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工期短縮に様々な工法採用、舗装はBLGを試験施工予定

NEXCO東日本いわき工事 上部工が最盛期から終盤へ

東日本高速道路株式会社
東北支社 いわき工事事務所
所長

小林 克久

公開日:2020.08.21

上部工 いわき中央橋でスレンダーボックス
 複数の橋梁で波形鋼板ウェブPRC箱桁を採用

 ――上部工では
 小林 いわき中央橋(353m)では、鋼5径間連続細幅箱桁橋を採用しています。維持管理性、経済性で有利となることから、桁の連続化と径間数の見直しを行いました。


いわき中央橋では細幅箱桁を採用した

床版施工中のいわき中央橋

 茨原川橋でPRC2径間連続波形鋼板ウェブ箱桁ラーメン橋を採用しています。Ⅰ期線は鋼3径間連続鋼トラス橋(160m)で飛ばしていますが、Ⅱ期線は、スパンを飛ばしつつ、橋脚も減らすことができ、メンテナンスも簡素化できる工法として橋種を変更しています。橋長は188.5mでスパン長は90m超となっています。


茨原川橋で張り出し施工

 仁井田川橋(橋長438m)では、PRC2径間連続波形鋼板ウェブラーメン箱桁(A1~P2)+PRC8径間連続2主版桁(P2~A2)を採用しました。波形鋼板ウェブの採用は、主桁自重の軽減により長大スパンに対応すること、下部構造のスリム化を図ることが主な目的です。宮下川橋(橋長138m)においても同様な理由から波形鋼板ウェブを採用しています。また、PRC8径間連続2主版桁(P2~A2)は、連続桁構造の特徴である耐震性および走行性、維持管理性に優れた橋梁形式です。


宮下川橋/仁井田川橋

仁井田川橋 ブロック長6.4mは日本最大級
 通常の3倍の超大型ワーゲンを用いて張出し架設

 ――仁井田川橋についてもう少し詳しく
 小林 A1~P2の波形鋼板ウェブ部分の橋長は168m、支間長はA1~P1が85.55m、P1~P2が79.95mとなっています。波形鋼板ウェブの採用は、前述したように主桁自重軽減による長大スパンへの対応、下部構造のスリム化が主目的です。4車線化事業ではⅠ期線が近接しているため、Ⅰ期線の下部構造を考慮した計画が必要となりますので、仁井田川橋では波形鋼板ウェブを採用し、基礎を含めた下部構造のスリム化を図り計画・設計しています。


仁井田川橋 波形鋼板ウエブが特徴的だ

 仁井田川橋A1-P2の桁高は中間支点(柱頭部:最大)で10m、側径間部で4mです。張出架設の1ブロック当りの施工長は6.4mで、施工ブロック数は9ブロックです。この施工ブロック長6.4mは日本最大級になると思います。また、柱頭部の施工長は通常(中型ワーゲン)は12m程度ですが、本橋は工程短縮および超大型ワーゲンの施工のため22.6mとして計画しました。
 使用した超大型ワーゲンの施工能力(ワーゲン最大容量)は800t/m、鋼材重量は片側1基当り140t、足場、支保工、型枠などを含めた全装備重量は180tです。これは通常(中型ワーゲン)の3倍程度のワーゲン容量および重量で、2主構では最大級の大きさです。


