HOME連載一覧現場力=技術力(技術者とは何だ?)

連載詳細

番外編 光学ストランドによるPC橋の載荷試験 ―奈良県川上村管理の林道鳴川線小所橋-

現場力=技術力(技術者とは何だ?)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長
角 和夫 氏

(1)はじめに

 奈良県川上村が㈱日本インシーク(大阪市)に発注した林道鳴川線小所橋(PCポストテンション単純I桁橋)橋梁載荷試験業務がこのほど完了した(写真-1参照)。載荷試験を行ったのは、2019年度に実施した「川上村管内橋梁補修設計業務委託」の損傷調査において、PC鋼材の露出・腐食・グラウト充填不良、遊離石灰、等の損傷(写真-2参照)が確認されたことによるもので、現時点では大型車の通行規制が実施されている。

 載荷試験の目的は、PC鋼材の腐食損傷やグラウト充填不良を生じている既設PC桁の耐荷力を確認し、今後の供用を行う上での補修・補強や架け替えの必要性を判断するためのものである。 

 載荷試験は、道路構造物ジャーナルNET令和2年7月26日号で紹介された光学ストランドによる構造物のモニタリングシステム「OSMOS※ LIRIS」を使用して行った。

※)OSMOS; Optical Strand Monitoring System


(2)何故、OSMOSシステムを使ったか!

 既設橋の耐荷力評価の手法としては、荷重車載荷による変位測定法が一般的に採用される。外面的に大きな変状や損傷を受けている既設PC橋ではある程度の変位が計測できる。しかし、建設時からの年数は経過しているものの、主だった大きな変状や損傷が見られない場合、変位量の絶対値より測定誤差の方が大きくなる。また、本橋の様に設計荷重が旧T-14(二等橋)レベルの橋の場合、載荷荷重が現実的に制限される。このため、本橋梁では変位計測手法ではなくひずみ計測手法とした。

 さらに、OSMOS LIRIS(Live Independent Remote Inquiry System)は、バッテリー駆動で即時対応性があるため山間部の橋梁のモニタリングにも最適である。

 OSMOSシステムの土木分野への適用については、フランスのミヨー橋等を初め、ヨーロッパの至る所でモニタリングシステムとして採用されている。日本への技術導入は、日揮㈱が主体となり、OSMOS技術協会メンバーで展開中である。


(3)耐荷力評価のシナリオ

  小所橋の補修・補強や架け替え判断のためのシナリオを図-1に示す。


 ①損傷調査の実施と力学的課題の予測

 PC橋で問題となるPCグラウト充填不良、PC鋼材の腐食・損傷、ブロック継ぎ目部からの浸水と鉄筋やシース管の腐食、コンクリートの剥落、等々。これらの損傷が重なり、PC鋼材の破断、P導入軸力の低下、落橋、へと至る可能性が予測される。

 ②既設橋の復元設計

 建設年代が古い橋梁については設計図書が当然の事ながら残されていない。復元設計のために必要となる設計情報(支間長、幅員、主桁・横桁・床版断面、PC鋼材の配置状況(レーダー探査)等)を取得し、死荷重完成系の断面を決定した。

  橋梁諸元を以下に示す。

    ・構造形式:ポストテンション方式単純T桁橋(3主桁)

    ・橋長、桁長、支間長:橋長24.5m、桁長24.4m、支間長23.8m

    ・幅員構成:0.3m(左地覆)+3.6m(車線)+0.3m(右地覆)=4.2m

   また、橋梁一般図及び断面構成図を図-2に示す。


 ③載荷試験

 1)測定機器(写真-3参照)

  測定機器は、光ケーブル、センサー、モデム、パソコンと非常にコンパクトである。


 2)センサー設置

 センサー設置は3主桁の内、施工性を考慮して外桁とした。主桁ウエブでは、ハンチの下側(支間中央部には、横桁が設置されていることから700㎜だけシフトした位置にセット)と下フランジの中央に設置した(図-2参照)。

 センサー設置状況を写真-4に示す。


 3)荷重車(図-3参照)

 今回は荷重車として、総重量8tの橋梁点検車(BT200)を使用した。荷重車の走行位置は、最も地覆よりの場合と中央部と2種類実施した。