道路構造物ジャーナルNET

2019年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑥瀧上工業

「鉄構本部」を分離独立 入札だけに頼らない企業体づくり

瀧上工業株式会社
代表取締役社長

瀧上 晶義

公開日:2019.09.23

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。第3回は、瀧上工業の瀧上晶義社長とJFEエンジニアリングの川畑篤敬専務執行役員の記事を掲載する。

 ――18年度の業績は
  売上高が154億8,000万円(連結)、営業利益が2億8,000万円、経常利益が6億2,000万円と減収減益となった。具体的に橋梁事業では、鋼道路橋発注量は前年度から若干回復基調にある中、国土交通省での新設橋梁の受注が回復微増に加え、保全工事部門も寄与し、受注高が前年比54%増となった。また、鉄骨事業ではこれまでと同様に選別受注を進める中、火力発電所等の受注確保に努めた結果、受注高は同6%減にとどまった。全体として鋼構造物製造事業の総受注高が同40%増となった。一方、損益では一部の事業部門において民間発注の低採算物件の受注が増加したことや、一部の工事で損失が発生するなど、厳しい結果となった。
 ――各部門の数値目標や具体的対策と今期の見込みは
  18年度3月期を初年度とした中期経営3カ年計画を策定し、本中期経営計画の基本軸を「再生と創造」に置き、今年度はその2期目に当たる。
 鉄骨事業では、今年4月に長年の懸案であった「鉄構本部」を分離独立し、旺盛な鉄骨需要に対応するため、鉄構事業の再生を目指していく。これまでの電力関連工事の受注活動に加えて、早期に年間生産量1万5,000t体制を構築し、鋼構造物事業における売上高の約30%までを担う事業へと拡大を図る。そのために各ゼネコン回りや図面業務の効率化、営業人員(現状4人)の補強と体制強化を図る。今年3月には工場に柱大組立溶接ロボットを新設し、今後は一次加工ラインやクレーン関連の整備を行う。そして、グループ会社と連携し、鉄骨加工の供給体制改善にも取り組む。
 次に橋梁事業では、受注競争がさらに厳しくなるとの予測をもとに、引き続き技術提案力と積算精度の向上を図る。老朽化した生産設備の更新を進め、生産性の向上に努める。具体的には橋梁パネルライン矯正機のリプレースなどを進める。
 保全事業では、今年5月、4年前に新設した「保全本部」を関連会社である瀧上建設興業の本社移転に合わせて同所に移転。瀧上グループの保全の拠点とすることで、新設橋梁工事だけでなく、保全工事の受注に注力していく。保全本部と瀧上建設興業との人材最適化や案件発掘などのコラボレーションを目指し、予防保全にも力を入れる。特に当該事業では技能者、技術者が慢性的に不足状態であり、今後の大規模補修工事を中心に多くの案件発注が見込まれることから中途採用の増員で確実な施工体制を構築していく。
 その他、材料販売事業では、グループ内の情報を最大限に活用し、新規顧客の開拓および既存顧客への販売増加を積極的に進め、売り上げ拡大を図る。
 これらの活動を通し、今期は売上高158億円、営業利益5,000万円、経常利益3億円を見込んでいる。


赤坂北第一高架橋内回り(起点側):2018年3月完成

 ――海外事業の現状は
  ベトナム工場開設から11年が経過。ベトナム現地法人とフィリピン駐在員の事務所を活用し、ODAの橋梁関連工事や現地の橋梁工事を受注している。また、アスファルト添加材の海外販売が好調に推移し、フィリピンでの認証も取得した。今後は他国へも販売を展開していく。ベトナムにおける生産量は、月間500tという目標は変わっていない。
 ――人材育成や新規分野は
  今年の4月に大卒6人、高卒4人の10人(うち女性1人)の新入社員を迎えた。また、事務所の3階部分を整備し、職場環境改善を進める。当然、働き方改革への対応もまったなしの状態であり、各事業部門の社員からの意見を集約し、解決策を打ち出していく。当社は「入札だけに頼らない企業体づくり」で企業の成長につなげていきたい。
(聞き手=和田徹、文中敬称略 2019年9月23日掲載)

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