道路構造物ジャーナルNET

⑧長大橋技術大国へひた走る-中国雑感-

現場力=技術力(技術者とは何だ?)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫

公開日:2020.05.01

3.意外な出会い~クタイ・カルタヌガラ橋の落橋~

 2011年11月26日(土)夕方、開通から10年経ったカリマンタン島マカハム川に架かる吊橋が落橋した。当時の新聞情報では死者10人、行方不明者33人、負傷者40人。3径間連続補剛トラス吊橋(100m+270m+100m)+Va(244m)、ゴールデンゲート橋を模して2002年に中国支援で建設されたものである(写真-2参照)。設計は、日本のコンサルタント(現在は、OG社に吸収)である。落橋原因は、ケーブルバンド(バンドボルト)が切れて、連鎖的にハンガーが破断して落橋に至ったものである。

 この橋との出会いは意外なもので、以前、技術顧問をしていた海外のコンサルタントからスンダ海峡プロジェクト(及びタンジュンプリオク港アクセス道路・ベトナムベンルックロンタインの斜張橋等)の技術支援の依頼を受けてジャカルタのビナマルガ(公共事業省道路総局)を訪問したことに始まる。スンダ海峡の現地踏査、プレゼンも完了し、週明けの月曜日、早朝の関空便で帰国したのだが、既に前週の土曜日には落橋事故が発生していた。インドネシアの特殊性なのか、島の情報が公共事業省等に届くのは早くて2日後くらいのようである。帰国してから私の方でも落橋の原因究明をスタートした。その結果、判明したことは、①コンサルタントの技術者が吊橋の設計知識を有していなかった、②JICAジャカルタ事務所が設計担当者へのヒアリングで、「設計図面をJICA専門家にチェックしてもらいOKをもらった」との怪情報。①について要約する、ケーブルバンドの設計を間違えていなければ落橋まで至らなかった(図-1参照)。

1)徳島県小鳴門橋(4径間連続吊橋)のケーブルバンド構造を物真似 2)強度計算のみに頼り、材料性能(靭性等)は無視 3)ケーブルバンドの材質規定(欧米・日本)は、鋳鋼(SCD450)であるが、本橋では脆い(FCD600)を採用していた。  この落橋については、大学での講義や各種学会や委員会等でしゃべってきた。一昔前は物真似が流行った。物真似が悪いわけではない。最低限の決まり事は技術者として死守すべきである。その最低限の決まり事さえ出来ていない技術者が多い。一方で、奇をてらったような設計を行うコンサルタントがある。これも困りもので長大橋のチョンボのオンパレードである。天草の橋でも当時の土木部長の依頼を受けて設計・施工計画の照査を行ったが及第点には程遠かった。裏話であるが、時間が限られているので施工業者に修正をお願いした。  余談ではあるが、インドネシアでは人ひとりの補償額が当時のレートで10万円(当時)程度。落橋は日本の新聞記事には載らないがインドネシアでは日常茶飯事との事。ODAのステップ案件でお金が保証されている仕事だけしかやらないのでは日本の価値が無いのではないか。頑張って中国・韓国勢力と競って欲しいものだ。

4.河北省交通運輸庁 庁長との出会い   ~コンクリート橋から鋼橋へのチェンジ~

  2016年9月、大阪市内において河北省交通運輸庁の方々に鋼橋の設計・施工・維持管理についての研修を行った。最近では日本と同様に鋼道路橋の疲労の問題が発生しているとのこと。この一か月後に中国の交通運輸部公路局(北京市)、河北省交通運輸庁(石家荘市)を訪ねる機会があった。中国の高速道路網整備のスピードは日本と桁違いである。日本の高速道路網は50年かけてやっと12,000km。中国は第十三次五か年計画(2016年~2020年)で高速国道を18,000km整備する計画である。また、新設の特大径間(長大橋)の橋梁は、鋼構造を主とする、と表明している。これを受けて、河北省はコンクリート橋から鋼橋へと方針を転換した。河北省ではこれまで鉄鉱石の産出、溶鉱炉での製鋼、生産した鋼材を省外・国外に輸出していた。これを止めて、生産した鋼材を省内で鋼橋に使用するというものである。  視察した河北省刑台市の波型ウエブ鋼板製作工場(写真-3,4参照)は、年間生産量20万tの能力を有するものであった。これは、近年の日本の鋼橋発注量と同程度である。

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