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インタビュー詳細

2019年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑨日立造船

耐震補強工事に注力 洋上風力分野を次期事業軸に

日立造船株式会社
常務執行役員 社会インフラ事業本部長
嶋 宗和 氏

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。今回は、日立造船の嶋宗和常務執行役員の記事を掲載する。


 ――前年度(18年度)の業績をお願いします

  昨年度は受注高が276億円、売上高が318億円と17年度を上回ることはできなかったが、営業利益は13億円と増加となった。個別工事の採算改善が大きい。何とか4年連続の黒字化を実現できた。

 ――19年度の目標は

  今年度は受注高400億円、売上高300億円、営業利益5億円を目標としている。

 インフラ部門は、尾道市の向島工場、堺市の堺工場の生産拠点をもち、2工場の操業度を維持するために、昨年、日本橋梁と当社の向島工場を共同利用する業務提携を行った。工場運営は順調に展開している。操業度は予定通りに推移しており、下期はさらに上がる見込みだ。

 ――業界を取り巻く状況は

  新設橋梁に関しては、昨年度は鋼道路橋が2年連続で20万tを超えたが、全般的には国内の厳しい状況は変わっていない。その中、今年度は公告件数が少ない端境期となっており、20万t割れは確実とみている。

 新設橋梁については部門内での構成比を抑え、耐震補強工事などの保全事業に注力している。その成果として、今年度、阪神高速道路から阪神高速3号神戸線の上部耐震補強工事、瀧上工業とエム・エム ブリッジとのJVで伊勢湾岸自動車道の名港中央大橋耐震補強工事を受注した。以前から大型の耐震補強工事を中心に提案営業を実施してきた成果が出た。今後も引き続き提案営業活動を積極的に展開していく。ただ、技術者はある程度の仕事量を確保していないと維持が厳しいが、一方で人数を減らすと受注機会が減少するという構造的な課題を抱えている。ICTの活用なども検討し、効率的な業務推進を図ることが重要だ。



戸馳大橋(熊本県宇城市) 


 水門では、橋梁同様に厳しい状況が続く。近年、大規模な水害が発生しており、対策を施さなければならないが、すぐに工事に結び付くものではないので、グループ会社とともに点検・維持・更新などメンテナンスで営業活動を継続していく。また、既存のダムへの設備増設や再開発などの改修工事が増加するとともに、ダムの新設プロジェクトも動き出している。

 洋上風力発電に関しては、事業開発から設計、製作・据え付け、オペレーション、メンテナンスまで一貫してできる体制を整えている。昨年度にはNEDOによる次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究において日本で初めてバージ型基礎構造物の製造・風車据え付けを実施した。着床式の技術開発も進んでいる。インフラ部門の次期の主力事業と捉えており、研究開発も含めて、さらに注力していく。

 このほか、シールド掘進機は北海道新幹線・札樽トンネル向けに受注するなど堅調に推移している。海外も堅調で、台湾、シンガポール、フィリピン、インドネシアでも地下鉄案件で動きが見込まれる。



NEDO次世代浮体式洋上風力発電システム実証機「ひびき」


 ――防災分野については

  初受注した海底設置型フラップゲート式水害対策設備は現在、堺工場で製作しており、その後、大船渡へ輸送、据え付け工事を実施する。

 また、フラップゲート式水害対策設備「neoRiSe(ネオライズ)」は全国各地から引き合いがあり、今年度中に施工実績が140件を超える。現在、重車輌走行や相当な交通量に耐えることができる改良型の研究開発を進めている。

 ――海外事業については

  フィリピンをはじめベトナム、カンボジア、ミャンマーなど東南アジアを中心にODA案件を中心に営業活動を行っている。案件はあるが、水門関連が先行し、ダムの再開発でのメタル部分のゲートや水管を受注しているだけで、橋梁に関しては難しい部分がある。工期・コストや施工条件などでのリスクが高い上、発注時期の時期ずれが多く、いかにニーズに合った案件形成を進めていくかにかかっている。

(聞き手=佐藤岳彦、文中敬称略 2019年10月14日掲載)