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-分かっていますか?何が問題なのか- ㊿高齢橋梁の性能と健全度推移について(その7) ‐将来に残すべき著名橋になすべきことは‐

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員
髙木 千太郎 氏

1.優れた技術者とは、過去に学び最新技術で活かす

 『高齢橋梁の性能と健全度推移について』の連載も長きに渡り今回で7回目、いよいよ最終章となった。今回の分析対象は、トラス橋、アーチ橋、ラーメン橋、吊橋、斜張橋の5タイプである。これまで説明してきたプレートガーダー系(桁橋や床版橋)と比較すると今回対象の5タイプは、ラーメン橋を除けば径間長が長く、橋梁としての大きな存在感を示す事例が多い。まずはトラス橋、アーチ橋、ラーメン橋、吊橋、斜張橋それぞれの構造的な特徴と変状について考えてみよう。特に、戦前から戦後直後に建設された吊構造系を除く道路橋については、構造的な詳細に触れても話を進めよう。トラスとは、細長い直線で棒状の部材を三角形に組み立てた骨組み構造である。明治から戦前においては、支間長が50m以上となると、プレートガーダー橋よりもトラス橋の方が経済的であったことから、トラス橋が数多く建設された。


 戦後は、高張力鋼を使用した桁構造の発達によってトラス橋の優位性は薄れ、橋梁上を走行する車両から感じる閉塞感や外観上の問題等からか、建設事例は限られるようになった。しかし、トラス橋は、構造が簡明で剛性に富んでいること、所要鋼材が少なくて済む場合が多いこと、下路橋の場合は、桁下端から路面までの高さを抑えることができること、トラスを構成する部材の容積重量が小さいく建設現場までの輸送が容易なことなどの優位点があることから、支間長が長くなると好まれて採用され続けている。トラス橋は、外的には桁構造と同様な動きをするが、トラス橋と桁橋との大きな違いは腹部構造にある。トラス構造にも多種あるが、戦前に数多く採用されたタイプは、ワーレントラスが圧倒的に多い。ワーレントラスの腹材は、交互に方向が異なる斜材を中心に構成されているために、部材数は少なく形は極めて簡明であるのが特徴と言える。ワーレントラスは、道路橋、鉄道橋に関わらず、連続トラス形状となるとしばしば採用される。しかし、長支間となって格間長が長くなると剛性が減じることから、格間の中間に補助的な垂直材を入れることで剛性を確保する考えが取り入れられた。このような理由から、戦前は垂直材を持った平行弦ワーレンタイプが多く、径間長が長くなると、外観がアーチに似た曲弦トラスとなることが多かった。また、中央支間長が100m以上となった場合のトラス橋はバランスを考えて、中央径間を長くとった3径間連続形式(ゲルバー構造も含む)が採用される事例も多い。ここで同タイプの戦前の設計における特徴を考えてみよう。中央径間を長くとる場合は、中間支点上で構造高を高くし、当該部分の弦材応力を支間中央よりも大きくならないような処理をする方法をとるのが一般的であった。しかし、高度経済成長期以降の連続トラス橋の場合は、当該箇所の解析が進み、中間支点上の構造高を高くしても、上弦材の応力が減少しないことが明らかとなった。さらに、中間支点上の構造高を高くすると、反って部材長の大きい圧縮柱材が必要なことだけではなく、圧迫されるような外観となる。このような理由から、70m程度の支間長の連続トラス橋においては、垂直材が無く、構造高が一定な直弦ワーレントラスとする事例が増加する結果となった。写真‐1は、垂直材の無い直弦ワーレントラス橋であるが、夕暮れ時、右隅の富士山が背景の一部となり、インスタ映えすると思うが読者の方々如何かな?


 今日も使われ続けている明治から戦前までの旧形式のトラス橋は、構成する弦材のπ断面が溝形鋼と鋼板で構成され、レーシングやタイプレートで連結されている。当然、各部材の添接はリベットによる支圧接合である。この時代に建設されたトラス橋は、プレートガーダー橋の編でも説明したが、トラスを構成する部材を形鋼や鋼板を複雑に組み合わせていることから、その隙間に塵埃や土砂などの堆積物が溜まりやすく、代表的な変状として腐食や断面欠損があげられ、その措置が問題となっている。


 アーチ橋は、アーチ構造を主体としてはいるが、構造が曲線的で優美な外観であることから設計者だけでなく、住民からも好まれ、種々な材料、例えば、古くは石材、その後は鋼やコンクリートを使った事例と多種多様である。アーチ橋は、鉛直荷重が作用した時、両支点には水平反力が生じ、主桁や主構アーチに大きな軸圧縮が、曲げモーメントやせん断力とともに作用する。昔のアーチ橋には、3ヒンジアーチ、2ヒンジアーチ、固定アーチの3種類がある。2ヒンジアーチは、一次の外的不静定構造であるが、ヒンジ支点が基部となるので基礎の築造が容易であることから鋼製アーチに数多く採用されている。アーチ橋のタイプとしては、1960年代までは2ヒンジアーチが多く、その後設計技術の進歩に合わせ近年は、タイによってアーチ両端の支点を繋いだタイドアーチ橋、アーチ部材は軸方向のみに抵抗するランガー橋、アーチ部材と桁部材がともに軸方向力、曲げモーメントおよびせん断力に抵抗するローゼ橋、ローゼ桁の腹材を多数の引張部材、例えばケーブルによる斜材としたニールセン橋などを採用する事例が増えてきた。写真‐2は、先のトラス橋と同様に、秋の紅葉が美しい時期、水面にオレンジ色の逆アーチを映し出す、これまたインスタ映えするアーチ橋であることから紹介した。一方、3ヒンジアーチは、外的静定構造であることから、支点が多少移動してもアーチリブの応力に大きな影響を与えない利点がある。しかし、支間中央のたわみ量が大きく剛性が劣ることなどから採用例は少ない。


