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福島須川橋で床版取替

プレキャストPC床版、GⅡ床版防水などを採用

公開日:2014.10.10

 東日本高速道路㈱東北支社は所管する東北自動車道福島須川橋(下り線)の床版取替えを施工中だ。疲労および凍結防止剤による影響が顕著で、平成6年に床版増厚を、さらに平成15年に部分補修を実施したものの、ポットホールや床版下面の剥離などが生じ、抜本的に対策するため、福島須川橋上下線および福島荒川橋上下線の4橋で床版取替えを実施するもの。今年秋に、福島須川橋の下り線、来年GW明けに福島須川橋の上り線と福島荒川橋の上り線、来年秋に福島荒川橋の下り線をそれぞれ施工する。

            損傷している床版下面                       床版取替え前の福島須川橋(下り線)
 同橋は昭和50年に供用された東北道福島西IC~福島飯坂IC間の一級河川須川を渡河する箇所にある橋長88㍍、有効幅員10㍍の鋼2径間連続鈑桁橋(RC床版)。同橋を含む区間の年平均交通量は約21,000台(下り線)だが、大型車混入率が3分の1の7,000台に達している。平成6年にはB活荷重対策として床版を増厚しているが約20年経過し損傷が生じているため、抜本的対策として今回プレキャストPC床版に取り替える。
 既設床版は、車両の大型化などによる輪荷重の繰り返しで生じたコンクリートの微細なひび割れや冬季間の凍結防止剤散布の影響によるコンクリート内部への塩化物イオンの浸透により、コンクリート床版の劣化や鉄筋錆が発生し舗装にもポットホールが生じている。平成25年10月には床版下面のコンクリートが剥落したが、その範囲は橋軸4.4×橋軸直角1.3㍍という比較的大きな範囲で、剥落箇所を測定したところ1立方㍍あたり15㌔の塩化物イオン量が含まれており、塩害が構造物に顕著な影響を与えていることを確認している。
 平成6年に上面増厚しているものの、既に既設床版部が相当程度傷んでいたことが推測される。「増厚は全幅を数分割して行われたため、それによって生じる縦目地や地覆との取り合い部分から塩化物イオンを含んだ水が浸入していった可能性もある」(同社)。また、増厚時の接着界面は現在のようにエポキシ樹脂系接着剤を塗布していない。床版防水は通常のアスファルト系防水層であり、現在の基準ではグレードⅠにあたる。このような諸条件に加えて、2011年に起こった東日本大震災の影響により大型車も含めた交通量が一時的に著しく増加したため、損傷を促進したことも考えられる。
 そうした点を踏まえて、プレキャストPC床版への全面取替えに際しては橋梁の全幅員および、地覆の立ち上がり部までを1つのプレキャスト部材として製作し、弱点となる目地部への浸水を極力排している。また、目地コンクリート部は現場打ちとなるが、これもプレキャスト部材と同様の形状で全幅および地覆までを一体化した型枠施工により打設している。また、かぶりが小さい等の比較的塩化物イオン浸透による錆の影響が出やすい部分の鉄筋については、エポキシ樹脂塗装鉄筋、床版防水は高性能床版防水(グレードⅡ)を採用するなど耐久性向上に努めている。


           既設床版の切断および撤去                        プレキャストPC床版の架設     
 詳細設計・施工はIHIインフラ建設。(井手迫瑞樹)

(完全版は11月15日に「現場を巡る」コーナーで配信予定です)

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