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OFFランプ部に道路トンネルでは初めて

阪神高速大和川線常盤工区で矩形シールドによる全断面掘進を採用

公開日:2017.05.26

    阪神高速道路大和川線の常磐工区開削トンネル工事は、堺市施行区間に位置し、阪神高速道路が同市より受託して施工しているが、常磐出入口(OFFランプ)において、道路トンネルで初めて矩形シールドによる全断面掘進を行うなど、人家が密集する沿線の現場に配慮した様々な工夫を行っている。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)

人家連坦地に隣接する個所を開削とシールドで施工
 本体工事を堺市から受託

 施工箇所は堺市北区常磐町1~2丁で、出入口の北面は人家が立ち並び(さらに北面には大和川が流れる)、また、南面には府営住宅や浅香山住宅などが近接している。さらに、本工区の一部を大和川の支流である西除川が縦断方向に流れるという厳しい条件となっている。とりわけOFFランプが位置する北側には2車線の生活道路があり、1車線分の車線規制しかできない。そのため沿道住民の生活に影響を与えないよう、OFFランプの中間部から矩形シールドによる掘進を行った。また、本線とOFFランプの分岐部についても同様の理由により地上から土留め壁を施工することができないため、開削トンネルで施工した本線部の一次土留めから横に導坑を掘り、その中で二次土留めを施工した上で切り開いて分岐拡幅部を構築するという工程で施工した。なお堺市から阪神高速道路が受託しているのは躯体等の本体工事であり、有料道路事業としては舗装から上となっている。


施工個所を現場事務所が入るビル上から撮影(井手迫瑞樹撮影)


現場地図(阪神高速道路提供、以下注釈なきは同)

仮柱は完成時に撤去

 本線部とONランプ部およびOFFランプ部の残り半分は開削工法で施工する。掘削深さは最大35mに達する。施工はまず、西除川を埋めるところから始まる。雨天時を考慮すると機能を完全に止めることはできないため、川の維持機能を有する管を3本おき、中央が河川管、両側が雨水の管としての機能を持たせた。それを敷設した後に埋めて、その後は通常の開削トンネルの施工手順と同じように、施工を行った。まず地上から土留め壁を施工し、中間杭を随時打設しながら、覆工桁を架けて覆工板を敷き、その下で開削をして、四角い躯体(高さ約11m×最大幅約33m)を作り上げていった。現在本線およびONランプの躯体はほぼ完成している。ただし、OFFランプ分岐部には仮柱(といっても長さ2m×幅1.5m×高さ6.6mの巨大なものだ)で支えている。内部鉄筋もSD345を32本配置している立派なものだが、拡幅部を構築した後、最終的にはワイヤーソーなどを用いて小割にし、撤去する。


STEP図(拡大して見て下さい)


高さ約11m×最大幅約33mの開削トンネル部(井手迫瑞樹撮影)

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グラブリフターは防音ハウスの中に入れて施工
 土砂は35万㎥に達する

 開削部で深い箇所の掘削は、電動グラブリフターを、浅い箇所の掘削はバックホーやテレスコを使用して施工した。油圧に比べて静粛で振動なども生じにくく、なおかつ電動クラブリフターは、移動設置が可能な防音ハウスの中に入れて施工することで、より騒音を小さくしている。電動グラブリフターは全体で3台投入して施工した。開削によって出た土砂は35万㎥に達した。


防音ハウスの中で作業している。(井手迫瑞樹撮影)

 躯体施工後の埋め戻しも工夫している。(深い掘削深度のため)部材厚は普通に設計してしまうと分厚く(躯体頂版部で最大4.2mに達する)なってしまう。そのため埋め戻しに軽い土を使って、上載荷重を減らすことによって部材厚を薄くしている。具体的にはHGS(ハイグレードソイル)を埋め戻し材に採用し、部材厚を最大2.9mまでに減らすことができ、掘削土量の減少とも相まって、当初設計時よりコストを縮減することができた。

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