道路構造物ジャーナルNET

土木研究所集中連載①

道路橋桁端部の腐食対策に向けて -既設コンクリート道路橋の桁端部用排水装置の開発-

国立研究開発法人土木研究所
構造物メンテナンス研究センター(CAESAR) 
主任研究員

田中 良樹

公開日:2016.06.16

 国立研究開発法人土木研究所は、各種共同研究で実際の道路構造物の新設あるいは維持管理における新技術や新材料の開発などを中期計画で進めている。本連載はCAESAR(構造物メンテナンス研究センター)を中心に所管の内容および今後の研究方針について詳細に記していただく。全6回を予定している。(井手迫瑞樹)

1.はじめに

 凍結防止剤が散布される路線における既設道路橋の桁端部は、路面からの塩水によって、厳しい腐食環境に置かれている。近年、コンクリート橋の桁端部における塩害も報告されている。CAESARではその対策の一つとして、コンクリート橋の桁端部用排水装置の開発を行うため、2011年度に「道路橋桁端部の腐食環境改善技術に関する共同研究」を、公募を経て、東拓工業(株)及び(株)ビービーエムの2社と個別に実施した。現在引き続き、同排水装置の改善、普及に向けて、フォローアップ調査を継続中である。本文では、既設コンクリート橋を対象とした桁端部用排水装置の概要と開発の現状について報告する。

2.桁端部の腐食環境改善の必要性と課題

 道路橋の桁端部は、狭隘なため湿気がこもりやすい上に、場合により塩分を含む水が伸縮装置から漏水することにより、鋼部材、コンクリート部材ともに腐食(塩害)が生じやすい部位である(写真-1、図-1)1)。特に、コンクリート構造物の著しい塩害は、補修・補強が容易でなく、維持管理における大きい負担となる2)。作業空間が狭い桁端部で塩害が生じると、その対応はさらに難しい。また、背の高い橋台、橋脚の場合には高さ方向に劣化範囲が拡がり、縦断勾配がある場合はその勾配に応じて上部構造下面や床版下面に水が流れ込み、広い範囲に劣化が拡がる。凍結防止剤による桁端部の塩害は、止水、排水の対策が十分でなければ、散布量と時間に大きく依存すると考えられ、ある時期を過ぎると路線単位で一斉に桁端部からの塩水に起因する塩害が発生することが懸念される。既にコンクリート橋の桁端部の塩害事例が報告されており3)、桁端部の塩害多発を防ぐための猶予がないと考えておく必要がある4)。「できるだけ多くの橋で、かつできるだけ早期に、コンクリート橋桁端部の腐食環境を改善する手法」の開発が喫緊の課題である。


図-1 PC橋桁端部の腐食環境(概念図)1)

写真-1 橋台前面の漏水1)

 最近の新設橋では非排水型の伸縮装置を用いることで、桁端部の維持管理への配慮がなされるが、既設橋では、管理者や路線によっては伸縮装置の非排水化が容易に進展しない場合がある。また、非排水型の伸縮装置に取り換えた後も、比較的早期に漏水が見られる事例が報告されている。
 支間20~40㍍程度の一般的なコンクリート橋の遊間は、狭く、直接目視が容易でない空間であり、遊間内部のディテール(完成形での詳細構造の他、コンクリート面の凹凸や劣化の程度を含む)はほとんど把握されていない。その中の必ずしも平坦でない壁面になんらかの材料を設置して、止水や排水を確実に行うことは容易でない。

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