道路構造物ジャーナルNET

実績、ブランド力、技術を結集してシナジーに

エスイー 宮原一郎新社長インタビュー

株式会社エスイー
代表取締役社長

宮原 一郎

公開日:2019.09.04

 エスイーの新社長に三菱商事の執行役員開発建設本部長などを歴任し、2018年4月から経営企画室長を務めていた宮原一郎氏が就任した。宮原氏は三菱商事でも建設分野に近い開発建設本部に36年間在籍し、国内外の都市開発、大型建築工事等を担当してきた。その宮原氏がPC関連技術をコアとして土木分野において地盤を築いているエスイーをどのように導いていこうとしているのか、詳しく聞いた。(井手迫瑞樹)

大学の土木工学出身で惹かれるものがあった
 ESCONを多方面に押し出す

 ――就任の経緯から
 宮原 エスイーは、以前から原材料の調達や製品の販売などの面において三菱商事と縁があり、私の以前にも過去5人の三菱商事OBが当社に世話になっています。私もその先輩の一人に声をかけられ、顧問として一昨年10月に当社に入社しました。私自身は、建設業界の中でも建築工事、それも民間の工事がほとんどで、いわゆる商社元請による工場や病院、商業施設等の経験が多かったので、当社との接点はありませんでした。当社森元会長大津前社長とも初対面でしたが、私自身たまたま大学の土木工学科卒業という事もあって、当社には大変惹かれるものがありました。土木出身者として、最後のご奉公という気持ちです。
 ――入社後は
 宮原 入社後半年間は顧問として、2018年4月からは、経営企画室長として中期経営計画策定等を担当致しました。
 ――エスイーの社長として抱負は
 宮原 エスイーは創業以来50年を超える実績とブランド力があります。それを支える技術の蓄積もありますし、技術者も多く抱えています。これをベースに新しい技術や商品の開発を続けていきたいと考えています。一方で公共土木分野において、全体のパイが減少していくことは否めない情勢です。そのため、当社ではここ10年で8社をM&Aにより取得し、現在のグループ5社に集約、編成しました。(エスイー、アンジェロセック、A&Kホンシュウ、エスイーリペア、エスイー鉄建)。エスイーにとっては、なじみの薄い建築資材やコンクリート2次製品の業界への挑戦です。これまでのところ、各社の業績もまずまずで、「足し算」の効果は出ていますが、グループとしてのシナジーの発揮はこれからで、私の役目だと思っています。
 ――例えば具体的にはどのようなシナジーの構想があるのでしょうか
 宮原 例えば建築分野では、グループ会社のエスイー鉄建は、HグレードやSグレードの鉄骨フォブリケーターとして、A&Kホンシュウは、ボルトやセパレーター等を内装業者や躯体業者に供給して、現在の旺盛な建築需要に貢献していますが、これだけでは足し算で終わりです。例えば、当社が開発したESCON(超高強度合成繊維補強コンクリート)を型枠や躯体、シェル部材等へ応用できないか研究を進めています。コンクリート分野では、A&Kホンシュウと共に新たな土木2次製品の開発やESCONを活用した道路用床版や橋桁の開発を進めています。他にはないものを開発し、提供する、エスイー創業以来の伝統をグループ全体で継承しようという事です。


ESCON受圧板

 ――短・中期的な計画は
 宮原 今年度の売上は228億円を予想していますが、これを3年後には250億円、中期的には300億円を目指したいと考えています。昨年の補正予算に加え、今年度、来年度を併わせ防災・減災・国土強靭化のための予算が7.2兆円程度組まれており、技術営業を強化して当社の橋梁、環境防災分野の技術や商品をPRしていきたいと考えています。今年4月には技術者を東京と大阪に集約して各支店と協力しながら機動的な技術営業が行えるよう機構改革を行いました。

バックダン橋にも携わる

 ――海外分野への進出については
 宮原 グループ会社に海外建設コンサルタントのアンジェロセックがあり、アフリカのフランス語圏や東南アジア諸国のインフラプロジェクトに参画しています。また、エスイー本体としては、韓国や台湾にもパートナーがいますが、これまで最も実績を積んできたのはベトナムです。ハノイ-ハイフォン-ハロンを結ぶ道路に架かるバックダン橋(斜張橋700mを含む全長5.4km)をBOT事業として、当社が参画し、昨年竣工・開通しました。また、国立建設土木大学(NUCE)と共同で、VJEC(Vietnam Japan Engineering Consultants)を設立し、道路や橋梁の建設コンサルタントとして活動しています。


バックダン橋

海外事業は現地化がカギ

  ――海外で成功している日本企業を見ていると子会社の「現地化(当該国の労働者を使うことはもちろん経営者までも当該国の人を使うという意)」に成功した会社が上手くいっているように見えます。また、一部スーパーゼネコンのようにタイ子会社の社長を本社に呼び寄せて役員に入れてロイヤリティを増すという施策をとる会社も出てきています
 宮原 海外事業は、いかに現地化出来るかが、カギだと思っています。当社のハノイ事務所は、所長以下すべてベトナム人です。前述のBOT事業や技術コンサルタント、またJICAの事業への材料供給等を行っていますが、今後メーカーとして当地でどういう形で事業化するのがベストなのか、現在検討中です。
 ――昨今、人手不足が言われていますが、エスイーではどのように対応していきますか
 宮原 営業・生産・管理部門ともに充足しているとはいえず、募集をかけている状態です。即戦力として、どうしてもキャリア採用が中心になりますが、新卒者も採用をしていきたいと考えています。PRやIRを充実させ、会社の持続的発展の為にも採用活動を強化していきます。
 ――ありがとうございました
(2019年9月4日掲載)

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