気温低下を考慮してできるだけ内空温度を保つようにヒーターとハーネス4セットを橋梁の起終点両側に配置した。その結果、夜間の防寒養生内温度は10℃が確保できた。


雪がちらつく中での施工

路面ヒーターで床版の温度を予め上げておく

 打設に際しては、同材料の水分量が一般のコンクリートに比べて1/2以下と少ないことを鑑みて、母材に水が吸い取られないように予め床版上面を水で飽和した後に施工する。1日で圧縮強度は100N/㎟に達するため、舗装を打たなくても暫定的に車両を通すことが可能だ。


現場で混練し、現場にバックホウで運んで流し、

敷き均し、タンピングしていく

養生のためのビニールシートを後追いでかぶせ、さらにブルーシートなどで防寒養生する

 上面舗装はすべての打設が完了した上で全体を敷設する。舗装に際しては専用のアスファルト樹脂系プライマーとJ-ティフコム専用の舗装用接着剤を塗布し、珪砂を散布、その後舗設した。今回の現場でJ-ティフコムも一般のコンクリートと同じく寒中施工が可能であることを示した。
 設計はパブリックコンサルタント、元請は芙蓉建設谷村支社

(井手迫瑞樹、2018年4月1日掲載、5日一部修正)
※一部の単位表記を修正いたしました。具体的には記事の一部で(kN/㎟)となっていた誤りを(N/㎟)に訂正しました。お詫び申し上げます。

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