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阪神高速道路と飛島建設、第一カッター興業

床版撤去の桁上作業期間を約半分に短縮出来る「Hydro-Jet RD工法」を開発

公開日:2018.08.06

 阪神高速道路と飛島建設、第一カッター興業は、床版取替えに伴う通行止め期間のうち、既設RC床版撤去の桁上作業期間を従来の約半分に短縮できる「Hydro-Jet RD工法」を開発した。床版撤去の際、既設床版と鋼桁の切り離しには大きな手間と時間を有する。また、合成桁構造の場合、手当をせずに切断すると曲げ耐力が一時的に足りなくなってしまう。また、撤去の際に用いるクレーンなどを運用する場合も桁の補強が必要もしくは、場合によってはクローラークレーンなどを用いざるを得ない場合も出る。そうした点をWJや鋼材とモルタルによる仮補強材で補っている点が特徴だ。既に阪神高速道路が管理する高架橋での床版撤去作業で実適用し、所定の効果を確認している。


工法施工概念図

 同工法はまず、供用中の桁下に吊足場を設置し、床版下面からWJで鋼桁との接合部を5cm厚はつり、スタッドを露出させる。その後、桁と床版の隙間に鋼材とモルタルによる仮補強材を設置し、通行止め後に仮補強材を撤去、スタッドを切断し、同時に床版を橋軸直角方向に切断撤去する。供用中に仮補強までの作業を約50日(3スパン、1スパン長20m、2主桁の場合)かけて施工し、通行止め後の床版撤去作業は従来18日(1スパンあたり)だったものを9日に半減させることができる。

WJの施工状況

  WJ施工にあたっては狭小部に適用でき、なおかつ連続施工可能な治具を第一カッター興業が開発した。多孔式かつ斜角を有するノズルヘッドを用いて橋軸方向をはつってスタッド位置を確認した後、次いで橋軸直角方向にはつる。スタッド間についてはノズルをT字型に交換してはつるというもの。切削延長は1日当たり1.5~2.5m程度である。

移動架台付きWJ施工装置

WJの施工ステップ/鋼桁と床版の分離状況

 WJを採用する場合、課題となるのが水の問題だ。現場で使う水量は1日当たり4㎥ほどで約80%はバキュームで回収できる。しかし2割は足場内の床面に落水する。そのため足場に防水機能と漏水検知機能を兼ね備えた設備を採用することで、足場外に水が漏れないようにしている。

WJの施工に用いる足場/漏水検知器

 その後、桁と床版の隙間に仮補強材を配置する。仮補強材はフランジを把持するような形状の鋼製補強材(フランジガード)と、スタッドの空隙を埋める可塑性を有する高強度無収縮モルタルからなるもので、鋼製補強材の前面から特殊モルタルを注入することで、合成桁橋と同等の構図性能を確保する。また、床版を撤去、架設する際は、桁に載るクレーンなどの重量も担保しなければならないが、予め計算して仮補強材の規模を決めておくことができ、従来の補強方法よりも経済的に仮補強や重機選定が可能になる。

フランジガードの構成/特殊モルタル充填試験仮補強材の設置

 通行止め後は所定位置の仮補強材を撤去し、スタッド次いで、床版を切断していく。

 供用年数の多い高速道路橋では合成桁構造が多く、今後高速各社の床版取替えの際の省力化工法として積極的に展開していく。(2018年8月6日掲載、井手迫瑞樹)

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