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ベンジルアルコール中毒対策を意識

日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会と循環式エコクリーンブラスト研究会 「剥離剤による塗膜剥離に関するガイドライン」を策定

公開日:2020.09.10

 日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会と循環式エコクリーンブラスト研究会は、剥離剤の成分による中毒事故を未然に防ぐため、共同で「剥離剤による塗膜剥離に関するガイドライン」を作成した。、2020年8月17日に厚生労働省労働基準局安全衛生部から発出された通達「剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について」を受けたもので、特に、最近高速道路の橋梁塗装工事で起きているベンジルアルコール中毒を意識して、中毒症に陥らないための具体的な方策を記している。(井手迫瑞樹)


ガイドラインの表紙/及び目次/剥離剤に含まれる主な化学物質

具体的なものは次の通り。
 ①ベンジルアルコールを含有する剥離剤を取り扱う旨を作業場所に掲示し、作員以外の立ち入り禁止措置を講ずること。
 ②剥離対象塗膜に鉛が含有されている場合は送気マスクを使用させること。
 ③ 剥離対象塗膜に鉛が含有されていない場合は、防毒マスク(有機ガス用防毒マ スクの型式検定合格品)の使用でも良い。ただし、吸収缶が破過すると除毒能力がなくなるため、使用時間を厳格に管理し、定期的に吸収缶を交換すること。


破過曲線図

 ④ 作業者には保護眼鏡、不浸透性の保護衣、化学防護手袋、化学防護長靴を使用させること。
 ⑤ 作業場所を防炎または難燃性能を有するシートで養生し、排気装置を設けて作業者のばく露濃度を低減させること。なお、排気エアー量が給気エアー量を上回るようにし、作業場所の「隔離空間内部の空気を1時間に4回以上換気できる」ように排気装置の能力及び台数を決定すること。
 ベンジルアルコールについては有機溶剤中毒予防規則の規制対象ではなく、明確な換気量計算ができないため、同ガイドラインでは、剥離剤メーカーによる呼吸用保護具の性能試験に基づき、作業環境中濃度を100ppm 以下で管理することにした。1 時間に4回以上の換気ができている場合でも、この基準を超えてしまう場合には換気能力または隔離計画の見直しを行う。作業員及び第三者が吸引することの無いように、換気装置の排気口付近の立入禁止措置を講ずるとともに、排気された空気が機材ヤードに滞留しない措置も講じる。
 ⑥剥離された塗膜くずにもベンジルアルコールが含まれているので、運搬又は保管する時は、堅固な容器に入れるか、確実に包装した上で、見やすい場所にベンジルアルコールの名称と取扱注意の旨を表示する。
 ⑦作業開始前に、作業者に対し、剥離剤に含まれるベンジルアルコールの有害性、作業を行う上での注意事項を周知し記録に残す。

 但し、②においては2014年5月30日に出された通達「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」で、鉛作業を行う作業員は「電動ファン付き呼吸用保護具又はこれと同等以上の性能を持つ空気呼吸器、酸素呼吸器若しくは送気マスクを着用させること。」との記載がある。しかし、令和元年 11 月の東名高速道路での火災事故を受け、剥離剤作業では防爆構造を持たない電気機器の使用は禁止されている。したがって、剥離剤作業においては、電動ファン付き呼吸用保護具は防爆構造ではないため使用してはならない。
 また、③においては、実際に防毒マスクの使用時間を厳格に管理するためには、現場でのガス濃度や沸点の異なる複数のガスを測定し、破過時間を求めた後、十分安全を考慮して使用時間を定め、その時間に達する前に吸収缶を交換しなければならないなど、厳格な管理は非常に困難で、手間やコストも掛かり、一たび管理のミスがあれば即健康障害につながりかねない。

 こうした点から、同ガイドラインでは、複雑な管理を必要とせず、かつ安全で、冷気変換装置を装着することで熱中症対策も可能な「エコクリーンクールスーツ(NETIS CB-190009-A)」を標準とすることを提唱している。


エコクリーンクールスーツを標準装備することを提唱
(2020年9月10日掲載)

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