道路構造物ジャーナルNET

㊸インハウスエンジニアの責任と決断

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦

公開日:2019.06.16

1.はじめに 

 暑い日が続き、その後涼しくなったりとしていますが、お元気でしょうか? 6月でまた、議会月です。5月6月は、様々な会合、イベントがあり、多くの方々とお会いする機会も多い。本記述に関しても、多くの方からご支援を賜り感謝いたしております。伝える重要性と本音を言う重要性を感じてています。さらには、やはり、地方自治体の実態は非常に分かりづらいということです。霞ヶ関、国の方がいくら支援してくれようと考えても、実態がずれてしまえば、徒労に終わりかねません。さらには、現場で起こっていることも、多くの方には理解されていません。

2.設計ミス?虚偽報告?

 ここ数回書いているが、重大な設計ミスがあった。ミスというよりも虚偽報告である。ここに数回書いていると言うことは対応に数か月かかっているということである。もう、いい加減にして欲しい!
 ちょうど、先週、議会にも報告しなければならないので、地元新聞にも出てしまったが、「3億円の賠償」が必要となってくる。なかなか、すさまじい金額である。当然、指名停止という事もついてくる。しかし、これで皆、ノンビリ作業しているのが良く理解できない。
 結局、関わっている人間が丸投げなのである。ここで思うのは、支承や伸縮装置は分かり難い、だから、業者に頼んでも仕方が無い。実際に、そういうことがまかり通っているのだが、本体まで、未だに丸投げ。解析も丸投げでは、何のためのコンサルか?
 コンサルの仕事に対する態度として一番重要なのは、「誠実さ」である。一般的な橋梁設計ならば、普通の技術力があり、誠実な対応さえしていれば問題は起きないはずなのだ。これが、わが国の設計スタイルである、「仕様設計」なのである。ですから、さほど高度技術力が必要なことを、やれと言っているわけでは無いのだが。

 それよりも悪質なのは、「照査報告書」において、動的解析もちゃんとやっていることになっていたが、物が無かった。虚偽報告である。おまけにいろいろ言っていた、「動的解析は支承業者がやるはずだ」と言うのである。すばらしい発想である(もちろん皮肉だ)。
 まあ、もう今回の件は忘れたい。ただ、チェックシステムとして、なにか仕組を残そうと思う。それは、こちら側の話。相手方としてどのようにするのか? 普通だったら是正策を言ってくると思うのだが、それもない。危機感が無さすぎる。きちんとした謝罪すらない。(技術担当者だけでなく)営業からも無い。
 なによりも、ここ数ヶ月、生産性の無いことで時間を取られてしまった。この辺の慰謝料が欲しいくらいである。職員もかなりの時間を取られているこれは市民に対する冒涜である。事件を犯したコンサルタントとそれを助長する地域は深く反省して欲しい。実は、20数年前に本省からの命令で、構造物の講習会を開催して回った。「どうも、北陸3県の構造物設計が怪しい。行って、県の職員を中心に講習会を開いて来い」という命令を受け、3県まわった。それで今回の一件である。なるほど、20数年間まったく進歩できていないな。
 耐震設計は建築でも土木でも難しい。考え方、解析手法、モデル化、解析ソフト、やっている人間によって微妙に答えが変わってくる。とりあえずは検討していることが重要である。やっていなければ、意味が無い。

 実は、前々から、様々な面で「耐震化」とか「耐震設計」「耐震補強」と言う言葉を聞くが、疑問と言うか、「本当にわかって言っているのか?」と思っていた。そして、実際に出来ている物を現場で見ても、そもそも、新設時にきちんと出来ていない物を今更いじってどうするの?と思っている。それが、皆さん理解できるかどうかである。
 実際の「耐震設計」の「危うさ」、補修設計での耐震補強などの「無意味さ」これが理解できないと、無駄なことをやり続けるが、そんな余裕があるのだろうか?
 何が言いたいか?「もっと勉強しようよ」「もっと現実を見る目を持とうよ」。皆さん、いろいろ言うが、中身が安易なのである。それは橋梁の構造や作り方、壊れ方を勉強していないからだ。そして、補修技術に関しても勉強していないからである。

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