道路構造物ジャーナルNET

床版取替工事で渋滞抑制の取り組みを実施

NEXCO中日本八王子支社 中央道の2区間で付加車線設置事業に着手

中日本高速道路株式会社
執行役員
八王子支社長

湯川 保之

公開日:2020.10.13

耐震補強が必要な橋梁は113橋
 そのうち特殊橋は13橋で設計はすべて発注済み

 ――耐震補強の全体進捗状況についてお願いします
 湯川 管内のほぼ全域が今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が26%以上の地域に含まれていて、耐震補強が必要な橋梁は113橋です。このうち、ロッキング橋脚を有する橋梁10橋については2019年度末に完了しています。残る103橋では総延長約25kmとなり、特殊橋梁(すべてトラス橋)が13橋あります。13橋の設計はすべて発注済みで、2橋が設計完了しています。そのうち2橋(日之城橋および小原第二橋)は工事契約済みとなっています。残りの橋梁についても設計が完了しだい、随時工事発注の手続きに移行していきます。
  その他の90橋の中には、総延長が1kmを超える高架橋が4橋あるほか、岡谷高架橋、日川橋などの大型PC橋もあります。これらのうち勝沼IC~甲府昭和IC間の6橋と甲府昭和IC~長坂IC間の5橋については工事契約済みです。残りの橋梁についても手続きを進めていきます。


 ――耐震補強工事に限りませんが、入札不調や不落が多く発生しています
 湯川 対策として、発注ロットのさらなる適正化や、働き方改革や週休2日制を考慮した工事の拡大、施工管理業務の省人化、設計業者と施工業者との共同事業体制の試行などを発注段階で取り組んでいます。また、発注者の責務として適切な設計図書作成や工期設定、契約状況の明確化、コミュニケーションの徹底も重要です。
 当支社が受注業者の方々にとって魅力ある発注者と認めてもらうことが何よりも大事で、我々自身がしっかりと取り組むとともに、業界の方々にも設計変更ガイドラインの内容をもとに情報共有を図っていきます。


耐震補強工事 契約中・発注予定工事一覧(拡大してご覧ください)

 ――鋼橋塗替えの実績と予定は、また、塗替え方法や既存塗膜除去の方法は
 湯川 2019年度以降では、約80,000m2の塗替えを予定します。このうち、三鷹高架橋(22,000m2)と鶴川大橋(17,000m2)が施工中です。塗替え塗装単体での発注は稀で、足場などの効率性を考えて床版取替や補修工事と合わせて発注を行っています。
  塗替えは当社基準のとおり1種ケレンのC塗装系で施工しており、既設塗膜除去は、標準的に採用している塗膜剥離剤と、仕上げにブラストを行う仕様での施工となっています。


三鷹高架橋 塗装塗替え前と塗替え後

 ――東名高速道路の中吉田高架橋で火災事故があり、本社で再発防止のための中間とりまとめを発表しましたが、支社独自の安全対策などがありましたら教えてください
 湯川 中吉田高架橋の事故は極めて重大な事象です。支社独自というよりはNEXCO中日本全体で同じ基準に立って実行するということで、本社と連携して行っています。中間とりまとめに書かれている安全対策をしっかり行っていくことが支社としての責務であると考えています。

昨年の台風19号ではのり面崩落、土石流災害が10箇所で発生
 道路区域外の災害リスク対応も進める

 ――大規模災害が多発しているなかで、今後、盛土、切土、のり面に対してどのような対策を講じていきますか
 湯川 昨年の台風19号の大雨の影響で管内ではのり面崩落、土石流災害が10箇所で発生しました。とくに中央道の八王子JCT~相模湖IC間ではのり面崩落や土石流災害により通行止めが1週間の長きにわたりました。この間、24時間体制で応急復旧工事にご協力をいただいた建設会社の皆様には感謝しています。
 大規模にのり面が崩れた相模湖付近の本復旧工事は、8月までに第4のり面ののり面補強が完了して、崩壊部ののり面を安定化させています。残る第3・第2のり面の補強についても今年度内の完成を目指し施工しています

