道路構造物ジャーナルNET

3カ所で実曝、10年間追跡調査

実環境でのシラン系表面含浸材の効果の持続性について考える

独立行政法人※土木研究所 
(※)2015年4月1日より国立研究開発法人へ移行
寒地土木研究所 耐寒材料チーム
研究員

遠藤 裕丈

公開日:2015.03.01

 所定の期間、実環境で追跡調査が基本
 時間はかかるが実態に即す

 前稿(2014年10月16日号)では「シラン系およびけい酸塩系表面含浸材の適切な使い方」と題して、コンクリート構造物の劣化の進行を抑制するための対策工の一つである表面含浸材の特徴について平易に解説しました。
 さて、構造物の管理者の方が何よりも知りたいのは、効果の持続性でしょう。実環境での効果の持続性は、ライフサイクルコストや費用対効果の評価はもとより、工法の信頼性にも大きく影響しますので、極めて大切な情報です。
 しかし、その答えは、実験室で表面含浸材を塗布したコンクリートに人工的に作り出した過酷な環境作用を意図的に与え、劣化を強制的に促して結果を迅速に得る促進試験だけでは得ることができません。このようにして行われる促進試験の条件は実環境の何年分に相当するのか、促進試験における劣化機構は実際と合理的に対応するのか、十分確かめられていないためです。
 答えを適切に知るには、やはり所定の期間、実環境で追跡調査を行い、実際に確かめることが基本です。時間はかかるかもしれませんが、地道に収集したデータをフィードバックすることで、実態に即した最適な評価方法の確立(例えば、効果の持続性が予測できる技術の構築など)、設計法の高度化が図られ、結果的に工法の信頼性向上に繋がります。
 例えば、寒冷地の道路橋では、凍結融解と塩化物との複合作用による部材の劣化を抑えるためにシラン系表面含浸材が使われることがあります。前述の背景に鑑み、著者も効果の持続性、工法の有効性を確認するため、北海道開発局の協力を得ながら、現場での追跡調査を継続的に行っています。本稿では、管理者の方へ参考となる情報を少しでもお伝えできればと考え、著者が現在行っている約10年目までの追跡調査の結果の一例について紹介します。
 なお、本稿は、平成27年2月17~19日に北海道開発局研修センター(札幌市東区)で開催された「第58回(平成26年度)北海道開発技術研究発表会」で報告したもの[1]を再構成したものです。

 

 増毛、美幌、むかわの3箇所で調査

 調査箇所は図-1に示す北海道の増毛、美幌、むかわの3箇所です。いずれの地区も寒冷環境下に位置し、1~2月の厳冬期には増毛で-15℃、美幌で-23℃、むかわで-18℃まで気温が下がる日もあります[2]。

 


            図-1 追跡調査を行った箇所の位置図

 

 増毛では、日本海沿岸に位置する暴露実験場において暴露実験を行っています(写真-1)。
 まず、実験室で100×100×400mmのコンクリート供試体(水セメント比45%、高炉セメントB種使用)を作製し、湿布養生を7日行った後、材齢14日にシラン系表面含浸材を打設面に塗布しました。そして、材齢28日に暴露実験場の架台に据付けました。海水に浸かる場所ではありませんが、年間を通じて飛来塩分を受ける環境にあります。暴露は2005年11月から開始しています。

 


          写真-1 増毛暴露実験場での暴露の様子

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