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番外編 光学ストランドによるPC橋の載荷試験 ―奈良県川上村管理の林道鳴川線小所橋-

現場力=技術力(技術者とは何だ?)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫

公開日:2020.10.09

(4)載荷試験結果

 図-4に荷重載荷試験結果を示す。赤線で示すひずみが主桁下フランジの引張ひずみである。
また、青線で示すひずみがウエブ上部(ハンチ部下)の圧縮ひずみである。以下には、G3桁直上載荷、橋梁中央(幅員)載荷(静的・動的)を示す。要約すると、
 1)静的載荷試験
・下フランジ側の引張ひずみは、凡そ30μm。
・上フランジ側のウエブの圧縮ひずみは、凡そ5μm。
・中央載荷(幅員)の場合、引張ひずみは、凡そ23μm。圧縮ひずみは、凡そ0μm。

2)動的載荷試験
・下フランジ側の引張ひずみのピークは、凡そ27μm。
・上フランジ側のウエブの圧縮ひずみは、凡そ3μm。

(5)復元設計結果と載荷試験結果

 表-1及び図-5に荷重載荷試験結果と復元設計断面に荷重車(8t)を載荷した際の設計計算結果を示す。要約すると、
 ①発生応力度は、圧縮側・引張側ともに復元設計と測定結果で凡そ50%、測定値が小さい。
 ②主桁の断面剛性(EI)の差や導入(損失)プレストレス量の差等の影響が有り。
 ③①、②から、写真-1に示すPC鋼線の腐食やグラウト充填不良等によるプレストレス減はほとんどないものと想定される。

(6)小所橋の補修補強計画

 「川上村管内橋梁補修設計業務委託」の損傷調査において、PC鋼材の露出・腐食・ゆるみ・グラウト充填不良、遊離石灰、等の各種損傷が確認された。これを受け、㈱日本インシークが活用を検討していた「OSMOSシステム」による橋梁載荷試験の実施を管理者である川上村の担当者の方に提案し、積極的に採用を決断された。
  今回の載荷試験結果により、現状においても十分な耐荷力が確認され、この結果を受けて今後の補修補強計画が決定された。以下に要約する。

  補修について
 ①PCグラウト充填不良→グラウト再充填
 ②PC鋼線腐食→錆落とし、防錆材塗布
 ③遊離石灰→床版防水施工
 ④断面欠損等→断面修復工

 補強に関して
 経過年数が長いこと、PC鋼線の腐食が確認されていること、等から安全側に外ケーブルによるプレストレス導入も考えたが、オーバープレストレスの問題や大型トラックの規制を行うことで対処可能となるため補強なしとした。

(7)最後に

 奈良県川上村には林道に架けられた橋長20数m程度の単径間PC橋から大滝ダムに機能
回復用に.架けられた橋長225mのPC斜張橋、白屋橋まで数多の橋梁がある。これらの橋梁を効率的・効果的に維持管理を行うためには、モニタリングシステムの活用は非常に有効である。今回使用した「LIRIS」は、バッテリー駆動で即時対応性があるため、自然災害後の監視モニタリングにも非常に効果を発揮するものである。
 とは言いつつ、形だけのモニタリング(システム)では意味がない。何をしているのか、得られる数値の持つ意味を理解し、解釈し、必要な対策を適切に実施することが重要である。これらの役割は我々コンサルタントが使命を持ってやるべきである。つまり、警報を鳴らす閾値をしっかり持って、限界線を越えれば次の一手、適切なメンテナンスを提案する、それが重要な仕事ではないのか。長大橋を管理する会社で大学教授に言われるがままモニタリングセンサーを設置しているところもある。お金があるからこそ出来ることで、市町村の限られた予算の中では限界があり、殆ど出来ない。
 OSMOSシステムはプラント分野だけではなく、土木・建築構造物等の分野においても非常に有効であると考えている。㈱日本インシークとしても道路インフラ等の救済に積極的に使っていきたいと考えている。                          

文責:㈱日本インシーク 技術本部技師長  角 和夫 氏
            西日本橋梁部長  前田 和夫 氏
管理者側;川上村林業建設課 副課長    新宅 晃 氏

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