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施工方法を河川上から陸上に変更し架設期間3分の1に

首都高速 堀切小菅間拡幅工が大詰め迎える

公開日:2017.09.19

90m小菅側に移動
 勾配は10%に拡大

 小菅出口分岐部の移設・付替え
 小菅出口分岐部は全面的に付け替える工事を6月23日に完成供用している。現況のランプ区間275.6㍍を撤去した後、橋脚を構築し、橋長45.3㍍×2の鋼床版鈑桁を増設、橋長103.9㍍の2径間鋼床版箱桁+41.6㍍の箱式擁壁+16.6㍍のL型擁壁+22.9㍍の重力式擁壁構造を架設・構築する。鋼重は約500㌧。
 改良前の分岐位置と比べて出口は90m小菅JCT側に動くが、都道450号に外部タッチしている位置は従前と変更していないため、その分出口の縦断勾配が少しきつくなる(6.8%→10%)。



小菅出口 改良前(上)と改良後(下)の位置図

 縦断勾配が変更したことにより、橋脚の補強や嵩上げ、新たな横梁の設置が必要となった(図の赤い部分)。また擁壁部も約2.5m嵩上げしている。中央環状外回り桁が上層にあるため、上空制限があることや、並走する都道450号線と綾瀬川に挟まれた狭隘なスペースで施工しなくてはいけないことに加えて、出口の付け替え位置の真下は堤体の斜面上になる。ベントなどを設置して出口を付け替えるという案もあったが、先の厳しい条件ではベント設置は不安定であり、高い位置にある桁を撤去するにはクレーンのブームが入るスペースに乏しい。

新設桁を既設桁吊降ろしの支点に
 首都高では例のない手法を採用

 そのため実際は、新設桁を吊フレームにして既設桁を吊降ろして切断撤去し、その後、新設桁を所定の位置にジャッキダウンするという手法を採用した。


付け替え工事概要図

 まず、自走式多軸台車およびクレーンを使って高速道路上と都道から新設桁および新しい橋脚をブロック単位で搬入(高速道路上からはP7~P9桁を自走式多軸台車で搬入、都道からはP9~P10間の桁をクレーンで架設)し、既設桁上の所定の位置に桁を設置する。設置の際は既設桁の中央部に置くようにし、(偏荷重が起きないように)次工程の吊降ろしに備えた。また、P10~11間の桁は空頭に余裕があるためクレーンで撤去する。


トレーラーによる桁搬入/門型クレーンごと自走式多軸台車へ搭載

P10~P11はクレーンで桁撤去

 次いで既設桁上に門型クレーンを構築し、それを用いてP9橋脚周りについてのみ既設の桁を先行切断し、増設横梁や柱、調整ブロックを架設する。通常こうした新設横梁の架設はクレーンを用いて施工するが、空間も狭隘で、とりわけ外回りの柱が大きく支障になったため、上に吊フレームを設けて、仮置きされた部材の向きを、チェーンブロックを使って90°動かし所定の位置に落とし込んだ。


P9橋脚の改良

先行して床版撤去し、門型クレーンで落とし込んだ

 施工後P9橋脚上の桁も架設し、P7~P10間の桁を1本の連続化された桁として、本添接して組んだ。仮設でないのは「本設でないと既設桁を吊るのに必要な強度に達しないため」(JFEエンジニアリング)。吊高は最低限の高さに留め新設桁にできるだけ反力がかからないようにした。吊降ろしに使うジャッキはワイヤークランプジャッキ(両端部)とセンターホールジャッキ(内側)を用いて、主荷重はワイヤークランプジャッキに懸けて特異な曲げモーメントがかからないように配慮した。


新設桁搬入状況(既設桁上)



新設桁を吊支点に用いた既設桁の撤去と新設桁の架設

 既設桁端を下から支えるべく橋脚下部にはブラケットを設置しており、降下時にはブラケット上面にタッチすることになるが、あくまでずれ止めのタッチ荷重であり、5~10tほどの荷重をかけている。これは切断時の不安定さをなくすための安定荷重を負担しているもの。しかし既設桁重量の80%はつり下げ設備が負担している。
 新設橋脚および新設桁を支点にして、既設桁を吊下げる。吊下げた既設桁は受け架台を既設橋脚に付けて堤体の上に載せない形で吊降ろし、宙に浮いたままの状況で桁を切断し、部材を小割にして夜間に並走している都道を規制して撤去する。最後に新設桁を所定の位置に調整し、P10~P11間の桁をクレーンで架設した。
 こうした新設桁を利用した既設桁の撤去という方法は「首都高では例がなく、全国的に見ても道路橋ではほとんど無いのではないか」(首都高速)ということ。首都高では、仮設桁を今回の新設桁のように吊降ろしの支点として用いて損傷した桁を交換するという手法については、5号線タンクローリー横転事故による火災で損傷した際に採用している。しかし、今回は仮設桁を用いて既設桁を降ろしても、仮設桁を降ろすために再び大きな撤去設備を必要とするというジレンマに陥る。そのため、「今回は本桁の剛性を考えて吊降ろすことが合理的と考えた」(JFEエンジニアリング)。本桁は変形しないように仮設補剛材を設置したり、ジャッキをたくさん配置して荷重を分散させるよう配慮した。


実際の新設桁で既設桁を吊り下げた状況(吊り下げ前/吊り下げ後)

新設桁の架設

 小菅出口の撤去・再架設は昨年10月から工事がスタートし、既設桁の撤去を今年2月までに終えた。次いで桁の架設・舗装などを行い6月23日に無事供用している。


再供用された小菅出口

 上部工元請はJFEエンジニアリング。ジャッキは大瀧ジャッキ。
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