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ブロック長42.5m 鋼重681t

川崎市 (仮称)羽田連絡道路で最後の台船架設が完了

公開日:2020.07.27

 川崎市が同市の川崎区殿町と羽田空港を結ぶ箇所に、多摩川を渡河する橋梁として建設を進める(仮称)羽田連絡道路(橋長674m、3径間連続鋼床版箱桁+2径間連続鋼鈑桁)における最後の台船架設が、21日未明からお昼過ぎにかけて施工された。
 台船架設で最終(5回目)の施工となる今回の鋼床版箱桁ブロックは幅17.3m、長さ42.5m、重量約800t(治具含む、桁重量は681t)の桁を4000t積台船に載荷して運んだ。今回はベント間の幅が狭い(38.6m、台船幅は24m)ため、桁を台船とは直角の方向に配置し、ベント間に台船が縦になる様に進入して架設した。桁は左側に多少下り勾配に配置しているが、これは橋梁の縦断線形を考慮したもの。


各ブロックの架設方法と台船架設手法

架設概要図/架設平面図

事前対策
 現場は、漁船や小型遊覧船などが行き交う水域であり、さらには上流に架替え中の高速大師橋などがあり資材や土砂の運搬を行う船も通る。その航跡波による架設への影響も無視できないことから、予め航行制限をかけて施工に望んだ。また、架設時の潮流は下げ潮に該当するが、その流速は上流から下流にかけておよそ2knot超に達する。潮流を考慮して、最も下げ潮の影響の少ない満潮時(川の流れと潮の流れが影響し、潮止まりが発生する、この日は5時5分)に桁に進入するようスケジュールを組んだ。
 前回の台船架設ではその流れに台船の挙動が影響を受けた(下流に流される)こともあり、台船を固定するアンカーの本数を2本から4本に、アンカーの1丁当たりの重さを2tから4tに増やすことで、架設時の安定性を向上させた。また、引き潮の影響を考慮して、30~50㎝台船を上流側にずらすなどのバッファを講じることにした。

当日の施工
 鋼桁ブロックを積んだ台船は、前日までに架設地から50m離れた箇所に係留し、当日は午前4時半に同地から進入した。同時に架設鳶がB7ベント上と架設済みのB6ベント側の桁に配置され、進入を待った。
 4時半に架設を開始し、B6-B7ベント間には、ちょうど潮位の上がるピークでありA.P. (東京湾霊岸島量水標の目盛による基準面零位を基準とする基本水準面(Arakawa Peil))201㎝に達した満潮時前後に進入した。これが架台にタッチする予定の7時半には同150㎝まで下がり、10時前には曳舟の入域が困難となる同50㎝以下まで下がってしまう。そのため「50~150㎝の潮位の中で勝負をかけなくてはならない」(陶山健太現場代理人)。時間との勝負だ。


ベント間に進入を開始する台船/船首が少し入った状況

 台船は桁が擦れて損傷を起こさないようにB7ベント側に寄った形で進入する。B7側のベントとの離隔は1m以下で、タイヤを緩衝材にして船を進入させ、既に架設されている桁との間は4m以上の離隔を取った。その上で、橋軸が整った後に桁上に設置している手動ウインチで橋軸方向に引っ張り調整する。架台とのタッチは600mmずれた状態で行い、B6側は架設済みの桁とセッティングビームとの間に300tジャッキ4台、B7側はベントと桁の間には、後施工の重量を考慮し850tジャッキを4台配置して慎重にジャッキダウンを行った。同時に台船は潮位の低下とバラスト注水を行って桁との離隔を取り、桁下の載荷点などを再塗装し、(桁ずれを防止するための)橋軸直角方向のストッパーを解体した上で、9時15分には台船を桁下から退出させた。


B7ベント側に寄っていることが分かる/橋軸がほぼ整った

手動ウインチで桁を引き寄せていく

潮位低下とバラスト注水で桁を下げていく/ジャッキを突いた

橋軸直角ストッパーの撤去/台船の退出は9時30分前に始まった

台船が完全に退出した状況/セッティングビームとジャッキダウン状況

 ジャッキダウンは14時ごろに終え、14時45分には仮添接など当日の作業を完了させた。
 今後はトラベラークレーンによる張出し架設、殿町側の手延べ桁による150m弱の送出し架設を進めて行く。

トラベラークレーンによる張出し架設/手延べ桁など送り出し設備

 施工は五洋・日立造船・不動テトラ・横河・本間・高田JV。下請は深田サルベージ建設、トーヨーテクニカ、磯部塗装、大瀧ジャッキなど。
(2020年7月27日掲載、写真・文:井手迫瑞樹)

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