被災状況(左)/復旧作業(中)/仮復旧完了(右)

吹付工完了(左)/水抜工の施工(中)/8月末時点の状況(右)

 中央道が1週間の通行止めになるとともに国道20号とJR中央本線も同時被災しましたので、国や自治体、警察、交通事業者との連携の重要性を再認識しました。また、発災の翌日には「災害時交通マネジメント検討会」が発足したことで、広域迂回、交通分散、交通量抑制を呼びかける情報提供を行い、道路・鉄道の利用者の行動変容を促せたことは大きな収穫となりました。
 現在は、国、都県市と道路管理者である我々で構成される「東京~山梨・長野 交通強靭化プロジェクト」に参画し、脆弱箇所の強靭化、災害復旧作業の効率化、災害発生時の交通マネジメントについて関係機関とともに検討を始めています。
 ――平成30年7月豪雨では管理外からの土砂流入が多くありました。その対策については
 湯川 会社全体として昨年12月に「高速道路における安全・安心実施計画」をまとめています。この計画では「ネットワークの信頼性向上」も挙げており、さまざまな施策に取り組んでいるところです。その施策のひとつとして近年の自然災害状況を踏まえて、道路区域外の災害リスク箇所の調査を目的にした航空レーザー測量による高精度な地形データの作成を今年度の施策として、さらなる強靭化策につなげていきたいと考えています。
 具体的には台風19号と同様の被災箇所を見極めて、土石流の恐れのある箇所に自衛手段としての対応が図れないかが今後の対策課題になってきます。

緊急事態宣言中の集中工事で遠隔理解の必要性を痛感
 AIによる渋滞予測や構造物の劣化予測に取り組む

 ――新技術や新材料の活用がありましたら
 湯川 まずはIT技術を活用したウェブカメラやウェアラブルカメラによる遠隔理解などの技術導入であると思っています。今後、労働人口の減少や働き方改革に対する生産性向上策は絶対に進めていかなければならないなかで、遠隔理解などの現場のリモート化は現場を直接預かる我々としては必須です。
 とくに、今年の中央道(高井戸IC~八王子IC間)の集中工事は新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の最中に実施しましたので、その必要性を痛感しました。人と人の接触機会を極力減らして、外出をしないという異常事態のなかでも、ウェアラブルカメラを装着した現場の人とコミュニケーションをしっかりと取り工事が進められたことは、我々発注者だけでなく、施工者にも効果があったと考えています。もちろん、メリットだけでなくデメリットもありますので、しっかりと検証を行っていきたいと思います。
 大林組と共同開発した床版取替の新工法についても重交通区間に展開できるように取り組んでいきます。
 ソフト面では、小仏トンネルの交通渋滞対策として大型の指向性スピーカーの導入に触れましたが、このようなソフト情報システムを展開して規制中の安全および渋滞対策を検討していきたいと考えています。なお、東京支社などでは音声による情報提供は行っていましたが、渋滞箇所で渋滞の状況に応じて変動して大音量メッセージをトンネルのなかで放送できることが大きな特徴となっています。
 ――中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京や中日本ハイウェイ・メンテナンス中央との取り組みでは
 湯川 エンジ東京とはドローン撮影による点検の高度化、メンテ中央とはロボットやIT機器による業務の自動化や規制の効率化に取り組んでいます。


ドローンによる点検

標識搭載型ラバーコーン自動設置回収車(ロボコーン)

 さらに、エンジ東京が現在開発しているものには、カラーラインカメラによるトンネル施設構造物の変状検知システムがあります。次世代の高速道路事業運営に関わる技術開発は、「i-MOVEMENT」に集約されていますが、支社でもAIによる渋滞予測や構造物の劣化予測の取り組み等の実装を進めたいと思います。
 ――ありがとうございました
(2020年10月13日掲載 聞き手=大柴功治)

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