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けい酸塩系表面含浸材の特徴を暴露試験の結果から探る

国立研究開発法人土木研究所 
寒地土木研究所 
耐寒材料チーム 研究員 

遠藤 裕丈

公開日:2016.07.01

はじめに

 これまで、コンクリート構造物の劣化抑制対策として近年広く使用されている表面含浸材に関するコラムとして、表面含浸材の特徴を平易に解説した「シラン系およびけい酸塩系表面含浸材の適切な使い方」、北海道内で行っている約10年の追跡調査の結果をもとに、シラン系表面含浸材による凍害・塩害抑制効果を述べた「実環境でのシラン系表面含浸材の効果の持続性について考える」の2編を執筆させていただきました。今も多くのアクセスがあると伺っております。大変光栄に存じます。
 前回、シラン系表面含浸材の効果に関するコラムを執筆した後、「次は、けい酸塩系表面含浸材について書いていただけますか」とリクエストをいただきました。そこで、本稿では、けい酸塩系表面含浸材に焦点をあてたいと思います。

利用の現状

 けい酸塩系表面含浸材の主成分は、けい酸アルカリ金属塩です。コンクリート表面に塗布、含浸させると、主成分はコンクリート組織の水酸化カルシウムと反応し、C-S-Hゲルを生成します。空隙がゲルで充填されることにより、コンクリート組織の改質(固化)が図られます。平成24年7月には、けい酸塩系表面含浸材の特徴、適切な設計・施工・検査方法をまとめた「けい酸塩系表面含浸工法の設計施工指針(案)」[1]が土木学会より発刊されています。
 一方、利用の現状はどうでしょうか。
 図-1は、平成25、26、27年度の北海道開発局発注の橋梁工事(新設ならびに補修)において、劣化対策工として表面含浸材が採用された工事の中から、任意で60件の工事を抽出し、けい酸塩系とシラン系の使用割合を調べたものです。採用のねらいは凍害、塩害の抑制です[2]。けい酸塩系表面含浸材の施工実績は、いずれの年度もシラン系表面含浸材に比べると少ない傾向にあります。


図-1 表面含浸材が採用された平成25、26、27年度の北海道開発局発注の橋梁工事
におけるけい酸塩系とシラン系の使用割合

 図-2は、抽出した60件の工事の数量(施工面積)を個々に示したものです。工事1件あたりの施工面積は、シラン系表面含浸材が平均260平方㍍であるのに対し、けい酸塩系表面含浸材は平均32平方㍍となっています。シラン系表面含浸材は1件の工事で約1,300平方㍍発注されたケースもあります。
 施工実績は地域や用途によって異なり、また、すべての工事を抽出したわけではありませんので、この図はあくまでも一例です。全国には凍害、塩害の抑制を期待し、けい酸塩系表面含浸材を採用した現場もあります[1]が、一部に留まっています。


図-2 図-1で抽出した60件の個々の工事の数量(施工面積)

暴露実験・試験施工の紹介

 ここで、けい酸塩系表面含浸材を寒冷地で使用した際のコンクリートの経年変化を把握するため、著者が北海道内で行っている暴露実験と試験施工の一例を紹介します[3][4]。図-3に現場を示します。現場は増毛(ましけ)と喜茂別(きもべつ)です。1~2月の厳冬期には増毛、喜茂別とも-15℃まで気温が下がる日もあります[5]。


図-3 増毛(暴露実験)と喜茂別(試験施工)の位置

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