 写真‐3は奥多摩湖に架かる『坪沢橋』で非常に珍しい3ヒンジ鉄筋コンクリートアーチ橋である。当該橋も経年で中央部のヒンジ部分が下がり、措置している。固定アーチ橋は、3次の外的不静定構造で、支点には鉛直反力、水平反力の他に反力モーメントも作用する。このようなことから、基礎の築造には多大な工費が必要となる場合が多いが、支間長が長いと経済的になることや、たわみ量が少なく剛性に富んでいることなどをプラスと評価し、採用される事例も多かった。発生する変状を考えると、いずれのタイプもアーチとしての特徴を起因したものが主で、鋼2ヒンジアーチの場合は、支点変位、鋼ランガー橋、鋼ローゼ橋や鋼ニールセン橋の場合は、たわみによる疲労亀裂が発生しやすいと思う。いずれにしても、前述した重大な変状発生の予測に該当するアーチ橋を管理している場合は、過去の変状事例報告や論文等を参考に要点検部材や部位を抽出し、その後、それを活かして一度は詳細点検を行うことをお勧めしたい。


 ラーメン橋は、ラーメン構造を主体とする橋梁で、隅角部に負の曲げモーメントが生じ、両支点には水平反力が発生するのが特徴である。ラーメン橋は、構造的に分かり易く直線的な美しさを持ち、桁下空間を広くとれることから、鋼製、鉄筋コンクリート製いずれも古くから採用事例が多い。写真‐4は、都市内の街路が交差する箇所に建設された鋼ラーメン橋の事例である。また、近年は、自動車専用道路や主要幹線道路を跨ぐ道路橋に、鉄筋コンクリートやプレストレストコンクリートを使った方杖ラーメン橋など事例も数多くある。ここで、変状に関係するラーメン橋の特徴を考えてみよう。ラーメン橋の脚柱部は、ヒンジ支点あるいは固定支点によって支持される外的不静定で、支点がヒンジ支点の場合は、鉛直反力の他に水平反力、固定支点の場合は、さらに反力モーメントが作用する。このようなことから、支点沈下や水平移動すると、ラーメン部材に異常な応力が作用し、危険な状態となるので要注意である。変状は、主構端部、橋台側の支点部付近の腐食や断面欠損が多い。


 ここで、先に説明した構造形式において、昭和30年代以降から高度経済成長期初期の時代における特徴と変状を考えてみよう。戦前から東京オリンピック前に建設されたトラス橋やアーチ橋は、死荷重割合が大きく、また等分布荷重(群衆荷重)も大きいことから、現状の設計荷重で照査しても耐荷力を満たす場合が多い。このような理由からか、該当する年代に建設された同タイプの道路橋は、床組みや床版の補強や取り換えを行っても、主構造は大きな補強無しでそのまま使われている事例が多い。橋梁を構成する部材の製作は、リベットから溶接に移行し、現場の部材添接は、リベットや高力ボルトが使われた時代である。トラスもゲルバー形式、アーチも2ヒンジタイプから他の形式が使われ始めたが、たわみ易く振動も発生する事例が多く、代表的な変状は、トラス支点部の疲労亀裂やアーチ垂直材の疲労亀裂発生が数多く見られる。


 吊構造形式、吊橋と斜張橋について概要を説明しよう。吊橋は、写真‐5に示すようなアイバ―チェーンを使用する昔の形式を除けば、曲げ剛性のない柔軟なケーブル(ケーブルストランド)を、主塔・塔頂部を利用して空中に架け渡し、それから補剛桁等の床部分を吊り下げる構造の橋梁である。吊橋の力学的性質は、アーチ橋を上下さかさにして、アーチリブに働く軸圧縮力を軸引張力に置き換えたのとほぼ同じと言える。床に作用する荷重は、ケーブルに作用する引張力によって支えられることから、ケーブルには引張力に強い材料を使用することが必要となる。いずれにしても、ポイントは、ケーブル本体、ケーブル定着部であるアンカーレイジ等のスプレイサドル、ケーブルを中間で支える主塔部分、ケーブルから補剛桁を吊り下げるケーブルバンド、吊材・ハンガーの定着部(ハンガーロッド等)などである。

 斜張橋は、塔頂部、中部から直線状ケーブルの斜張材で主桁や主構造を直接吊って、単径間の時は主塔からバックステイとアンカーレイジを設け、連続径間の時は、写真‐6に示すように側径間の斜張材を主桁や主構造に直結する構造である。このような構造であることから、主桁や主構造には、曲げだけでなく軸力も作用することになる。主桁や主構造に作用する軸力は、主として圧縮力であるが、中央径間の中間部分では引張力となる場合もある。斜張橋は、構造的にも力学的にも吊橋とは違い、不動支承とばね支承を有する斜張り桁橋と言え、吊橋と外観は似ているが異なった構造と考えるのが一般的である。斜張橋特有の変状事例は、建設してから供用年数が長期で無いことから、初期欠陥を除いて問題とするような変状の報告は少ない。ポイントは、塔側斜材ケーブル定着部、サドル、主桁(主構)側斜材ケーブル定着部、支承(ペンデル支承等)などである。


 吊橋、斜張橋、ニールセンローゼなどの吊構造系の変状は、私の国内外の橋梁を見てきた経験から、ケーブル定着する部分の腐食や疲労損傷が最も多いと考える。以上が、今回分析対象とした構造形式別の特徴と変状である。それでは、今回の本題、5つの構造形式について分析した内容の説明に移るとしよう。