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有害物含む塗膜はバイオハクリX-WBを用いて除去

宮城県大河原大橋 歩道拡幅と耐震補強コスト縮減を一石二鳥

公開日:2017.02.16

基準値以上のPCB、鉛、カドミウムを検出
 塗膜剥離剤はバイオハクリX-WBを採用

 塗り替えについては、既存塗膜がPCBを1㌔当たり0.03㍉㌘、鉛を同56㍉㌘含む等基準値以上のPCB、鉛、カドミウムが検出されたことから、通常のブラスト工による施工を諦め、塗膜剥離剤による塗膜除去を採用した。塗膜剥離剤採用に当たっては、バイオハクリX-WBとその他1工法について現橋を使って比較試験を行い、その結果、添接部での塗膜剥離状況についてバイオハクリX-WBに分があると判断し、同材料を採用した。


バイオハクリX-WBの試験結果(左はウエブ面、右は添接部)

道路の縦断勾配考慮し、鉄筋位置を5㍉ピッチで調整
 ひび割れ対策に膨張材+ハイパーネット60を採用

施工
 ここでは、今年度施工しているP1~P3間桁の補修補強について報じる。上部工の補修補強は道路幅員を確保するため、①下流側地覆・高欄の撤去および設置、②上流側地覆・高欄の撤去・設置、③アルミ合金製床版の設置、④橋面舗装――の順に施工する方針。
 本工事では施工個所がP1~P3間と河川の中央部に位置するため、河川敷から重機を使用することができず、橋梁上から施工を行う必要がある。そのため、下流側施工時には供用する車道幅員を一時的に3,250㍉まで狭めたうえで高欄の撤去・地覆コンクリートのはつり(鉄筋のはつり出し、ブレーカー施工)を行う。地覆・高欄の再設置に当たっては、本工事内のP2、P3間ジョイント部が橋梁内で頂部に位置しているため、縦断勾配を計算して再設置する必要がある。そのため地覆打設時の鉄筋位置を5㍉ピッチで調整するとともに、被りコンクリートの打設型枠の位置も微調整して、万が一にも地覆の形状がずれないように注意して施工している。また、はつりはブレーカーによるが、同地は凍結防止剤を多く散布しており、マイクロクラックがあると、そこからの塩分を含有した水の浸透により損傷が生じることも考慮される。そのため、打設に当たっては、高炉スラグコンクリートで設計されていた材料を普通コンクリート+膨張剤に変更すると共に、打設時の温度収縮クラックをさらに抑えるべく、「ハイパーネット60」(太平洋マテリアル製)をひび割れが出やすい箇所に配置して施工している。


地覆をブレーカーによってはつる/はつりが完了した状況

ハイパーネット60を配置

アルミ合金製床版 異種金属接触による腐食対策を徹底
 施工時は重機の小型化も実現

 次に上流側の施工である。上流側施工の際は、床版など機材を仮置き、設置する必要があるため、片側交互通行規制を行った上で施工している。まず既設の歩道部を床版から全て湿式ワイヤーソー、ロードカッターで床版を切断する、桁から鋼製の跳ねだしブラケットを取り付け、アルミ製合金床版を設置する。設置の際は、高さ調整用のプレートを挿入するが、床版と鋼材との異種金属接触による腐食を防ぐために絶縁体となるプラスチックを挿入している。合わせて添接ボルト回りもFRPのフランジブッシュを取り付け、同様に腐食を防ぐ工夫を施している。アルミ合金製床版は軽量なため比較的小型の4.9㌧クローラークレーンで架設可能であり、交通負荷を最小限に抑えている。また、舗装も薄層舗装を採用しており上部工死荷重のさらなる軽量化を実現している。


既設歩道部/アルミ合金製床版に交換する

ワイヤーソーやロードカッターによる既設床版の切断

絶縁体/施工時も異種金属が接触しないように細心の注意を払う

切断水養生/完成した歩道拡幅部

 切断やはつりなど騒音を伴う工程については、仮設ガードレールを設置し、工事範囲を区画した上で防音シートを設置して施工している。また、ワイヤーソーやロードカッターなど濁水が生じる工程については、切断箇所下部をシートで養生し、ノロなどが河川に流出しないように努めている。

塗膜剥離剤+2種ケレンで対応
 鋼製シース管も桁同様に塗り替え

 塗装工
 塗装工は、上部工の補修と並行して施工を進めている。旧塗膜の膜厚は左図通りで、鋼板下地には黒皮が残置しており、その上に鉛丹さび止めペイント(下塗)+フタル酸樹脂塗料(上塗)の組み合わせを2層塗り重ねている。鉛はもちろんカドミウムやPCBも含まれていたことから、塗膜剥離剤(バイオハクリX-WB)を用いて塗膜除去を行っている。



塗膜剥離工の施工状況

塗膜剥離が完了した桁内側および桁最外面

 旧塗膜の膜厚は一般部で300μm、添接部で400μmに達する。設計時の塗膜剥離剤施工量は1回あたり0.5kg/平方㍍を24時間養生する形で2回塗布する計画であったが、冬季の施工であることから,0.5kg/平方㍍を48時間養生する形で3回塗に変更している。塗膜を粗方剥がして、有害物質を含む塗膜層がほぼなくなった状況で、ディスクサンダーなどによる2種ケレンを行い、終了後Rc-Ⅱ塗装を施す予定だ。鈑桁両側の下フランジ上面に設置されているケーブルも、ケーブルを保護する鋼製シース管の塗膜構成は桁本体と同じであり、主要部材であることから同ケーブルの鋼製シース外面部にも、同様の剥離・再塗装工程を施している。


鋼製シース外面部にも、同様の剥離・再塗装工程を施している

 設計は千代田コンサルタント。本工事(P1~P3)の元請は東北化工建設。一次下請はコウリョウ(塗装)、東北黒沢建設工業(撤去工など)など。

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