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西日本高速道路 技術検討委員会を開催

新名神道余野川橋ベント転倒事故 サンドル位置の偏心と安全性照査の不足が原因

公開日:2016.06.15

 西日本高速道路は14日、同社本社で新名神高速道路余野川橋ベント転倒事故に関する技術検討委員会(委員長=山口栄輝九州工業大学教授)を開催した。山口委員長は転倒事故についてベント上のサンドルの位置が著しく偏心していたことや安全性照査の不足が事故に繋がったと結論した。

余野川橋のベント転倒事故近くの側面図と平面図(西日本高速道路配布資料から抜粋、以下同)
 同現場のようにベントで支える場合、ベントの抵抗モーメント(転倒に抵抗する力)は、転倒モーメント(転倒させようとする力)に対してできるだけ上げる必要がある。施工会社(IHIインフラシステム)は、主桁の縦断勾配の影響、2ブロック張出時の勾配変化については考慮に入れて対策を講じていたものの、製作キャンバーの勾配、気温上昇に伴う主桁の変形については考慮しておらず。これがサンドル位置の著しい偏心と相まってベント倒壊に至ったと予測した。6日には施工会社に直接ヒヤリングするとともに、実証実験にも立会い、推定メカニズムの裏付けを行った。実験結果は委員会の予測通りに推移した。特に影響が大きかったのが桁を直接支えるサンドル位置の偏りで、偏心が無いケースと比べて、抵抗モーメントは約1/4程度まで下がっていることが分かった。転倒モーメントも増加しており、その結果、安全率は当初計画で1.98としていたものが委員会の実験後の証左では、早朝の段階で1.21しかなく、倒壊時には1.01とほぼ同等になるまで落ちており、事故が生じたと推定している。

偏心による抵抗モーメントの減少と安全性照査不足による転倒モーメントの増加概要図

安全率はほぼ1まで減少したことを示す詳細数値

 委員会では再発防止策として、①原則として偏心しない構造とすること、②橋軸直角方向に対するベントの安定照査を行うこと(それに際しては土木学会の鋼構造架設設計施工指針を参考にする)、③第三者被害につながる可能性のある箇所においては、フェールセーフを講じること――を挙げた。また、具体的な安定対策例としては、架設時の基礎梁の延長、偏心に対応したカウンターウェイトの設置、コンクリート基礎の設置などを挙げている。フェールセーフ対策としては近接橋脚との連結、転倒防止ワイヤーの設置、桁とベントのワイヤーによる連結、などを示した。

 現場の主桁や支承、ボルト添接部など本体部分に外観上の損傷はなかった。一時的に張出長が設計の4倍程度になったため、応力状態を解析したが、主桁本体の応力度については許容値内ということも確認した。但し、一部のボルト添接部においては、許容値を超えるものがあったため、主桁ウェブの上下の開き状況などを計測した上で、今後、適切な処理を行っていく方針だ。(2016年6月15日 井手迫瑞樹)

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