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インタビュー詳細

はく離抑制型塗料の適用拡大などを基準改定

NEXCO総研 橋梁研究室 NEXCO基準改定の解説と研究動向について

株式会社高速道路総合技術研究所
道路研究部 橋梁研究室長
長谷 俊彦 氏

 NEXCO3社において、令和2年7月1日付で技術基準の改定が実施された。橋梁分野では、はく離抑制型塗料の適用を拡大するため、設計要領、施工管理要領、試験法を改定している。また、硬化コンクリートの材齢7日強度の基準管理試験において、コンクリート施工管理要領で任意実施としていた試験を廃止した。一方で、NEXCO総研の研究において、グラウト充填不良対策の維持管理手法の確立、中空床版橋の上面補修や打換え方法の設計・施工の確立、土圧の影響を受ける既設基礎構造の耐震性能照査方法について検討を進めている。そうした基準改定における解説や研究動向について、長谷俊彦 橋梁研究室長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)


はく離抑制型塗料の設計要領、施工管理要領と試験法を改定

 硬化コンクリート材齢7日強度の管理を廃止

 ――今次の設計要領および施工管理要領などにおける橋梁に関する主な改定点は

 長谷 今年の橋梁に関する要領の基準改定は2点のみです。
 1つは、はく離抑制型塗料について、性能評価を行うための設計要領、施工管理要領と試験法を改定し、新しい塗装の適用を拡大しました。もう一つは、コンクリート施工管理要領において、現場の省力化の観点から、硬化コンクリート材齢7日強度の管理は任意実施ということにしていましたが、これを廃止しました。


基準改定は2点のみ(NEXCO総研提供、以後注釈なきは同)

膜厚1mm以上でも塗り重ね可能

 塗膜において低温条件ではく離が生じる傾向

 ――はく離抑制型塗料というのは、四国総合研究所および大日本塗料、関西ペイント、神東塗料などが共同開発したものですね

 長谷 そうです。現行の設計要領では、塗膜の内部応力による塗膜はく離や割れへの懸念を踏まえ、塗替え塗装後の総膜厚を1mm以下に制限しており、素地調整程度3種での塗替え回数が制限されています。しかし、近年塗膜の線膨張係数を鋼材に近づけることで内部応力を抑え、塗膜の耐はく離性を向上した塗料が四国総合研究所と塗料メーカー3社(大日本塗料、関西ペイント、神東塗料)によって開発されました。その塗料を使えるように、設計要領と施工管理要領、試験法を変更、追加したものです。

 ――具体的な適用範囲・膜厚は
 長谷 現在は、第一段階として「採用を検討してもよい」という言い方だけにしています。今後試験的に場所を決めて、各社各様で使用していただこうと考えています。


 ――ということは未だ試験的な運用ということですか
 長谷 塗料規格と試験方法については、今回新規に制定しました。それに基づいて塗膜の試験をしていただいて、それに合格する製品が複数出てきたら、全面的に塗替えの選択肢として採用していきたいと考えています。まずは採用できる形にしたと考えてください。



 ――どんな箇所・膜厚に使えるかは未定義ということですか
 
長谷
 現時点ではそうです。過膜厚な橋梁の他、室内試験では特に低温をより厳しい条件にすると、膜厚がはがれやすい傾向が出ていますので、そういった箇所や、現地の塗膜のはく離状況を総合的に勘案して採用を検討できる、としました。

 ――基本的には素地調整程度3種で用いるという考え方ですか
 長谷 素地調整程度3種でも用いることができますが、1種で用いることを否定はしていません。当初は、素地調整程度3種での効果及び需要が大きいと考えていますが、並行して1種の素地調整を行わなければならない橋梁では、塗替え当初より採用していくことで、長期的によりはく離を抑制する効果が見込めると考えています。

 ――塗料の特性を考えれば既設の膜厚が厚い個所で施工するべきでは。そうした箇所では1種ケレンをするとお金も時間もかかります。NEXCO総研で目安となる数値は考えていないのですか
 長谷 これまでの要領の記載では膜厚が1mmを超えると素地調整程度1種の素地調整を実施するように示唆しています。それがまず1つの目安と考えています。ただ、それより早くはく離が発生しているような箇所もありますので、そうした個別の現場の塗膜のはく離状況も踏まえて使っていければと考えています。

 ――低温側の方が剥離しやすいというのはどうしてですか
 長谷 まだ完全には分かっていませんが、室内試験の結果で、そうした傾向が見えてきています。塗膜には塗装施工時に塗料が硬化収縮することに伴う内部応力が発生しています。おそらく、この硬化収縮に伴う内部応力は硬化時の気温を基準に発生すると考えられ、高温側は塗料の硬化収縮に伴う応力が一旦緩和される方向になるため、高温側がはく離しにくく、低温側は硬化収縮に加えて塗膜の温度収縮による応力が加算される方向になるため、低温側がはく離しやすくなるものと思われます。


 ――そういう塗膜に使うということですね
 長谷
 そうです。

 ――実橋への適用は既にあるのですか
 長谷
 まだです。これから何橋か実橋で使われる予定です。

 昨年度のインタビューでも少し触れましたが、親不知の実物大の供試体で刷毛やローラーで施工性の確認をしています。現行の変性エポキシ樹脂塗料と同等程度に、現地での施工性が確認できていることから基準化を行ったということです。塗料規格としては、現行の変性エポキシ樹脂塗料の規格に「耐はく離性」を加え、「塗料の耐はく離性試験方法」を新たに規定しています。

 ――同様に親不知付近では実物大供試体を用いた数種類の塗膜剥離剤で除去した後の塗替え塗装の耐久性を調べる試験を行っていましたが、そちらは
 長谷
 現在は暴露調査中です。まだ調査結果から成果を出せる状況に至っていません。