道路構造物ジャーナルNET

⑩神戸の顔-東神戸大橋を巨大地震から守る-

現場力=技術力(技術者とは何だ?)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫

公開日:2020.07.01

(11)橋軸方向変位制御装置の施工(写真-6,7及び図-7参照)
 橋軸方向変位制御装置は、塔水平梁上に設置した積層ゴムダンパーと主構(下弦材)の格点部に設置した鋼製ブラケットを拘束ケーブルで接続した構造である。


(12)東神戸大橋を凌ぐ長大橋への夢
 2007年~8年にかけて大阪湾岸西伸部技術検討委員会の幹事会委員をしていた頃のこと。本社から神戸管理部に移って、何かせねばと考えた末、本四に復帰する前に阪神高速の次世代を担う若手~中堅社員への技術継承のための勉強会(名称を「長大橋技術勉強会」と称す)を定期的に実施することにした。
 ターゲットは言うまでもなく「5号湾岸線延伸部長大橋」である。この勉強会をバックアップしてくれたのは、阪神高速で尊敬するお二人の技術者、「北沢正彦氏」と「石崎浩氏」である。お二人ともに当時阪神高速道路管理技術センターの理事長、理事をされていた。
 石崎氏は、兵庫県広畑大橋(斜張橋)の委員会でお世話になり、阪神高速本社では直属の上司(部長)としてお仕えした。月一回の勉強会にピーク時で80人ほどが神戸管理部に集まってくれた。長大橋(吊橋や斜張橋の上・下部工)の設計~施工まで8回程度開催した。その後、阪神高速の長大橋設計を一手に手掛けた綜合技術コンサルタントの野口二郎氏に斜張橋の講義を、北沢氏には東神戸大橋の設計(景観含む)等について熱く語ってもらった。
 北沢氏の講義には当時の部下、現在では子会社等の役員、社長等をされている方達が受講生となって足を運んでくれたのには驚いた。この勉強会で私から「今更、斜張橋を造って何になるのか? 世界一難しい多径間連続吊橋にチャレンジするのが阪神高速の技術者の使命ではないのか」と言ったことが思い出される。北沢さんも管理技術センター理事長時代、多径間連続吊橋の技術的課題の解決に向けて多方面から研究・努力されていた。
 北沢さんの後任の理事長になられた石崎さんも北沢さんの遺志を引き継がれて、吊橋の検討(耐風性や活荷重載荷方法)をされていた。「技術力を持った人が居た当時の管理技術センター」だから出来ることではあるのだが。多径間連続吊橋は、来島海峡大橋や海峡横断プロジェクトにおいても検討したが設計・施工上のハードルは高かった。両側に等支間長を有する中央主塔を設計する場合、現行の設計活荷重を載荷すると支間中央に過大な桁の鉛直たわみが発生する。たわみを小さくするには中央塔の剛性を上げる必要がある。剛性を上げれば、ケーブル張力が釣り合わないので、サドル内でケーブルがスリップする。つまりは不合理(長大橋では実態に合わない)な活荷重を実態活荷重に変えるか、活荷重の載荷状態をレアケースとして主塔照査時の許容応力度を割り増しするか、等。結局は誰も結論を出さない、責任を持ちたくない、から年月が過ぎた。これに風穴をあけるべくお二方の技術者はコツコツと検討を積み重ねたわけである。
 北沢さんが亡くなり、石崎さんも阪神高速を去ってしまったのが今となっては非常に痛い。こういう人こそ技術者だなと私は思う。実現はしなかったが、北沢さん、石崎さんが頭に描いていた多径間連続吊橋案(2011年当時)を図-8に示す。現在は、オーソドックスな斜張橋案で事業化され着工されているが技術者としてはもったいないと思うばかりである。

(13)最後に
 東神戸大橋の耐震補強における最大の課題は、建設時の設計地震動を遥かに上回る巨大地震を想定すること、支承等(ペンデル沓やウインド沓さらにはベーンダンパー)の許容変位量の2~3倍の変位を制御することであった。このため、既存の免制震デバイスでは、抵抗力やストロークが不足するため新たなデバイスの開発が必要となった。抵抗力やストロークでは、テーラーダンパーが長大橋に使われてきており不安は無かったが、設計の手戻り、工期の問題及び景観上の問題もあり途中で私自身断念した。今回開発した「橋軸方向変位制御装置」は、高減衰ゴム(縦置きサンドイッチ構造)と拘束ケーブルを組み合わせたもので、実験を経るにしたがって信頼性も向上していった。
 本四高速に復帰する前年度、平成21年度土木学会関西支部技術賞候補として、プレゼンし受賞した。タイトルは「オールフリー形式長大斜張橋の大変位・大反力に適応するダンパーの開発」であり、紆余曲折有ったが何とか受賞となった。
 最後に、平成27年4月に阪神高速技術㈱に転職し、技術部次長となった当時、「LRB支承」の損傷(鉛がゴムを突き破る)が顕在化してきた。振り返るに、20年以上も前から免震ゴムに危機感を持っていたが依然として安心に足る免震ゴム支承が出来ていないのは何故なのか。天然ゴムの弱点であるオゾン劣化対策に、ただ単に表面を被覆ゴムで覆うとか、コーティング材を塗るとか、それだけしかないのか。現状を知らないのは私だけなのか。ご存知の方は教えて下さい。(2020年7月1日掲載、次回は8月1日に掲載予定です)

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