超大型ワーゲンを採用した

 超大型ワーゲンを採用した理由は工程短縮です。当初計画では施工ブロック数は18ブロック(中型ワーゲン使用)でしたが、計画を再検討し、超大型ワーゲンを採用して施工ブロック数が半分の9ブロックとして設計・施工しました。張出施工の実工程は、1ブロックのコンクリート打設を2月26日に行い、最終の9ブロックは6月13日に打設完了しましたので約4カ月で張出架設の施工ブロックのコンクリート打設が完了したことになります(1ブロックの施工サイクル日数13.5日:稼働率含む)。その結果、今回の仁井田川橋の施工条件で施工を行った場合では、一般的な中型ワーゲンによる施工に対して約3.5カ月の工程短縮をすることが出来ました。
 現場は、施工ヤードが比較的広く確保できましたので、張出施工箇所近くに配置したクレーンを使用して資機材をスムーズに供給することができました。また、波形鋼板の架設は、波形鋼板を橋面上に揚重してからワーゲンの吊り装置を使用して架設するケースが多いのですが、今回はクレーンを使って直接、波形鋼板ウェブを架設することができました。このように作業環境を整備したことも工程短縮に対して重要な要因の一つになったと思います。
 ――配筋やコンクリート打設については
 小林 ラーメン構造の中間支点部はD51が配置され、鋼材量が多くなります。鋼材の干渉やあきの確保は設計時に確認するとともに、鋼材量を考慮してコンクリートが密実に充填されるようスランプ値を設定しました。主桁のコンクリートは、設計基準強度50N/mm2の高強度コンクリートを採用しました。コンクリートは、本橋の最も重要な構造であるコンクリート床版と波形鋼板の接合部に対して、しっかりとコンクリートが充填されるよう施工を行いました。その結果、緻密な高強度コンクリートを施工することができ、耐久性向上を図ることができたと思います。
 PC鋼材は、張出架設ケーブルにエポキシ樹脂被覆高強度PC鋼より線12S15.7を使用しました。張出架設ケーブルは、6.4mブロック毎に上床版に定着されますが、プレストレス力とケーブル配置を検討した結果、高強度PC鋼より線12S15.7を採用しました。また、外ケーブルにはエポキシ樹脂被覆PC鋼より線19S15.2、上床版横締めケーブルにはプレグラウトタイプのPC鋼材(1S21.8)を使用しました。
 ――施工上の安全対策は
 小林 供用線(Ⅰ期線側)が近接しているため、飛散防止に細心の注意を払いながら施工しています。クレーンによる玉掛け作業は供用線(Ⅰ期線側)の安全を考えまして、吊荷は低位置(作業基面とのクリアランス1mを目安)で移動させることとしています。さらに、供用線とⅡ期線の間にレーザーバリアを設置し、荷役制限エリアを設定し管理しています。また、張出架設中については、側部防護柵に高さ2mの上部かえし付金網枠を設置し飛散対策を徹底しました。本橋は谷筋で風の通り道にあるため、特に秋から春先にかけては風が強く、施工には苦労しました。

たわみ管理に注意
 将来の支承取替に備えて新設時に予め計画

 ――施工時の技術的に大変だった点は
 小林 張出施工ではたわみ管理です。波形鋼板ウェブ橋のたわみ管理は、実際の挙動を把握するため橋梁全体のモデル化を行った3次元FEM解析を実施し、波形鋼板ウェブのせん断変形量をたわみ管理に反映しました。また、実施工で使用するコンクリートのヤング係数を事前に試験し、たわみ計算に反映しました。一方、施工時に考慮するたわみ量として、超大型ワーゲンのコンクリート打設時のたわみ量は、通常のワーゲンよりも大きくなります。超大型ワーゲンの変形量を事前に計算するとともに、実際の挙動を随時確認しながらたわみ管理を行いました。
 維持管理面では、点検や更新を速やかに実施できることを基本に予め計画・施工しています。一例としまして、PC構造の最も重要な部位の一つである外ケーブル定着部においてはすべて近接確認できるよう検査路を設置しています。また、将来の主桁の点検や波形鋼板の塗装塗替えを行うための足場用吊り金具を予め波形鋼板に設置しています。さらに将来の支承取替も視野に入れて、桁のジャッキアップの検討を実施し、その内容を記した表示板を支承付近に設置しています。 
 PRC8径間2主版桁(P2~A2)は、固定支保工で施工を行いました。
 ――波形鋼板ウェブの異種剛結部の防食はどのように考えていますか
 小林 波形鋼板の防食は、鋼橋と同じ重防食塗装を採用しています。
 ――他のPC箱桁の桁高は
 小林 仁井田川橋以外の張出架設の施工長はブロック2.5~4.8mで桁高は最大6.5mです。 中型ワーゲンによる張出架設のコンクリート強度は40N/㎟になっています。
 ――移動作業車は
 小林 通常の中型ワーゲン(3~4m)を採用していますが、北迫川橋では桁の直下を走る国道と離隔を考慮し、ワーゲンにクリアランスを考慮した段差を付ける加工を施しています。


北迫川橋②

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