道路構造物ジャーナルNET

⑦【番外編】髙木氏のメッセージを受けて~今僕にできること~

若手・中堅インハウスエンジニアの本音 ~マネジメントしつつ専門的知見を得ていくために~

愛知県東三河建設事務所
道路整備課(事業第三グループ)

宮川 洋一

公開日:2019.08.01

はじめに

 今回の投稿は少し趣向を変えて、本誌連載をされております髙木さまへ、読者でもある私から50回記念投稿への感想と、私の取り組みの近況報告という形で、本連載投稿としてみることとしました。
 題して、「『若手・中堅インハウスエンジニアの本音 ~マネジメントしつつ専門的知見を得ていくために~』第7回【番外編】髙木氏のメッセージを受けて~今僕にできること~」です。
 公私混同も甚だしいとのお叱りも受けるかもしれませんが、このような形とさせていただきますことをお許しください。

髙木氏へ

 先日の上京時はお会いしてお話ができ、とても楽しく有意義な時間を過ごせました。また私が取り組んでおります愛知県岡崎市の「殿橋」について骨を折ってくださり、感謝しています。
 私は道路構造物ジャーナルNETの連載以外にも、全国建設研修センターでの講義(10年以上も前になります)や、「橋梁と基礎」などの寄稿文など、以前より受講、拝読しておりました。髙木さんの講義や文章からはいつも熱い思いが溢れており、技術者としての心構えや取り組みを学ばせて頂いております。
 連載50回おめでとうございます。まさにタイトルどおり「わかっていますか?何が問題なのか」の内容を貫かれた投稿の数々であったと思います。しかもそれらを月一のペースで執筆されたとのこと、大変頭の下がる思いです。
 私はいつかアーチ橋の設計、施工を担当したいと思っていましたが、なかなか経験する機会がありませんでした。今回の連載では、その要点や特徴を解りやすく示していただき感謝します。
 文中にありました、「過去に学び最新技術で活かす」ことや「長寿命化設計」の考えはとても共感しました。私もまさに同じことを心掛けて現在まで橋梁の補修・補強設計に取り組んで来ていたからです。例にあげられたアーチ橋「萬年橋」のコンクリート補強工事についての資料と解説も大変貴重でした。同タイプの補強がされた「鹿乗橋」は愛知県にあり、現在も現役でありますので、いつかこれを紐解き、伝えたいとの思いを強くしました。


補強前の鹿乗橋(土木学会付属土木図書館提供)

現在の鹿乗橋

 こうした分野までを幅広く精通している人からの話というのは、なかなか聞けるものではありません。どうかこれからも執筆は続けていただきたいです。まさに長年橋梁に携わられたシビルエンジニアだからこそなせることと思います。 
 英国などでは、土木技術者が首相経験者と同じく、子供から大人まで尊敬される人物としてあげられ、国民の認知度も高いようですが、日本ではまだまだですね。

歴史的のある橋梁について

 戦後、私たちの先輩が、質・量とともに不足していたインフラを、限られた予算と時間の中で整備してきたことが、我が国の奇跡的とも言われた高度経済成長に寄与し、現在の豊かな暮らしを支えていることは紛れもない事実です。しかし、一方で数多く作られた橋梁が、経済設計重視となり、全国に一律で特色のない風景を多く産み出してしまった側面もあるかと思います。
 大量につくられた橋梁からは、戦前につくられた橋梁に見られるような、その地域の発展と次世代に引き継ぐにふさわしいデザインを試みた技術者の奮闘や意気込みが、なかなか伝わって来ない気もします。
 今存在している歴史のある土木構造物について、私も古いものだからという点のみで、ただ残すことが良いと考えてはいません。過去より現在まで残されてきたことについて、様々ないきさつがあることはもちろん、時代の変化に対応してこられたことのほか、やはり「今後も現役で使われ続けられる」からこそ価値があるのではないかと考えております。このあたりが建築物と土木構造物との違いなのではとも考えています。
 そういった意味で「近代土木遺産」という名前は少ししっくりきません。ただ、「近代土木資産」のがいいのか…私にあまりセンスがなく、ほかにいいネーミングが思いつきませんが(泣)
 歴史ある土木構造物も含め、今存在するインフラ資産について、その価値を最大限に生かして、時代のニーズに合わせ、手を加えるべきところは加え、また、必要に応じ更新や新設も交えながら、次世代へと引き継いで行くことが僕ら世代の技術者の役割の一つと考えています。このあたりの考え方が自ずと定着したのは、髙木さんの影響を受けていたのでは、と今回の投稿を読んでふとそう思いました。
 機会がありましたら、この考えに基づき、「長寿命化設計」を実施したいくつかの既設橋梁の事例や構想などを今後この連載上にてご紹介したいと考えております。


殿橋(昭和2年竣工の渡り初め時)

愛建発表論文「近代土木遺産「殿橋」の拡幅方法の一提案~殿橋竣功100年に向けて~」

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