道路構造物ジャーナルNET

2020年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ②JFEエンジニアリング

国内外とも発注に若干の遅れ 在宅勤務継続で働き方改革を推進

JFEエンジニアリング株式会社
取締役専務執行役員 社会インフラ本部長

川畑 篤敬

公開日:2020.09.21

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。第1回目は、JFEエンジニアリングの川畑篤敬取締役専務執行役員と川田工業の川田忠裕社長の記事を掲載する。

 ――業界を取り巻く需要環境・業界の動向は
 川畑 2019年度の国内新設道路橋の発注量は13万tと例年に比べて大きく落ち込んだ。今年度は20万t程度を想定。中長期的にはリダンダンシー確保のための高速道路4車線化やミッシングリンクの解消など社会要請から、一定量の発注は続くと見込んでいる。
 ただ、新設橋梁がないと、工場稼働率を維持することが難しい。建築鉄骨を扱うファブでも端境期で鉄骨需要が減少し、工場稼働率も低下していると聞く。当社では国内製作できる海外橋梁、東京外環道路のセグメントなどを製作し、工場稼働率を維持している。
 国内では、新型コロナウイルスの感染拡大防止に努めており、今後も影響がないことを願っているが、発注時期が当初の見通しより若干遅れ気味となる傾向がみられる。
 既存インフラの防災・減災対策や老朽化対策などの工事は社会的要請からいよいよ本格化し、なかでも都心部での修繕・改築工事や床版取替などの大規模更新工事は今後も続く。
 今回、NEXCO西日本の中国道リニューアル工事で、3径間の既設橋梁を桁まで取替える試験施工を行い、16日間で無事に完了。そのノウハウを今後の大規模更新工事に適用していく。


田中賞を受賞した横浜青葉ジャンクション

 ――海外事業については
 川畑 海外ではコロナの影響を受け、インド、スリランカ、バングラデシュなどで工事の中断を余儀なくされたが、ここに来て再開する動きが出始めている。
 スリランカのケラニ高架橋は政府要請に従い感染防止対策を実施した上で工事を再開した。ODAの計画案件は一定量の受注は見込むものの、期ずれする可能性が大きい。
 ミャンマーのJ&Mスチールソリューソンズでは、比較的コロナの影響が軽く、ODAおよび建設省向け案件はおおむね順調に受注。今年度は橋梁のみならず、国内建設会社向け建築用鋼構造物なども商品化し、ビジネスの多様化と拡大を図っていく。


田中賞を受賞した「ミャウンミャ橋」(ミャンマー)

 ――今期の状況は
 川畑 今年度の受注高は約880億円で、内訳は橋梁約710億円、その他約170億円。売上高は約690億円で橋梁約530億円、その他約160億円。上半期は、23号線蒲郡BP為当ONランプ橋工事(中部地方整備局)、1号清水立体八坂高架橋工事(同)、川崎港臨港道路東扇島水江線アプローチ橋(川崎市)などを受注した。
 ――新型コロナウイルス感染症対策については
 川畑 今回のコロナ禍により、会社としては在宅勤務50%以上確保、不要不急の出張の抑制、会議のリモート化を推し進めており、この1年間は試行期間として、継続しながら今後の方針を決めていく。
 これまでに、▽橋梁事業の事務所勤務者の在宅率は現在60%程度▽会議はリモート中心で人数制限・時間も遵守▽海外も打ち合わせや仮組検査をリモートで実施▽現場や工場の品質管理と安全管理を一部リモート対応――などの成果が見えてきた。
 個人的には引き続き、在宅勤務を推進し、働き方改革につなげていきたい。女性技術者が増加している中、子育てにも自由度が広がる。介護でも同様だ。さまざまな人材にとって働きやすい環境を整備し、生産性をあげていくために改革を進めていきたい。
 ――その他には
 川畑 津製作所は今年50周年を迎える。これを機に事務所を建替え、災害対策を一層強化するだけでなく、ダイバーシティも積極的に推進していく予定だ。稼働は来年度中の予定だが、ICT活用も進め、さらに競争力のある工場にしていきたい。
 今後の経営戦略および設備投資や人材確保・育成に関しては、中長期的な観点からの構築が必要となる。それには中長期的な発注の平準化、計画開示が不可欠。発注者の中長期的な計画・展望の開示を期待している。
(聞き手=佐藤岳彦、文中敬称略 2020年9月21日掲載)

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