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俵山トンネルルートは2019年9月に全線復旧

2020年新春インタビュー 熊本復興事務所 新しい阿蘇大橋の張出架設が進捗

国土交通省
九州地方整備局
熊本復興事務所長

大榎 謙

公開日:2020.01.01

 2016年4月に発生した熊本地震からまもなく4年が経とうとしている。2019年9月には俵山トンネルルートが全線復旧し、阿蘇大橋地区大規模崩落斜面の砂防事業は今年度内に工事概成を迎える見込みとなった。2020年度内の全線開通を目指す国道325号阿蘇大橋架替もアプローチ部は床版打設まで完了し、渡河部では超大型ワーゲンによる張出架設が進む。これらの事業を所管している熊本復興事務所の大榎謙事務所長に話を聞いた。

阿蘇大橋地区大規模崩落の急斜面部分の復旧は概ね完了
 国道57号は大分側欠壊部の黒川河岸斜面対策を実施中

 ――所管事業のご説明からお願いします
 大榎所長 所管しているのは、砂防事業として阿蘇大橋地区大規模崩落斜面の斜面対策、道路事業として国道57号現道部、国道325号(阿蘇大橋架替)、県道熊本高森線(俵山トンネルルート)および村道栃の木~立野線(長陽大橋ルート)の復旧事業です。国道57号現道部以外の道路事業についてはすべて権限代行事業です。
 それらに加え、2018年度からは土砂災害から住民の生命、財産、および重要な幹線などの社会基盤の保全を図るため、阿蘇地域(阿蘇カルデラ内)において、阿蘇山直轄砂防事業に着手しました。


熊本復興事務所 事業箇所(熊本復興事務所提供もしくは国土交通省ホームページから、注釈なき場合は以下同)

 ――事業について個別に伺います。まず、阿蘇大橋地区大規模崩落斜面の復旧事業は
 大榎 阿蘇大橋地区で発生した山腹崩壊は、斜面長約700m、幅約200mにおよび、斜面下部の国道57号、JR豊肥本線と国道325号阿蘇大橋を巻き込む大災害となりました。崩壊土砂量は約50万m3と推定され、この崩壊により、道路・鉄道網が寸断されました。
(2016年4月の)発災直後は余震や降雨によるさらなる崩壊の危険性があり、現場への立ち入りが制限されたため、被災調査にあたってはドローンなどを用いて現地に近寄ることなく状況を把握することに努めました。
 翌5月からは二次災害を防止するため斜面中腹に土留盛土工を施工するとともに、頭部の不安定土砂の除去を行う緊急復旧工事に着手しました。土留盛土工については、雲仙普賢岳で施工した砂防事業を中心に発展した無人化施工技術を活用しています。大規模崩落斜面から約1km離れた安全な場所から遠隔操作を行い、最大で14台の重機が同時に稼働していました。不安定土砂の除去についても、オペレーターが山頂の安全な場所から高所法面掘削機を遠隔操作し施工を行いました。


緊急復旧工事の状況

 その結果、その年の12月には緊急復旧工事が完了し、2017年1月から一部有人施工が可能となりました。
 2017年7月からは、斜面の恒久的な安定化対策に着手し、斜面上部の急斜面では、植生マット工やネット工、一部箇所で鉄筋挿入工を併用した対策を行い、今年6月までに概ね完了しました。現在は、斜面中腹部の安定化対策を行っており、今年度内には斜面全体の工事概成を迎える見込みとなっています。


恒久対策工事の状況

大規模崩落斜面の現況(2019年11月末)(大柴功治撮影)

 ――国道57号現道部については
 大榎 国道57号現道部は、道路が数カ所にわたり欠壊するなどの被災を受けて通行不能となりました。今夏には熊本側欠壊部の黒川河岸斜面対策が完了しました。現在は、大分側欠壊部の黒川河岸斜面対策を進めているところで、今年度中には完了する見込みです。
 また、並行するJR豊肥本線についても欠壊防止工を行った国道57号の敷地を工事用ヤードとして使用して復旧工事が行われています。


国道57号 熊本側欠壊部の施工状況(左)と対策完了(右)

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