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インタビュー詳細

2020年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑥日本ファブテック

千葉臨海は鉄骨柱製作のウエートを大きく 高付加価値物件の受注を推進

日本ファブテック株式会社
代表取締役社長
野上 勇 氏

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。今回は、日本ファブテックの野上勇社長と巴コーポレーションの深沢隆社長の記事を掲載する。


 ――業界環境について

 野上 建築鉄骨はコロナ禍の影響もあって中小案件の動向が読みづらい状況にあるが、我々が受注対象とする大型再開発案件は多数計画されており、少なくとも向こう5年程度は堅調な需要が続く見通しだ。

 一方の鋼橋は新設需要の先細りが懸念されているが、国の国土強靭化の方針もあり、官庁系についてはすぐに需要が大幅に減じるという状況にはなるまい。

 ただし民間は、今回のコロナ禍が鉄道会社等の経営を圧迫しており、新設需要に悪影響が出る恐れはある。いずれにしても橋梁分野は5年、10年先を見据え、維持・補修分野の対応強化に努めていくことが肝要だと考える。

 ――前年度の業績は

 野上 19年度の受注高は350億円で、構成比率は鉄骨54%、橋梁46%。鉄骨が橋梁を上回ったが、これは前年度の鋼橋発注量の大幅減に伴い、当社としても受注に苦戦した結果だ。また売上高は422憶円、経常利益は15億円だった。

 ――今年度の業績目標は

 野上 売上高は前年度並みの420億円、経常利益は16億円を目指している。受注は410億円を目標に掲げているが、コロナ禍の影響による鉄骨単価の下落傾向もあり、目標達成はやや厳しい情勢にある。

 ――各工場の稼働状況は

 野上 弊社は取手、熊谷、防府、千葉臨海、石下の5工場体制で、うち取手、熊谷、防府が鉄骨のSグレード認定を取得しているが、周知の通り鉄骨分野は端境期にあり、全工場を均すと平均稼働率は80%程度にとどまる。ただ、12月ごろから徐々に稼働率は上向き、多少の山谷はありながらも来年秋には加工のピークを迎える見通しにある。

 ――工場再編の現状は

 野上 千葉臨海で過去3年ほど続けてきたセグメント製作が間もなく終了するのに伴い、取手に設置していた柱大組立溶接ロボットを千葉臨海に移設し、今秋から鉄骨柱製作のウエートを大きくする。年間の加工量は7,000t以上を想定。

 一方、取手は橋梁と大型の鉄骨梁にも対応できる体制とする。それぞれ生産品目を絞り込むことで効率が上がり、生産性が1割程度向上するとみている。



気仙沼湾横断橋朝日地区


 ――今後の設備投資計画は

 野上 BCP対策を兼ねて、老朽化した各工場の管理棟の建て替え、再整備を実施していく。まずは来年2~3月をメドに熊谷工場の事務所の建て替えに着手し、その後順次、他工塲の管理棟にも手を加えていく。

 ――新分野進出、新技術の開発などは

 野上 市場拡大が見込まれる洋上風力発電分野などでも親会社との連携を深めながら、我々が貢献できることがあれば積極的に関わっていきたい。

 また自社商品では、鉄骨構造トータルシステム『KAP』に平行入力機能を追加した。クラウドを活用して海外を含む遠隔地から複数人が同時に作業を行えるもので、参加人数や鉄骨トン数の制限はなく、共有データをいつでも最新状態に保つことができる。BIMデータを取り込んで他業者との干渉チェックや現場建方施工手順なども利用できるので、ゼネコン各社から好評を得ている。

 ――今後の抱負、方針を

 野上 鉄骨は需要の先行き不透明感が増す中、かつてのようなダンピングを生じさせないことが最も重要。弊社の持つ技術や規模を生かし得る付加価値の高い物件の受注に努め、採算確保につなげていく。

 橋梁は総合力を一層高め、大型案件を含めた受注の安定を図ることで業界内での順位を5番手以内に引き上げたい。さらに橋梁メンテ部門は拡充に向けて人材の確保・育成に注力していくが、この「人材の確保」は依然として当業界が抱える大きな課題である。我々の仕事がインフラ整備を通じて社会に貢献し、国民の安心安全を担う重要なものであることの周知を含め、業界全体で入職希望者を増やすための努力をしていく必要があろう。

(聞き手=田中貴士、文中敬称略 2020年10月12日掲載)